028 邪悪なる気配
魔法の弾が発射されるハンドガンは、魔法が使えないヴォルフガングにとって、命とも言える武器だった。
その武器を、名も知らぬ使用人に触れられるのは、とても腹立たしい事なのである。
「っち、暴れん坊が」
階段の下に落ちているハンドガンを無造作に拾ったヴォルフガング。
ハンドガンに傷が付着していないか、確認するが、どうやら無傷だったらしい。
「めんどくさいっての」
屋敷の扉を勢いよく開けたヴォルフガング。
「待って下さい!」
屋敷の使用人が愚かにも声をかけて来たのだ。ヴォルフガングは苛立った顔を見せながら、振り返った。
「何故、俺を止める」
「お仕事をなされないのですか?」
「だーかーらーよー」
使用人の目と鼻の先まで、近づいたヴォルフガングは、こう言い放った。
「今から仕事しに行くんだよ」
「………………」
圧力感と恐怖のあまり、喋れなくなった使用人。ヴォルフガングは「屋敷は頼んだぞ」と一言加えて、空間移動した。
ヴォルフガング程の実力者となると、空間移動は歩く事以上に容易だ。そして、短距離間であれば、行きたい場所に移動するのも可能である。
「発見したぜ。ベイビー」
空間移動先に居たの恢飢だ。恢飢はまだ、ヴォルフガングには気づいていない。
ヴォルフガングはハンドガンの引き金を引いた。
たったの一発だ。一発の弾丸が脳幹を貫いて、恢飢を撃ちのめした。
「グオオオオオオオ……」
雄叫びを上げて倒れた恢飢は、カードとなって消えていく。封印されずに絶命した恢飢はカードになってしまうのだ。
カードに封印される事と、カードになる事は違うのである。
「弱いな。Gランクか」
恢飢にはランクというものがある。Gが最弱で、Aが最強の恢飢だ。ヴォルフガングが倒したGランクの恢飢は、魔法を覚えている者であれば、誰でも楽に倒せる。
その分、懸賞金額はかなり低いのであった。
「小遣いにもなりゃしねぇ」
愚痴を溢しながら、カードを拾った。実は、ヴォルフガングがカードを拾ったのはこれで、30回目だ。
故に、朝から30匹の恢飢を倒した事になるのだ。
「どいつもこいつも小粒ばかり。大物は何処にいる……」
ヴォルフガングは、邪悪なる恢飢の気配を感じていた。最低でもCランク以上はあるだろう。そこらの警察が対処出来るレベルでは無い。
この邪悪なる気配の正体こそ、親玉であろうと、ヴォルフガングは睨んでいた。
「しかし」
空を眺め、考え事をしているヴォルフガング。
「王に何があったというのだ」
意味深な言葉を呟いたヴォルフガングはその場を後にした。




