The most famous お嬢様
「皆さんアンジェリカをお嬢様と呼びますけど、名家の人なんですか?」
「支部長さんに頼まれたってことは、二人は親戚だと知ってるんだろ?二人とも豪商のマクミラン家の人で、今はお嬢様のお父上であるエドワード様が事業を仕切ってんだ。エドワード様の兄が支部長のアルフォンス様。元々はアルフォンス様が事業を継ぐ予定だったが、弟のほうが商才がある、と言ってあっさりエドワード様に譲られたんだ。
エドワード様が事業を継いだ年に生まれのがアンジェリカお嬢様。お嬢様は昔からエドワード様の手伝いをするのが夢だったが、意外にもエドワード様は許可されなかった。しかしお嬢様も頑固だからよ、それならばと冒険者として名を挙げてエドワード様に実力を認めさせようとしてるわけよ。あまり順調には見えないがな」
「ずいぶん詳しいんですね」
「この街の人間なら誰でも知ってると思うぜ。お嬢様はしょっちゅうギルドで騒いでるからな」
ヘンリーさんは軽く笑います。
「でも、別に一人で無理して冒険者稼業しなくてもいいんじゃないですか?」
「まあな。結果的にそうなっちまったって感じだ」
「結果的に?」
「誰でも知ってるって言ったろ?しかも街の名士の一人娘だからよ、街の人間はどうしたって気を回しちまうんだよ。お嬢様も最初は他の連中と組んだりしていたが、次第に特別扱いが嫌で避けるようになってな。最近はずっとソロだ。そのくせ背伸びして危険なクエストを引き受けたがるから、毎度こっちがひやひやするぜ」
「実家とは仲悪いんですか?」
「いや、そんなことはねえよ。エドワード様はお嬢様が冒険者として活動することに反対してねえし、お嬢様のほうはそもそもエドワード様の力になりたいんだからな。お嬢様がちょっと意固地になってるだけじゃねえか?」
「まるで反抗期の子供みたいですね」
「違えねえ」ヘンリーさんは苦笑しました。
「おっと、話し込んじまった。そろそろ戻らねえとお嬢様が怒るんじゃねえか?」
「あ、そうですね。牛乳と大事なお話ありがとうございました!」
「おう、またよろしくな、綺麗なお姉さん!」
綺麗なお姉さん…!リップサービスだとわかってても、ニヤつかざるを得ない素敵な響きです。アンジェリカにはめられかけたことなどすっかり頭から抜け落ち、機嫌よく帰宅しました。




