2.記者、過去を振り返る
「あー楽しかった!」
古鉄君新聞部へようこそパーティ(仮)も無事に終わり、帰路につく私。
外はもう暗く、真夏の大三角が光っていた。
「フカちゃんお酒飲んだらあんなに変わっちゃうんだもん、面白かった!」
「そうかい、そうかい……」
「本子さんも飲めないって言うのに飲ませたら流暢な名古屋弁で碧ちゃん捲し立てて」
「そうだねぇ」
「……ん?」
左を見るとセトがいた。電柱の足かけに腰かけている。
「愛華はひとり言が凄いんだねぇ」
「あ、聞いてたんですか?」
「ばっちり聞いとったでよ?」
袖で顔を隠しくすくすと笑うセト。
「どうかしたんですか?」
「いやね、てっちゃんが愛華の事を認めたのであるなら、昔話をしようと思ってね」
「昔話?」
「見た目はそうじゃないかもしれんけど、わっちも結構長生きしとるんよ」
そういうとセトは目を閉じて、ゆっくりと話し始めた。
「昔、昔の話さね――――――――――――――――
今からおよそ一世紀前。
昔ここに数えて18になる若い女子が住んでおった。名は「栄」と言って、町の華と言われていたよ。
それと隣の町に住む数えて20になる青年。彼はその栄に一目ぼれしてね、猛烈なアプローチをしたのさ。
それはもうえらく熱かったね。毎日1本、シロツメクサの花を束ねて花束を持ってきててね。
『どうか僕とお付き合いを』なんて言っちゃってさ。
栄は戸惑いつつも、まんざらじゃあなかったんだろうね、その花束を受け取ったのさ。
それから1年。小さな喧嘩はしたけど、青年と栄の仲はどんどん深くなっていった。
栄も青年の事が大好きになっていったのさ。もちろん、毎日のシロツメクサも続いててね。
付き合って丁度1年目の日、青年はいつものように花束を持っていなかったんだ。
『今日はお花はどうしたの?』って栄が聞くと、
『今日はお花じゃないんです』って返したんだ。
手に持ってるのは給料の半年でも足りないくらいの立派な指輪。
『僕と、生涯を過ごしてください』いわゆる、プロポーズってやつさね。
栄はもちろん、快諾したよ。
『ちょっと、クサかったかな?』青年は照れ隠しに笑ったんだ。
それから新婚生活が始まった。それはもう毎日が幸せだった。
一緒に勝手に立って料理をしたり、一緒に近所の公園に出かけて日向ぼっこしたり。
どんな時でも2人は1つだった。
辛いことも悲しいことも、嬉しいことも楽しいことも、彼らは分かち合って生きてたんだ。
だけど、幸せは長くは続かなかった。
結婚してから10年。元々病弱だった栄は、病に侵されていた。
青年の看病もむなしく、栄は息を引き取った。
皮肉にも、彼女の命日は彼らが出会った日、契を結んだ日だった。
彼は悲しみで泣き叫んだ。ずっと隣にいると言ったのに。約束するって言ったのに。
『約束を守れなくて、ごめんね』栄の最後の言葉さ。
ひとしきり泣き叫んだ後、青年は立ち上がった。
『彼女を、蘇らせたい』
学も無く血筋もよくないが、何かにつけて一生懸命になると止まらない青年だった。
彼は本を読み、人に学び、地を這い、山に籠り、たどり着いた摩訶不思議な答え。
それが「黒魔術」だったのさ。
本来は呪いの為に行う呪術の類だったのを逆流させるという発想は、黒魔術師皆に笑われた。
それでもただひたすらに探し、追い求め続けた。
『嫁を、愛する嫁を生き返らせたい』その一心で。
それから半世紀が経った。彼はもう80になろうとしていた。
意識も朦朧のまま、研究を続ける日々がつづいていた。
ある日、新たなる発見をした。それを実証するため、鮮度の高い死体を用意したのさ。
それと、吹き込みたい魂が宿るモノ。
『我に力を与え賜え』そう言って魔法陣に触れた。
すると魔法陣がついに光り輝きだし、魔法陣に置いたはずの死体が動き出したのだ。
見た目は幼い女子だが、ある程度の記憶形は残っている。
青年「名屋大鉄」が恋焦がれていた、町の華「栄 瀬戸」の記憶が。




