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宿命の力者  作者: セイカ
第一部 一章 開花編
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二十八話 不穏な力

  京の魔法の一つである天誅(ユーディキウム)を見せてもらった龍助だが、叶夜達の方も心配になったので、そちらも見てみた。


(見ることしか出来ないのか……)


  先程から何もせずにずっと見ているだけの龍助は少しやるせない気持ちになったが、今の自分は下手に動けば足を引っ張るだけだとも思った。


「戦いを見届けるのも立派な役目だよ」


  龍助の気持ちを読み取ったのか、京がそんな言葉をかけてくれた。そのおかげで龍助は楽な気持ちになり、しっかり見届けるのと同時に勉強しようと思った。

  叶夜達は目の前の敵を見据えていた。


「く、クソ!」


  京にやられた仲間を見て、焦ってしまった黒服の一部が銃を撃とうとしたが、その前に颯斗が魔弾機を素早く取り出して弾を放った。

  魔弾は敵が持っていた銃を飛ばしてしまった。


「遅すぎる。素人か」

「お前達のしていることは犯罪。だからその罰を今ここで受けなさい」


  そう言いながら叶夜が敵に向かって手をかざすと、黒服達の頭上に発動式が現れたのとその場の熱気が急上昇し、同時に黒服達の体が燃えだした。


「な、なんだ!?」

「熱い!!」

「ぎゃあああ!!」


  発動式の下では火の海と化してしまっており、まさに地獄のようだった。

  燃やされた黒服達は火傷程度で済んだが、かなりの威力だったため、全滅してしまった。


「な、燃えた?!」

「あれは『ムスペルヘイム』。全てを燃やす領域魔法だよ」


  龍助の隣で京が説明してくれた。

  聞けばムスペルヘイムは領域魔法の中でも上位に位置するくらい強力な魔法らしく、使うのは長年力者をしているベテランでもなかなか難しいくらいなのだと言う。


(それを難なく使いこなすって、叶夜って何者?)


  叶夜ももしかしなくてもかなり優秀な力者なのではないかと思った龍助。


「こちらも終わりました」

「オッケー。じゃああとは颯斗に任せた」

「はいはい」


  叶夜が龍助達に振り返りながら報告した。

  了承した京が今度は颯斗にお願いすると、彼も軽く返事をして了承した。

  そして、颯斗が京画倒した史郎含む敵と叶夜が倒した黒服達に手をかざすと、地面から鎖が多数現れて、次々と敵を拘束していった。



 ◇◆◇



「これでTBBの敵は拘束できて、一般人は外へ出た。あとは……」


  そう言いながら京がずっとこちらを気にする素振りを見せずに儀式を行っている人達を見つめた。

  彼らは、京達が戦闘している中でも、ずっと儀式を行っていた。攻撃による影響などは全く無かったようだ。というのも、儀式をしている周りには防御用の結界が張られていたからだ。


「さて龍助、出番だよ」

「は、はい!」


  京に指示された龍助が警棒を持って儀式に近づいたが、力が強すぎて、後退しそうになる。

  しかし、それでは人々は助けられないので、歯を食いしばってまずは結界を破ろうとした。


「待て、龍助! 一旦下がれ!!」

「……え?」


  京の声に気づくのが一歩遅かった。儀式をしている場所を中心に何やら強い力が暴れ始めている。

  龍助が構えたが、力によって後方へ飛ばされてしまった。


(今度は何なんだ?!)


  次から次へとと龍助が苛立ちながら儀式の方を見て驚愕する。

  真っ黒で禍々しい霧が儀式自体を飲み込んでおり、小さくだが、稲妻が走っていた。その異様な光景に言葉を失ってしまった龍助。

  霧は徐々に集まり、凝縮(ぎょうしゅく)されていき、一つの球体へと姿を変えた。


「まずい!」


  京がそう言ったのと同時に手を合わせると、龍助や叶夜達、そして倒れている敵たちを青白い(まく)で囲んだ。

  一つの球体へと変わった霧はまるで爆弾のように爆発し、稲妻などが全方位に飛び散ったが、京が張った膜に触れると一瞬で消えてしまった。

  稲妻が消えたとこを見た龍助はこれが防御用の結界だということに気づいた。


「何が起こったんだ?」

「厄介なことになった……。あれが来る」

「あれ?」


  京の言葉の意味に気づけない龍助が黒い霧の方を見てみると、そこには球体はなく、爆発で生じた煙だけが残っていた。

  しかしその中をよく見てみると、一つの人影が立っているのが分かる。

  儀式をしていた人のうち一人が正気に戻ったのかと思った龍助だが、どうも様子がおかしかった。

  なぜか先程霧から感じていた禍々しさと全く同じものがその人物から感じ取れた。

  警戒をする龍助達。煙が晴れるとそこには儀式をしていた者が着ていた服をまとい、低身長で銀色の髪をした男が立っていた。


(誰だ? 普通の人?)


  龍助がそんなことを考えたが、その人物を普通の人と言うにはかなり無理があった。

  力者かとも思うが、それも違う。そもそもの話、人間なのかどうかも怪しく感じ取れてしまう。


「まさか、ここで『化身』が現れるとは……」

「化身……?」

 

  京の発言で、龍助はようやく目の前にいる男が人間では無いと確信したのだった。

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