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台風のような人
「あれ?わたしの部屋ここじゃないや」
少女の声で、沈黙は突然破られた。顔を上げると、車椅子に乗った見慣れない少女が、ドアの前にいた。
「すいません、ここ何階ですか?」
「6階ですけど…」
「あっ、一個下だ。ごめんなさい」
帰ればいいものを、少女は何故か車椅子を押して、こちらにやって来た。
「きみ、何歳?」
「13歳ですけど」
「一個下かー。よかった、わたしの病室お年寄りばっかりで、おんなじくらいの子居なかったから、不安だったの」
なにがよかったのだろう。
「あっ、わたし、真島咲希っていうの。よろしくね」
「北村大輝です。よろしく…」
「今日初めてここに来たから、迷子になっちゃって、困ってたの」
「はぁ」
「夏休み始まってすぐ右足骨折しちゃて、ついてないよね、ほんと」
聞いてもないのによくしゃべる人だ。
咲希のスマホが鳴る。
「母さんからLINEだ。行かないと」
やっと解放される。
「また、ここに来てもいい?」
「えっ、なんで?」
「えっ、だめ?」
「.いや、だめじゃないけど」
「やった!じゃあ、また来るね」
咲希はニカっと笑った。茶色の短い髪が、彼女の動きに合わせて揺れる。
そうして、彼女は車椅子を押して帰っていった。
台風のような人だ。




