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「 じゃあね、あっちゃんまた明日~! 」
これから、部活に向かう吉田紗枝と別れて、あち子は、学校を出た。
あち子が学校から帰ると、リビングでは、水曜日で部活が休みのためか、弟健太が、もう家にいて、テレビを見ていた。
いつものくせで、ぽちがよくいた、クッションを見ると、最近よくみられる光景があった。
健太のはいた靴下が、クッションの上に乗っかっているのである。
「 健太、また靴下おいてある。ぽちがくさいってよ。 」
「 ぽちは、僕の靴下が好きなんだよ。反対に泣いて喜んでるよ。 」
あち子は、言い返そうかとも思ったが、ぽちが喜々として、健太の靴下を、運んでいた光景を、思い出してやめた。
たしかに、あのぽちなら、天国から喜んでいるだろう。
「 今日は塾の日よ。まだ時間があるから、夕ご飯の前に宿題だけやったら。 」
母の美佐子の声で、健太は重い腰を上げて、リビングを出て行った。
母の美佐子は、キッチンで、夕食の下ごしらえをしていた。
リビングには、あち子一人。
学校には慣れてきたが、やっぱり新しい生活は、まだちょっと緊張しているようだ。
だら~りとしたい。
思いっきり、ソファでごろりと横になると、ぽちのクッションが目にはいった。
ぼ~と見ていると、なんだか違和感を覚えた。
なんだろうと、よ~くみていると、なにやらクッションの上に、茶色い靄のようなものが見える。
目の錯覚かなあと見ていると、今度はクッションの上の靴下が、動いているような気がする。
もう目が離せず、起き上がり凝視していると、靴下がクッションから、コロンと落ちた。
えーーーーー! うそっーーーーー!
風が入ってきた様子はない。地震もない。クッションが、動いた様子もない。
さっきは、クッションの上にいた、茶色の靄が今度は、クッションから落ちた靴下の上に、移動している。
たまらなくなったあち子は、母の美佐子を呼んだ。
「 おかあさーん!、ちょっと来てーーーー! 」
「 な~に 」
母の美佐子が、手をタオルで拭きながら、リビングにきた。
「 おかあさ~ん、さっきね、クッションの上にあった、靴下が落ちた。
それにね、見てみて。靴下の上に、なんか茶色い、靄みたいなのがある。見えない? 」
あち子は、茶色い靄を指さすが、母の反応は鈍かった。
母は、クッションのほうをしばらく見ていたが、
「 え~? なになに? そんなもの見えないわよ~。 」
クッションの横に、落ちている靴下を、拾い上げいった。
そのまま母は、靴下を洗濯機に入れるため、リビングを出て行った。
いつの間にか、茶色い靄は消えていた。