二十七話 出口への経路
ATOで見学をしていた龍助達だったが、突然侵入してきたTBBのトップを名乗る男が現れ、天地兄妹が連れ去られてしまった。
「ここ、は?」
連れされた時よりかは視界も比較的明るかったが、目を開けてもまだ薄暗い場所にいた龍助。
その傍らには倒れている穂春がいた。
「穂春、穂春!」
「……兄さん?」
倒れていた穂春を揺さぶり、目を覚まさせた龍助は内心安堵していたが、すぐに緊張感が襲ってくる。
薄暗く、明かりも天井からぶら下がっている一つの電球のみ。
無音に近いほどの静寂がまた部屋の不気味さを強くしていた。
「おやおや、お目覚めかい?」
「あんたは……」
「おっと、名乗ってなかったね。改めて、俺は一ノ宮清。TBBの最高責任者です」
清は丁寧な自己紹介をした後に龍助と穂春の顔からつま先の隅々《すみずみ》まで舐めまわすように見つめてくる。
それだけでも気持ち悪いのに、清はさらに不気味に笑ってきた。
「やっぱり君たちの力は興味深いね」
「俺たちをどうするつもりだよ」
「そりゃ、実験に付き合ってもらうんだよ」
龍助の問いかけになんの迷いもなく答える。
TBBの実験という時点でろくでもないことは分かっているので、すぐにでも逃げ出せる方法を探っていた。
「君分かりやすいね。簡単には逃げ出せないよ」
龍助の考えを読み取ったような口ぶりで清が話してくる。
その余裕な姿勢に憤りを覚えたが、今の自分では目の前の男に勝つことはまず不可能なのは変わりようのない事実だ。
穂春と一緒に戦ったとしても、どちらかを人質にしてくるのがオチだ。
(……仕方ない。一か八かだ)
龍助は一つの可能性にかけることにした。
それは、穂春だけでもこの場から逃がすための時間稼ぎだ。
龍助が清を相手にして、その間に逃げてもらうが、問題はここからどうすれば出ることが出来るかということだ。
そこで龍助はある行動に移す。
(今回も上手くいくかわかんないけど……)
ここから出口までの道のりを千里眼で見通すイメージをする。
今まで、自分が意識を向けたらその通りのことが何度か起きたので、今回もその現象になることを祈った。
すると、龍助の頭の中にある場面が映し出される。
自分たちがいる部屋を出て、道順を辿っていくと、光がある場所に出る。
(これが出口か!)
この見えているものが本物かどうかは分からないが、これにかけるしか方法がない。
すぐにでも行動に移そうとしたが、清がその瞬間を見逃すはずがなかった。
「何を考えている? 余計なことは考えちゃダメだよ?」
そう言いながら清が龍助の髪を鷲掴みにしてくる。
そしてニッコリと笑った清は突然、掴んだ髪を下に引っ張りながら龍助の顔面を膝蹴りしてきた。
「兄さん! 大丈夫ですか?!」
穂春が龍助に駆け寄ってきた。
顔面を蹴られたダメージはかなり効いてしまった。
「いやはや、なんか解決策が出たんだろうけど、そう簡単にはいかないと思っときなよ」
龍助達に忠告してきた清が近くにあった椅子に腰掛けた。
やはり、TBBのトップが相手ではかなり厄介だと改めて痛感する龍助だった。




