067 進み往く者ノ旋律歌
ラファエル校長は二人の才能を見込んで、ラストラッシュとヴォルフガングを魔法学校に招き入れた。
それ以来、二人は常にお互いを意識しながら勉学に勤しみ、魔法学校を卒業する際もラストラッシュは首席でヴォルフガングは次席の成績だった。
いつのまにか、二人は互いが認め合うライバルに成長していた。
「雪が降る卒業式か」
「幻想的でした」
二人は雪が舞い散る卒業式を後にし、故郷のモードゥ街に里帰りしていた。
「みんな、元気にしてるかな?」
「少なくとも……生きていて欲しいですね」
「アイツらがそう簡単にくたばるとは思えないぜ」
二人を慕っている子供達がいた。二人はその子供達に別れを告げて、魔法学校に入学した。もう三年になる。
「あれは……?」
「モードゥ街だ!」
モードゥ街が見えてきて、一気に高揚する二人。荒れた大地に崩壊寸前のビル群、危険地帯には変わりないが、二人にとっては一番長く住んだ街だけに、思い出深い。
「馬鹿な」
ラストラッシュが呟いた。モードゥ街に入ろうとするも、二重結界が張られていて近づく事すら不可能だった。
「くそ……何だこれ!」
ヴォルフガングが結界に体当りして破ろうとするも、いとも簡単に弾き返されてしまった。
「この結界は、相当強力な魔術師によって張られた様ですね」
額から汗を流すラストラッシュ。
「だったら、ブチ壊すまでだ」
ヴォルフガングはホルスターから二丁拳銃を取り出した。
「死隼の拡散機関銃」
無数の魔法弾が結界に襲いかかった。
「やったか?」
しかし、結界に撃ち込んだ弾丸は、全て結界の中に沈んでいった。
「駄目みたいですね」
「っち、こうなったら雀羅で」
「やめい」
しゃがれた声に、二人は振り返った。
「長老」
モードゥ街の長老が杖をつきながら、二人に近寄って来た。
「その結界は王覇師団の隊長が張った。お主らの力では傷一つ付けられんよ」
「長老……何があったのですか?」
ラストラッシュがヴォルフガングより早く話し掛けた。
「無神論者共の暴動じゃよ。我らの仲間に無神論者の密偵が隠れておったわ」
長老は信仰心の高い人物だ。故に無神論者を何より嫌っている。
「それで、どうしたのですか?」
「虐殺が行われた。同胞の血がかなり流れた」
モードゥ街にも暗黙のルールがある。無神論者達はその暗黙のルールを破ってしまった。
「虐……殺」
「事態を重く見たドンドロムの王がモードゥ街の弾圧を決断した」
「アイツらは、ガキ達は無事なのか?」
ヴォルフガングが長老の胸を力強く掴んだ。
「残念じゃが。生き残ったのは儂だけだ」
長老が悲し気な表情で首を横に振った。
「そんな」
項垂れるヴォルフガング。隣のラストラッシュはポケットから眼鏡を取り出して、耳に掛ける。
「これが、罪深き私達への仕打ちですか」
ラストラッシュは屈辱に燃えて歯軋りをした。
「ラストラッシュ?」
「私はここに宣言します。モードゥ街を再建させて、子供達の笑顔が溢れる街にすると」
ヴォルフガングは、初めて見た。ラストラッシュが生の感情で身体を震わせている所を。
「ロドリゲスさーーん!」
使用人のビョルンが、慌ただしく部屋の中に入ってきた。ビョルンのまだ声変わりしていない甲高い声に、目を覚ましたヴォルフガング。
「ぐっ……どうした?」
寝起きで頭が動かないヴォルフガング。
「天下様からお電話です」
「分かった。今行く」
ヴォルフガングは足を進めて、部屋から出た。
「社長」
ラストラッシュは夜通しで研究資料を読み、いつのまにか寝てしまっていた。そして、ラストラッシュはヴォルフガングと同じ夢を見ていた。
「橋谷所長……私は」
「ずっと寝てましたよ。大丈夫ですか?」
「はい」
ラストラッシュは立ち上がって、朝食を食べようと進み始めた。ポケットの中の眼鏡を耳に掛けて。
俺達は歩く
見知らぬ世界の果てに向かって
それは立ち止まる事を知らぬ獣の如く
暗く混沌とした闇を薙ぎ払い
輝きの最果てで見えた景色は未来だ
嗚呼そうか
俺達の足は
未来へ踏み込むためにあるのか
――――進み往く者ノ旋律歌
⊿To be next……
今回は唐突な詩を最後に書いて、申し訳ありません。アドレナリンが爆発してしまいました。




