二十六話 京とTBBの男
孝介達が入ることになっているATOの見学へとやってきた龍助達だが、今侵入者である男と対峙していた。
その相手は、なんとTBBのトップだという。
「久しぶりだな。京」
「え、京さん知り合い?」
「学生時代の同級生だよ」
龍助の疑問に男がそう答えた。
学生時代の同級生ということはかなり親しいのではないかなと思った龍助がふと京を見てみると、彼は今までにないくらい怖い顔で男を睨みつけている。
「余計なこと言うな」
「いいじゃないか。俺たちの仲だろ?」
「うるさい。お前なんかとは縁を切りたいんだよ」
京からは男に対する嫌悪感が半端じゃないほど溢れ出ている。
それだけで、京が男をどれほど嫌っているのかが伺える。
「まさか京がいるとはね。ちょっと予想外だよ」
「……」
男は京に友好的に話しかけてくるが、話しかけられた本人は睨みつけるだけで言葉を発さない。
「まあ、今日はここの情報とそこの兄妹をいただきに来ただけだから、君は引っ込んどいてね」
そう言った男が一歩、また一歩と近づいて来た次の瞬間、京が発動式を出現させた。
発動式からはいつの日か見た真っ黒で大きな弾が現れる。
「脅迫か。そんなもので俺は止められな……」
男が最後まで言い切る前に京が弾を放ち、攻撃した。
弾は男の体を貫き、龍助達がいる部屋をも吹き飛ばした。
幸い龍助達は京が張った防壁で無事ではいられたが、部屋とその周りは更地になってしまっていた。
「け、京さん?」
「チッ……。やっぱりこの程度では倒せないか」
この程度というには無理があるくらい更地にしていることに対してツッコミたい龍助だが、今はそれどころでは無いので、受け流すことにした。
肝心の男の腹部には抉られたような穴が空いていた。
「嫌だねぇ。いかにも殺意がダダ漏れだよ」
殺されたはずの男の声が龍助達の耳に止まった。
辺りを見回すが、それらしき人物は見つからない。
「ここだよ」
次の声が聞こえてきた瞬間、龍助と穂春の背後にその声の主が現れた。
龍助達は気配に気づくことが出来なかったため、あっさりと背後を取られた。
「龍助達から離れろ!」
「おっと、それ以上は来ない方がいいよ?」
京が近づこうとしたが、男が龍助達の首に刃物を突きつけて脅してきた。
「もうここの情報は良い。この兄妹さえ手に入ればこちらのものだ」
男がニヤリと不気味に笑う。
さすがの京でも下手に動けないでいる。
動けば龍助達の身の安全は保証されない。下手をすれば死なない程度に傷つけられるだろう。
そして、男と龍助達の足下から影のようなものが浮かび上がって彼らを飲み込んだ。
影が消えると、その場に龍助と穂春、男の姿は綺麗さっぱり消えてしまっていた。
「待て! 龍助達を返せ!」
もう姿を消してしまった敵に向かって叫んだ京の声だけがその場に響いていた。




