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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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078  理解の境界線


「一気に往くぞ」


大男の右腕が巨大化し、右腕の服が弾け飛んだ。


「……なんだそりゃ?」


その時だ。大男が猛スピードで突撃し、聖人の腹に強烈な一撃を与えた。


死んだと聖人は思った。しかし、腹を殴られたという感触が無い。全く痛みを感じなかった。


「一発目」


「何?」


「二発目」


再び殴られると感じた聖人は、後方に跳躍して大男の二撃目を躱した。


これで、お互いの武器が届かない距離にまで離れた事に成功。


「やはり虫か」


大男は拳の骨を鳴らしながら言った。


「虫は虫でも、象を一針で殺す雀蜂だぜ。俺は」


「そうかい。だったら、己等(おいら)の手で握り潰してやるぞ」


三発目の拳が放たれた。しかし、聖人は大男の拳と同じタイミングでモーニングスターを振り下ろし、お互いの攻撃が相殺された。


「軽いぜ。てめぇの拳」


「四発目」


聖人は先程と同様にお互いの攻撃を相殺しようと、モーニングスターを振り下ろす。ところがだ。今度は大男の拳に押されて、モーニングスターが弾き飛ばされてしまう。


「ッ!」


モーニングスターは音を立てて、道路の脇に転がって行った。


「五発目」


武器を持たざる者の腹に大男の拳が直撃した。一発目の攻撃よりも破壊力が増しており、聖人は激痛によって腹を押さえる。


「どういう事だ……?」


聖人はそう言って大男を睨みつけた。


「これが、己等の特殊能力だ」


「特殊能力?」


「獅剛拳(ドラコ)。初撃こそ軽いが、虫に攻撃を喰らわせる度に威力が増大する獣の拳よ」


すると、大男は肥大化した右腕を振り回した。


「五発目、往くぜ」


大男の拳が再び聖人の腹を襲った。あまりの衝撃に、聖人は2メートル先まで吹き飛ばされた。


刹那、聖人の右腕に冷たい感触を感じた。モーニングスターだ。聖人はそれを手に取るも、起き上がって反撃する力は残されていなかった。


大男は足音を地面に響かせながら、ゆっくりと聖人に近づいてくる。


(死ぬのか……俺は?)


聖人は薄れゆく意識の中で、確実に死を覚悟した。


「冥土の土産に教えてやるぜ。己等の名前はガルシア・ボレゲーロ。地獄の門番に殺された相手の名前を訊かれたら、そう答えろ」


六発目の拳が聖人に向かって伸びた。聖人は恐怖のあまり、目を閉じてしまう。


「これで終わりだ」と、この場に居た聖人とガルシアは共に思っただろう。だが、『この場にもう一人の人物が居たとしたら?』その人物が諦めを知らない者ならば、戦局が変わる兆しに為るだろう。







「……あれ?」


聖人は恐る恐る目を開けた。見ると、ガルシアの拳が空中で止まっていた。


ガルシアの顔も勝利を確信した笑顔のまま、止まっている。


「時間は有限。そんな事、誰が決めた」


声が聞こえ、聖人は後ろを振り返った。そこに居たのは、全身を黒い衣服で身を包み、黒いマントを着ている青年だった。


青年はサングラスを装着しており、表情が読み取れない。怒っている様にも悲しんでいる様にも見える。


「てめぇ誰だ?」


聖人の問いには何も言わず、青年は黙って聖人からモーニングスターを取り上げた。


「何しやがる!」


青年はサングラスの縁を右手で触った。


「お前はまだ、本当の自分を理解していない……。たがら一瞬だけ、理解の境界線を覗かせてやろう」


青年がモーニングスターを握り締めると、モーニングスターから光が溢れた。それは、太陽の如く眩しさで、聖人は目を瞑ってしまった。

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