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【エピローグ】

その後、ブラックモア公爵――グレン・ナイトレイのこれまでの所業は、余すところなく白日の下に晒されることとなった。帝国軍侵攻の裏工作、予言の魔女への非道な仕打ち、反逆の魔女事件の隠蔽、そして幾度にも及ぶリリィへの暗殺未遂。これから余罪の有無を徹底的に調査するべく、王命による本格的な捜査が入ることとなった。


ルドルフは、爵位剥奪は免れず、最終的には処刑も避けられないだろうと語った。


だが――リリィは、その結末を望んではいなかった。


アークレイン公爵もリリィの気持ちを汲み取ってルドルフに『処刑せず、僻地での隠居』を進言してくれたのだ。


勿論、リリィはまさかアークレイン公爵がその様に言ってくれるとは思ってもみなかったが、自分の真意を理解してくれるアークレイン公爵に深い感謝をした。


自分はただ、『友達と楽しく学院生活を送りたい』という、ささやかな願いと『ベアトリクスの名誉回復』を叶えたかっただけだ。誰かの血が流れることなど、望んでいない。


そして、かつてベアトリクスが予言した「公爵を殺す」という言葉は――爵位剥奪という、貴族としての”死”という形で、静かに現実のものとなっていく。


――


リリィは、マリアンヌと共に王宮を訪れていた。絢爛豪華な建物に気後れしてしまいそうになるが、リリィは小さな胸を張り中へ入る。


「ほよ~。私が四賢者になるなんて夢にも思わなかった」


「私は、誇らしいわ」


四賢者の正装である紺のローブを纏ったマリアンヌが、満足げに微笑む。


「可愛い弟子が、四賢者という魔法使いの頂点に、私と名を連ねるのだから」


四賢者に任命されると、正装である紺のローブと、黄金に輝く杖が授けられるのだという。


「あ、そう言えば」


ふと思い出したように、リリィが尋ねる。


「師匠は『終焉の魔女』って二つ名があるけど・・・私も、二つ名があるの?」


「ええ」


マリアンヌは、悪戯っぽく笑った。


「二つ名は、就任の際に陛下から賜るわ。どんな二つ名か、楽しみにしてなさい」


――


やがて、四賢者就任の式典が始まった。


居並ぶ貴族や大臣たちの拍手に迎えられ、リリィは会場の中央へと歩み出る。その中には、オリビエ、エリオット、ロナ、ミリアムの姿もあった。


少しだけ気後れしそうになる。だが、リリィは胸を張り、まっすぐに前へと歩き出した。


そして、玉座の前で静かに立ち止まると、深く一礼する。


「リリィ・クローデル」


ルドルフの声が、荘厳な広間に響き渡った。


「お主を、四賢者の一人――『救世の魔女』として、迎え入れる」


その言葉と共に、四賢者の象徴とも言える一角獣の刺繍があしらわれた紺のローブと黄金の杖が、リリィの元へと授けられた。


割れんばかりの歓声。リリィは、こみ上げる想いを抑えきれないまま、満面の笑みで応えた。


その姿を、マリアンヌは誰よりも嬉しそうに見届けていた。


――


「ほよ~、緊張した~」


寮に帰り着いたリリィは、食堂の椅子に、ぐったりと座り込んだ。


「おや、リリィ。帰って来たのかい?疲れただろう?今、温かい飲み物用意するね」


ゼシカがそう言って、湯気の立つホットティーを差し出す。


「しかし、リリィが史上最年少の四賢者様とはねぇ。何だか凄い瞬間に立ち会った感じだよ」


「えへへ、私もまだ信じられないけど・・・」


そっと、リリィは正装のローブと杖を撫でた。


「でも、確かに四賢者になったんだね」


その温もりを噛み締めるように、静かに目を細める。


そこへ、賑やかな声と共にロナたちが食堂へと駆け込んできた。


「リリィ、おかえり!四賢者就任、おめでとう!」


真っ先に駆け寄るロナ。


「式典で失敗しないか、ヒヤヒヤしたわ」


ミリアムが、冗談めかして笑う。


「あ、これ。四賢者のお祝いのプレゼント」


ティオが、小さな包みを差し出した。


「わぁ、嬉しい!開けて良い?」


興奮気味に尋ねるリリィに、ロナが頷く。


「ええ、貴方の為に、皆で考えて選んだ一品よ」


丁寧に包装を解くと、そこにあったのは、魔導書を思わせる装丁のノートと、一本の羽ペンだった。


「ほよ~、素敵・・・」


見とれるように目を輝かせるリリィの姿に、ロナ、ミリアム、ティオは、嬉しそうに顔を見合わせた。


四賢者という、途方もない重責を背負うことになったとしても。


友達と過ごす、この何気ない時間は、これからもきっと変わらない。


これから先、どんな楽しい思い出が待っているのだろう――そんな期待に胸を膨らませながら、リリィは、温かい湯気の立つティーカップを、そっと両手で包み込んだ。


―― 完 ――

ここまで読んでいただきありがとうございます! 「マクスウェルの魔女」はこれにて完結となります。面白いと思って頂けたら、下のほうにある【ブックマーク登録】や、☆☆☆☆☆から【評価(5段階)】をポチッと押していただけると、執筆の激しい励みになります! よろしくお願いします!

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