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タヌキと俺と、時々坊主  作者: 黒辺あゆみ
3話 雨のち晴れ

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5 山頂

ということで、コンビニを出発した清水の車は、子どもを乗せて山を登っていくのだが。

 祖父母の家のある集落へ続く道への分岐から外れると、道がとたんにぬかるんだ泥交じりになる。

 この道の先が、清水の自宅である寺だという。

 祖父母の家から寺へ向かう際、徒歩だと違うルートに細い砂利道があるのだが、まさか車道側がこうなっているとは思わなかった。


 ――道理でこんなゴツい車が必要になるわけだ。


 道幅もそれほど余裕があるわけではなく、正直に言えば非常に怖い。

 そんなある意味ジェットコースター並みに怖い道を行くと。


「さて、到着です」


「はぁ……」


寺の本堂が見えてきた時には、郁也はだいぶ顔色が悪かった。


 ――ココ、雨降りの日は絶対車で来ない!


 というか、祖父母の家に一旦帰ってから、徒歩の道を来ればよかったと後悔している。

 郁也が傘を開いて車から降りると、子どもも尻尾を握ったまま続いて降りてくる。

 そう、あれから尻尾を握りっぱなしなのだ。

 どうやら気に入られてしまったようだ。

 確かに我ながら、というかポン助のものながら、フカフカでモフモフな尻尾だとは思うけれども。

 そんな郁也たちを横目に、清水も車から降りて傘をさす。


「こっちです。

 山頂には祠があるんですけど、そのあたりがいいでしょう」


清水がそう言って郁也たちに手招きしながら、山道を登っていく。


 ――まだ上るのか。


 足元が悪い中を、えっちらおっちらと歩ていくこと、しばし。

 急に視界が開けて、見晴らしの良い場所に出た。


「おぉ」


郁也は思わず声を漏らす。

 生憎と目の前が一面の雲なのだが、おそらくは景色が一望できるはずだ。


「これ、雨が降っていなければ良い景色でしょうね」


「春には山桜も綺麗なんですよ、そうなったら一緒にお花見をしましょうね」


清水にそう言われながら、郁也はキョロキョロと周りを見ると、清水が言っていた通り、祠があるのが見えた。

 手掘りの洞窟のような粗削りな祠で、入口には縄がかけられている。


 ――なんの祠だろう、お地蔵さんとかが置いてあるのかな?


 郁也がそちらを気にしていると、清水もその視線に気付いた。


「ああ、あの祠は昔、修行に使われていたという話ですね。

 今は危ないので入れませんけど」


「なるほど、修行ですか」


確かに、この山は修行の場になりそうである。

 寺も、昔は修業のための寺だったりするのかもしれない。


≪そっちイヤ~! 滅されそう~!≫


ポン助が脳内でイヤイヤしているけれども、滅される空気でも漂っているのだろうか?


「ところで、子どもの様子はどうですか?」


清水に尋ねられ、郁也はポン助から意識を離して下を見る。

 ここまで郁也のお尻の尻尾を握ったままである子どもが、ポカーンと口を開けて上を見ていた。


「……どうかな? あの、ヒヨリくん、探せそう?」


 ――どうやって探すのか、さっぱりわからないんだけどね。


 郁也は自信がないながらも、とりあえず聞いてみる。


「お空が近いね」


「そうだね、空が近いよね」


子どもが言うことに、郁也はウンウンと頷く。


「ヒヨリ、いるかも!

 おぉ~い! ヒヨリぃ!

 見えるっ!? 僕ココだよぉ~!」


子どもが空いた手を空に向かってブンブンと振る。


 ――いや、尻尾から手を放そうか?


 もしかして、握っていることを忘れているのかもしれない。

 釣られるように振られる手に引っ張られた尻尾が、地味に痛い。


≪尻尾ぉ!? でも怖くて言えないぃ!≫


ポン助は何故か泣き寝入りの体勢である。

 なんだかポン助はこの子どもに怯え気味なのだが、それも謎である。


「ヒヨリぃ~、ヒヨリぃ~!」


子どもが友達の名前を叫び続けていると。


「はぁ~い!」


どこからか別の子どもの声で返事がした。


「えっ!?」


 郁也が突然響いたその声にギョッとしていると、いつの間にか山頂に、子どもと同じくらいの年頃の男の子が立っていた。

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