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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第5話 大豆スタンドアップ
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子供が嫌いな野菜ランキング(殿堂入り)

「明日の夕食はフランツさんのお店に行かない?パンじゃ全然物足りないね」

「わたしはいつもこれくらいよ?チーズだけの日も多いわ」

「え、これだけ?」

 アンジェリカがポーチに入れていた干し野菜を思い出しました。しかも食べるチーズの量が、ひいき目に見ても多くないです。ひとかけらで20g、80kcalくらい?痩せているはずです。

「朝食と昼食のメニューは?」

「朝は紅茶だけ、昼は紅茶とビスケットよ」

「好きな食べ物は?」

「紅茶、牛乳、チーズ」

「嫌いな食べ物は?」

「肉、魚、にんじん、ピーマン」

 にんじんとピーマンって小学生かよ…。

 一日で少量のチーズしか食べないとなると、いきなり食事の量を増やしても食べ切れないでしょう。好きなものから攻めてみることにします。

「…まずは三食食べよう。毎食チーズを食べて、紅茶はミルクティーにする。どう?」

「朝は何も食べる気分になれないし、わたしはストレートが好きなの。ミルクティーも嫌いじゃないけど、やっぱりストレートが一番ね」

「そこをどうか、チーズを一かけらだけでも、朝だけでもミルクティーにしていただけると助かります、わたしの塩分濃度のために」

「あっそ。なら、明日からチーズも牛乳もあなたが買って来なさいよ。牛乳は朝早くにしか買えないから、早起きは必須ね」

「え?牛乳の買える時間決められてるの?」

「決められてはないけど、牛乳を売りに来る農民は朝早くに来て昼前には帰るわ。牛乳はすぐに痛むから日をまたいだら飲めないわよ。ミルクティーで飲むならせいぜい昼前まで…いえ、朝だけね。せいぜい頑張って早起きなさい」

 アンジェリカはもう一度紅茶を自分のカップとわたしのカップにも注ぎました。少しぬるくなった2杯目の紅茶は、茶葉が開いて渋みがきつく出ていました。

「飲んだら寝るわよ。蝋は節約しないと」

 紅茶を飲み干すと、アンジェリカがランプの火を吹き消し、部屋は真っ暗になりました。月の光が窓を通してかすかに部屋を照らします。

「牛乳は市場でヘンリーから買いなさい。『酔いどれ夫人のチーズ』も頼むわ。買う前に必ず表面を手で触って、濡れているか確認しなさい。ほどほどに濡れているのがいいチーズよ」

 そう言うと、アンジェリカはベッドに入って毛布を被りました。

 わたしは身も心もすっかり疲れているはずなのに、なかなか眠れませんでした。いつもと違うベッド、いつもと違う枕が、ここがわたしの生きる現実世界ではないことを実感させました。ああ、カップ焼きそばの大盛りが食べたい…。もはや叶わぬ夢です。

 体感で10分もしないうちに、アンジェリカの寝息が聞こえてきました。わたしの世界なら高校生くらいの年齢の女の子が、危険を承知で一人で冒険者稼業に臨んでいる…。物々しい鎧を脱げば、りんごの串焼きが好きな歳相応の女の子です。

 一方で、立ち居振る舞いに気品があり、ギルドのトップである支部長さんとは姪と甥の関係です。ブラウンさんには失礼ながら、安宿での生活に違和感がないと言えば嘘になります。

 …などとつらつら考えながら眠りに落ちました。

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