二十八話 脱出への作戦
TBBのトップに拉致され、閉じ込められている龍助と穂春。
そんな中龍助が出口への経路を見つけることに成功したが、今目の前にいる男、一ノ宮清が邪魔をしてきてなかなか行動にを移せずにいた。
「さて、そろそろ実験室の準備の確認をしてこようか」
座っていた椅子から立ち上がり、すぐ後ろにあった出口のドアから出て行く清。
出ていく間際まで気味の悪い笑顔を龍助達に向けていた。
「行ったか」
「兄さん顔を。治療します」
「ああ、ありがとな」
先程清に膝蹴りされた龍助の顔面に穂春が手を当てて、治癒魔法を施してくれた。
痛みがみるみる引いていき、完治までとはいかないがある程度回復することが出来た。
「私たち、どうなるのでしょうか……」
「穂春、よく聞いてくれ」
「……? はい」
「俺があいつの足止めをするからその間に逃げるんだ」
「え?!」
龍助の言葉に穂春は予想通りの反応を見せてきた。
龍助が考えた策を穂春にそのまま伝えると、彼女は首を横に振った。
「兄さん、それは出来ません」
「頼む。穂春、これしか方法が……」
「ない訳ありません!」
龍助にこれ以上言わせまいと遮るように穂春は言い切った。
それくらい強く言うようになったことは兄としては嬉しいことが、今この状況を打破する方法が見つからない。
「出口までの道順は分かってるんですね?」
「あ、ああ。これが本当かは分からないが」
「でしたらこうしましょ!」
龍助の作戦の一部を変更する形で穂春が提案してきてくれる。
「……なるほど。確かにそっちの方が可能性はあるな」
「兄さんは人を助けるために自分を犠牲にしすぎなんです」
久々に妹に叱責された龍助は少しだけ反省することにした。
しかし、穂春の作戦も運によっては失敗する可能性も高い。
確率的には五分五分だ。
(それでもやってみるしかないか)
何もしないよりかは良いと考えた龍助は妹の作戦に賭けることにした。
◇◆◇
拉致されてからどのくらいの時間が経ったのか分からないが、部屋の外から足音が近づいてくるのが聞こえる。
龍助達は作戦を実行するため、定位置に着いた。
足音がドアの前にまでやってきて、鍵を開ける音がする。
その後すぐに金属音の嫌な音を立てながらゆっくりとドアが開いてきた。
「やぁやぁ。良い子にしてたか、な?」
ドアを開けたのは予想通り清だった。
彼は変わらず陽気な感じでドアを開けたが、その次の瞬間、清の動きが止まる。
動きが止まるというより足が動かなくなっている。
彼が足下を見てみると、つま先を初め、徐々に石化していく。
気づけば、部屋中に緑色の霧が充満していた。
龍助達は予め穂春の魔法で効かないようにしている。
「あー、なるほど。ペルセポネか」
すぐに霧の正体を見破った清は慌てた様子はない上に何か対策をしてくることもなく、とうとう体全体、霧に飲まれて完全に石化してしまった。
「今だ! 逃げよう!」
「はい!」
石化したことを確認した龍助達は急いで部屋を出た。
そして龍助が先程見た通りの道順で次々と進んでいく。
いくつかの分かれ道を通って行き、最後の曲がり角を曲がると出口と思われる光が見えてきた。
「穂春、もう少しだ!」
「わかりました!」
穂春の手を引き、一気に光の中へ飛び込んだ龍助達は目の前の光景に目を見張ってしまう。
そこに広がっていたのは、外の世界ではなく、通ったはずの分かれ道だった。
「そ、そんな……。出口じゃなかったのか?」
「残念ながら、ここには魔法を仕掛けたよ」
落胆する龍助達に清の声が囁いてくる。
声のする方へ向くと、そこにはやはり清が立っていた。
この時既に、ここから出られるという龍助達の希望は絶望へと移り変わってしまっていた。




