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( また、出たよ....... )
茶色のもやから変化した、てるてる坊主もどきは、毎日あち子のところに出るようになった。
今ではリビングだけでなく、あち子の部屋にも、ふわふわと浮きながら、ついていく。
なぜだか勉強机の上の、布製のペンケースの上に、頭を置いて、
ぐでんとしているのが、日課になっている。
出ている時間も、なんだか長くなってきた。
あち子は、ペンケースから、ものを取り出すときには、
ペンケースの端を、ちょんちょんと、合図するようにした。
すると、てるてる坊主もどきは、ふんわりと移動して、横で待っている。
そして、あち子の用が終わると、戻ってきて、またぐでんとするのだ。
なんだか、かわいくなってきて、一度
「 ぽーーーーち! 」
と呼んでみた。
すると急に、ぐでんスタイルから、起き上がり、
ふわふわあち子の前に、飛んできたのだ。
やっぱり、ぽちの生まれ変わりだ!
でも、生まれ変わりというよりも、なんだか違うものに、なったみたいな気がするのは
気のせいだろうか。
あち子は、考えるのをやめて、てるてる坊主もどきあらため、
ぽちを、かわいがって、あげることにした。
ぽちと、名前がついたせいか、ぽちは、どんどん存在感が出てきて、
勉強机の蛍光灯の下で、影が、できるようになった。
影が、できるころと同時に、なんと、触れるようにもなった。
はじめて、触ったときには、
「 おわーーっ 」
と変な声を出してしまい、ちょうどあち子の部屋の前を通っていた、
弟の健太に、びっくりされてしまった。
健太は声を聞きつけて、いきなり部屋に入ってきて
「 ねえちゃんどうした! 」
といってきた。あち子が思わず
「 ぽちにさわれた!これこれ! 」といってしまい
「 へえーーーー 」
と冷たい目で、あち子を一瞥した後、部屋を出て行ってしまったが。
ずいぶん存在感も出てきて、影ができるし、触れるようにもなったのに、
相変わらず家族には、見えないらしい。
さわりごこちは、なんだか空に浮かんでいる、雲を連想させた。
実際雲なんて、さわったことはないのだが、消えそうで消えない
ふわふわと、いったほうがいいのだろうか、べたべたしない、綿あめにも似ている。
ご飯は、食べるのかなあと思い、おやつに食べようと思っていた、クッキーを、
皿に入れて、ポチの前に置いてみた。
しかしぽちは、何の興味もないようだった。
仕方なく学校帰りに、生前犬のぽちが、食べていたおやつを
買ってきてあげてみたが、やっぱり全然興味をしめさなかった。
やっぱり、もう犬じゃあないんだよね~
なんだか、寂しい気持ちになるのだった。
ただ、この奇妙なぽちもどきは、ますます存在感を増してきた。
あち子が、リビングに行くとき、トイレに行くとき、お風呂に入るときにも、
なぜかふわふわ浮いて、くっついてくるようになった。
そう、いつまでも消えなくなったのだ。
さすがに学校に行くときには、玄関までついてきて、なぜか引き返していく。
どこにいくのは、不明だが。
*****
紗枝がバスケ部に入り、朝練がはじまってから、
学校に行く時間も、違ってきたため、あち子は一人、自転車通学になった。
自転車で行くのは、晴れの日で、雨の日は、まだバスでいっているが。
*****
ある日、とうとうぽちも、一緒に学校に行くようになった。
いつものように、学校に行こうと、玄関を出ると、
なぜだがぽちも、ふわふわと、玄関から外に出てきた。
「 え~! ぽち、外に出られるように、なったんだね。 」
思わず、ぽちに話しかける。
あち子が通学バッグを、前の自転車かごにいれると、
ぽちが、ちょこんと、のってきたのである。
振動や風に飛ばされて、落ちないか、心配するあち子をよそに、
ぽちは、なぜが飛ばされも落ちもせず、学校までたどり着いてしまった。
なんと不思議な生き物?だろう。
ただし意思疎通はできないようで、あち子が話しかけても
点のような顔を、少しかしげて、見せるだけだった。
まあそれも、かわいいのだが。
あち子は、ぽちがかわいくてたまらなくなった。
学校内を歩く時には、あち子の肩の上に止まり、
授業中は机の上にぐでんと横になっている。
たまにかまってほしいのか、教科書の上にのってくるので、
つまんで、ペンケースのところにおくのが、日課になってきた。
一度、休み時間に、ぽちを、友達の吉田紗枝の机の上に、おいてみたのだが、
紗枝は気づかなかった。
こんなにかわいいのに、みんなに見えないなんて、残念だな~と、
その時までは、お気楽に考えていた。