一話 施設のお客様
五月一日の午後、入学式の準備で早く帰れることになっていたが、龍助は屋上にいた。
転校生である叶夜と颯斗を連れて。
「未だに状況が飲み込めてないんだけど……」
「まあ、そうよね。私たちも急に聞かされたことだから」
叶夜達によると、先日龍助達が帰る前に京から月桜高校に転校生として潜入して欲しいと言われたらしい。
何故かと言うと、万が一龍助と穂春の二人が危険な目に遭った時に、手助けできるようにするためだ。
京では歳的に高校生は難しいということで、この二人を送って来たみたいだ。
手続きに関してはTPBが全部してくれたとのこと。
(唐突すぎるし、めちゃくちゃだな……)
この二人なら心強いが、いくらなんでも強引すぎるなと龍助は頭を抱えた。
そもそも学校で危険人物の可能性はないに等しいのではないかとも思う。
「ところで、穂春ちゃんは?」
「ああ、穂春は明日の入学式に来るよ」
「そうか……」
龍助の答えに颯斗は少し残念そうに肩を落とした。
惚れてる相手に会えなかったことがショックだったようだ。
「ま、とにかく、これから同級生としてもよろしくね!」
「お、おう……」
叶夜の明るい笑顔に押された龍助は愛想笑いで返事した。
◇◆◇
叶夜達と話し終わった龍助は屋上からそのまま校門へと向かった。
学校を出る途中に、体育館前を通ると、運動部の生徒や教師たちが入学式の準備を着実に進めていた。
「いよいよ穂春も高校生か」
「早いものよね」
「うん。って!! いつの間に!」
先程屋上で別れた叶夜達が龍助の背後に立っていた。
学校から出る校門は一つしかないので、後から来るのは必然的なことだが、気配を消していたのはさすがに驚いてしまう。
「言い忘れてたんだけど、登下校も一緒に行動することになってるの」
「マジか……。まあ、一度通り魔に遭ってるからそうなるか……」
叶夜の言葉に戸惑いを隠せなかった龍助だが、自分も穂春も通り魔に遭っているので、仕方ないことだとも納得する。
三人合流したので、早速校門を通って学校から出ていった。
しばらく歩いていくと、この間龍助が刺された通り道が現れる。
「ここで刺されたんだよ……」
「災難だったね。今はトラウマとか大丈夫?」
「ああ、ここ使わないと帰れないし、今は叶夜達がいるからな」
龍助の言葉に叶夜は嬉しそうに笑っていた。
「なら早く行くぞ」
「もう、せっかちね」
颯斗がせかせかと歩いていくのに対して、叶夜は呆れながら着いていく。
龍助も苦笑いしながら二人について行った。
この道の先に龍助達の施設、「四季の家」が建っている。
「兄さん! おかえりなさい!」
「ただいま」
高原先生達と施設周りの掃除をしていた穂春が龍助の姿を見て、すぐに駆けつけてきた。
「あら、叶夜さんに颯斗さんまで。どうされたのですか?」
「実は……」
聞かれた穂春に龍助が順を追って説明した。
突然の出来事だから、穂春も混乱するだろうと思っていたが、本人は納得したように何度か頷いていた。
「まあ、私たちだけでは対処出来ないこともありますし、お二人ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね!」
「よろしく」
お辞儀をしてきた穂春に快く承諾した叶夜と颯斗がそろそろ帰ろうとした。
「よければ夕飯を食べていかれませんか?」
「そうだよ。世話になるからこれくらいは」
「え、良いの? 施設の人とか大変じゃない?」
「よくお客さんが来るので大丈夫ですよ」
遠慮している叶夜達を龍助達が説得して、本日は二人も夕飯に同席することになった。
龍助達のお客さんが来るのはかなり久々なので、龍助はまた賑やかになることが楽しみで少し胸が踊った。




