070 精神世界の構造
聖人は気がつくと、アッシュの精神世界で椅子に座っていた。
相変わらず、アッシュはこちらの世界では美男子だ。現実世界とは似ても似つかない。
「紅茶でも飲むか?」
「ああ、淹れてくれ」
「ジャスミンティーとレモンティーがあるが」
「レモンティーで」
「かしこまりである」
アッシュが紅茶を淹れている間に、聖人は城内を見回した。中世ヨーロッパの甲冑やレイピア、燃え盛る暖炉などが置かれている。アッシュの隠れた趣味なのだろうかと聖人は思った。
「出来たぞ」
レモンティーを運んできたアッシュ。丸いテーブルに自分の分と聖人の分を溢さないように置いた。
「アッシュは何を飲むんだ?」
「吾輩はジャスミンティーであるよ」
「ジャスミンティーって苦くないか?」
「これは味を楽しむ茶というよりは、匂いを楽しむ茶であるよ」
アッシュはカップの持ち手を掴んで、自分の鼻に近づけた。
「さすがは新芽の茶葉だ。高級感の漂う良き香りがする」
「そうなのか」
聖人は至って興味の無さそうな素振りを見せる。
「貴公も飲むが良い」
アッシュがジャスミンティーに口をつけた。まるで、優雅な貴族の休日だ。
「おう」
聖人も口の中にレモンティーを入れた。
「どうだ?」
「美味い」
「それは良かった」
「こうして紅茶を飲んでいると、なんだか、ヨーロッパに迷い込んだ気分だ」
「その通りだ。この世界はヨーロッパを元に創っているからな」
ひとまずアッシュは、ジャスミンティーをテーブルの上に置いた。
「精神世界ってどういう構造なんだ?」
レモンティーを飲みながら聖人はこう言った。
「想像力だよ」
「想像力?」
聖人は意味が分からないという様子で聞き返した。
「精神世界では自分が想像した理想の世界を創る事が出来るのであるよ」
「それいいな」
「いかにも。この精神世界こそ恢飢の特徴だ」
「人間には精神世界は無いのか?」
「吾輩は人間ではないから分からんよ」
アッシュは再びジャスミンティーを飲んだ。
「雀羅」
「雀羅がどうした?」
「雀羅を使うには、武器の中に封印されている恢飢の魂と戦う必要がある。こういった精神世界でな」
「神代から聞いたよ。俺には時期尚早って言われたけどな」
「時期尚早か」
アッシュは意味深な表情を浮かべる。
「雀羅って、どれぐらい強いんだ?」
「雀羅というのは武器の能力を引き出す事だ。よって、武器それぞれに強さの違いがある」
「俺のMASATO☆ヅラッカーも強くなれるかな」
心配そうに下を向く聖人に、アッシュは笑顔で語り掛けた。
「大丈夫であるよ。大半は強化されるし、それに……」
アッシュは一呼吸置いて、こう続けた。
「雀羅の上位段階も存在するでの」
「雀羅の……上位段階?」
「吾輩からしてみれば、こちらの方が時期尚早である。貴公は雀羅の習得を第一に考えると良い」
アッシュは、そう言って立ち上がった。




