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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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040  純琴術律


夕焼け空が美しい碩大区であった。


築三十年のボロアパートから出た二人は、夕焼け空とは正反対の暗くジメジメとした路地裏に来ていた。恢飢は基本的に人から隠れた場所に潜伏しているのだ。


逆に言えば、こちらから攻撃しない限り無害とも言えるが、いざ暴走しよう物なら一気に手がつけられない。そうなる前に退治しないと恢飢現象になってしまうのだ。


「反応はこの辺りね」


いつものように、神代が恢飢探査機のルホンモリアを使っている。恢飢に近づくと、レーダーが赤く表示されるのだ。


「あれか?」


聖人が指を差した場所に恢飢が居た。しかし、聖人は疑問を感じていた。恢飢は、狭い道路の真ん中で一歩も動かずに佇んでいるのだ。


「よく見つけたわね」


神代からお褒めの言葉を戴く聖人であった。


「にしても……あいつ動かないな」


「きっと警戒してるのよ」


「ていうか、寝てるのか?」


「おーい馬鹿野郎」


聖人に呼びかけられても、恢飢は指一本動かない。まるで気絶している様だ。


「チャンスよ。退治しちゃいなさい」


「おう」


ポケットから熊ちゃんのキーホルダーを取り出した聖人は、キーホルダーを天高くかかげた。


「破鏡」


聖人がそう言うと、キーホルダーはあっという間に武器へ変形した。


「なんだこれ?」


武器を不思議そうに見回す聖人。キーホルダーはメイスに変わり、メイスの頭部に棘が生えているのだ。


「モーニングスターね」


神代が横から顔を出してきた。


「モーニングスター?」


それは聖人にとって、聞き覚えの無い名前だった。


「中世ヨーロッパで使われていた武器よ」


「知らないな」


「まぁ、日本だと釘バットの方が有名ね」


「ようするに、釘バットのメイスバージョンだと思えばいいんだろ?」


「そういう事」


聖人はモーニングスターに力を入れて恢飢に近づいていった。いつ襲われるか分からないので、忍び足で歩いている。


「今よ」


「わかってらあ!」


恢飢の頭蓋を思いっきり砕いた聖人。殴られた恢飢は、直立に倒れて爆発四散した。


「ごほごほ」


爆発した恢飢から煙が溢れる。二人は煙を吸わないように服で鼻を隠した。


「罠だ!」


神代は危険を感じながら叫んだ。


「罠ァ?」


しかし、聖人は訳が分からないといった様子である。


「ダミーホー……プ」


神代は何かをいいかけながら、地面に倒れた。


「横文字並べられても分から……ねぇ」


聖人も倒れる。この煙は催涙ガスで、二人は気を失ってしまったのだ。


「上手くいったね」


「本当だ。引っ掛かってやんの」


すると、ガスマスクを被った二人組が現れた。二人は男と女である。


二人は神代と聖人の身体をまさぐる。何かを探している様子だ。


「あったよ姉ちゃん」


男が、聖人のポケットからMASATO☆ヅラッカーを取り出した。


「やったね。任務完了」


喜んだのも束の間、突如にして大風が吹き荒れて、催涙ガスが風で飛んでいってしまう。


「なんだよ、これ?」


「アタチに言われても知らないわよぉ」


戸惑う二人の目の前に一匹の猫が、尻尾を向けていた。その尻尾は扇風機の様に回り、やがて止まった。


「危険を感じて戻ってきたが……やはりであるか」


「猫が喋った!?」


「馬鹿者が、吾輩はただの猫では無いぞ」


「じゃあ何よ」


「吾輩は使い魔である」


アッシュの尻尾から闇のエネルギーが集束された。そう、あの技を使う気なのだ。


「ヤバイヤバイヤバイ。姉ちゃん逃げるぞ」


「う、うん」


マスクとMASATO☆ヅラッカーを投げ捨てて、足早に駆け出す二人。


「純琴術律・濁(メクサラ・ヴェーガ)」


全てが遅かったのだ。まもなく、盗人二人の叫び声が路地裏に木霊した。


「うわあああああ!」


攻撃魔法が直撃し、天高く舞い上がる二人。そのまま二人は何処か遠くまで弾き飛ばされてしまったのだ。


「お主ら、大丈夫かの?」


前足で顔をポンポンと叩くアッシュ。あくまで優しく、爪を立てずに。


「うん……?」


神代がモゾモゾと身体を動かしながら起き上がった。


「ちょっと、聖人」


イビキをかきながら、だらしない顔で寝ている聖人に呼びかけた。


「神代ぉ……ムニャムニャ」


「何?」


「お前さぁ、以外と乳小さいんだな……ムニャムニャ」


「ちょっと! どんな夢見ているのよ」


夢を見ながら寝言をほざいている聖人にブチ切れた神代であった。

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