077 空から舞い降りる大男
聖人、神代、香久弥の三人はアパートを出て、それぞれの学校に向かおうとしていた。アパートは立地が悪く、この辺りの人通りは少ない。道路には三人の他に誰も居なかった。
いつもの様に道路の真ん中を先陣切って歩く。
そのはずだった。
「ドッセイイアアアアア!」
上空から獣の雄叫びが聞こえたと思えば、三人の目の前に人間が降ってきたのだ。
「うわっ!」
それに驚いて、一人尻餅をついた聖人。恐る恐る見ると、人間が降ってきた箇所が陥没している。
見方を変えれば、力士が四股を踏んだ跡にも見えなくも無い。
「グルルルアアア……」
人間の口からは煙と吐息が溢れていた。
「でけぇ」
聖人は思わず呟いた。目の前の人間は、聖人の倍以上の背丈はあろう高さの大男だ。
「アアア、着地失敗か」
大男の目が白目から赤色の目に変わった。
そして、空から舞い降りた大男は、陥没した道路を沼地から這い出る様にして両足を抜いた。
「こわい」
香久弥は恐怖を感じて、神代の後ろに隠れる。しかし、大男はそれを見逃してはいなかった。
「小娘が二匹、餓鬼が一匹……あん? 一匹多いな」
大男は一人一人に指を差しながら人数を数えている。
「まあ、虫の一匹や二匹増えた所で違いはねぇか」
あくまで余裕だという様子の大男は、人差し指をおでこの出来物に置いた。聖人は何事かと思い、大男に近づいた。
「てめぇ、何者だ?」
しかし、聖人の呼び掛けに答える気配を見せない大男。彼は口を開けて、気だるそうに言った。
「純琴術律」
次の瞬間、大男の出来物から魔法が発射された。恢飢特有の攻撃に仰天したものの、三人は綺麗にそれを避けた。
「アア、やっぱ魔法は扱い難いぜ」
そう言いながらも、大男の純琴術律はアスファルトの道路がえぐれる程の威力を放っていた。
「あんた……恢飢なの?」
「ちょっと違うが、まあ似た様な物だ」
神代に問いに初めて、三人達に口を開いた大男。
「名前は?」
「だったら、冥土の土産に教えてやろうか」
「!」
聖人は危機感を感じた。それから、ポケットの中に入っているキーホルダーを取り出した。
「破鏡」
そう言うと、キーホルダーはメイスに棘が生えた状態の『モーニングスター』に変化。
「神代、香久弥を連れて逃げろ!」
「あんただけで勝てるはず無いでしょ」
「いいから行けよ!」
聖人の迫力に押された神代は、黙って頷いた。そして、香久弥の手を握り反対方向に走って行った。
「逃がすか」
大男は跳躍。神代を殴りかかろうとした。ところが、聖人も跳躍してモーニングスターで大男を殴り飛ばした。
「てめぇの相手はこの俺だぜ。木偶の坊!」
道路に叩きつけられた大男は、頭を抱えて聖人を睨み返した。
「か・く・じ・つ・に・コ・ロ・ス」
明らかに目の色が変わった大男。
「殺れるもんなら殺ってみな」
聖人はそう言って挑発した。
二人の戦いが今始まる。




