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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第13話 滋味深き街の食卓
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すべての料理は包丁に収束する(と思う)

「細長い棒の2本セット1組です。食材をつまんだり混ぜたり、幅広く使える用具です。素材は木製でお願いします」

「2本の棒でつまむ?混ぜる?トングと違うのか?」

「トングより細かい操作ができます。どう使うかと言うと…そうだ、金串あります?」

ああ、と言ってルカさんは店の奥から2本の箸より細い金串を持ってきてくれました。この細さの金串は、わたしの想像通り肉の焼け具合を見るのに使われるそうです。金串を肉の中心まで差し込んでから引き戻し、下唇と皮膚の境目に当てて温度を確認します(唇を使う理由は、唇が温度に敏感だからです)。ぬるかったら生焼けです。

わたしは金串を箸のように持ち、両串の先をかちかちとぶつけ、食材をつまむ動作を見せました。

「ほーう、器用に持つなあ」

「太さは小指の先より一回り小さいくらいで、長さは30cm前後…えーと、この金串より拳一つ分長めです。わたしの国では、短い箸を普段の食事でも使うんですよ」

ルカさんは考え込むような仕種でぶつぶつ何かを呟きました。

「木製の細い棒…これならあいつでも…」

「どうしました?」

「うんにゃ、何でもない。とりあえず長短違うものをいくつか作ってみるよ。あとはそうだな…もう一つくらいなら並行して作れそうだ。金物で何かないか?やっぱりそっちが本業だから何か作りてえな」

「金物、金物…。鍋、ボウル、フライパン…あ、包丁。よく切れる包丁が欲しいです。触ったらスパッといっちゃうくらいの」

お世話になっているブラウンさん宅の包丁では、ぐっと力を入れないと食材に刃が入りません。これでも鋭いほうらしいのですが、子供用のプラスチック製安全包丁にも負けます。

「おいおい、そんな剃刀クラスの危ねえやつで何を切るんだよ。お嬢さんからお前さんは不器用だと聞いてるぜ。なんでも切った野菜の形がいびつで大きさも揃ってないんだってな。もっと包丁捌きが上達してからにしたらどうだ?」

「あ、あれは…」

『乱切り』と言いたいところですけれども、どんな切り方であれ大きさを揃えてなんぼです。クッソ小娘余計な告げ口しやがって。

「ご忠告どうもですが、包丁は切れるほうが余計な力が入らず姿勢が崩れないので全然上達するんです。するはずです。それに、包丁の切れ味は食材の味も食感も左右するんです。料理は包丁に始まり包丁で終わる、そう先生が言ってました」

包丁の切れ味が悪いと、力を入れて叩き割るような切り方になります。すると食材の細胞が潰れてしまい、食感はもそもそになり、旨味や栄養素を含む水分が流れ出てしまいます。たかが切る、されど切る。切るという操作で味が決まってしまうからこそ、刺身は『造る』と言い(『(刺)身を切る』という表現が嫌がられたからとも言われます)、切る以外に何も手を加えない生の食材が料理として成立するのです。包丁の練習は料理上手への近道です(お前が言うな?うるせぇ刺身のたんぽぽでも狩ってろ)。

逆に言えば、切る以外の操作がないからこそ食材の質が大事になるわけで、特に日本料理店は食材の厳選に厳選を重ねて値段が跳ね上がります。わたしには縁のない世界ですけど…。

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