10 またまた会った
放課後になった。
久しぶりに丸一日授業を受けた郁也は、眠気との戦いを終えて席から立ち上がって「うーん」と伸びをする。
雨の日とは、何故こうも眠くなるのだろう?
あの雨の音に子守唄の効果でもついているのかもしれない。
普段なら授業が終われば帰るだけな郁也だが、今日はオカルト部なるものに顔を出す約束を崎山としてしまった。
約束を違えたら後がしつこそうなので、素直に顔を出すことにする。
というわけで、郁也は活動拠点である数学準備室へ向かおうと、荷物を持って廊下に出た。
数学準備室は別棟にあって、そこそこ歩くことになる。
今も雨が降っているために、郁也が濡れないように別館へ渡り廊下の屋根伝いに向かっていると。
「……!」
「……!」
前方から女子二人が言い争う声が聞こえて来た。
既視感を抱きつつ視線をやれば、昼間に見たあの双子であろう人物のうちの一人が、女子の誰かと言い争っている。
声からして恐らくは、朝見たケンカ相手のもう一人だろう。
朝も放課後もケンカをするとは、よほど仲が悪いのだろうか?
――通りにくいから、ここでケンカをしないでほしいんだけど。
郁也は眉をひそめつつ、仕方ないから別の道を行こうと思って引き返そうとした時。
「あ!」
あの双子の片割れと目が合った。
「ねえちょっと、えっと、橘くん!」
すると彼女は必死の形相で、道を戻ろうとする郁也に呼び掛けてきた。
生来の人見知りが発動した郁也は聞こえないフリをしようかと思うものの、ここで無視をするのもなんだか怖くて、渋々立ち止まる。
「……なにか?」
けれど緊張して上手く声が出ずに低い小声となった郁也の問いかけに、彼女はビクッと怯えた様子を見せたものの、意を決したように話しかけてくる。
「ねえ、私お昼休みに橘くんと会ったよね!?
女子の友だちとお喋りしていたの!」
そしてそんなことを言ってきた。
どうやら彼女は、渡り廊下の向こうにいた方の人らしい。
「えっと、確かに、会ったけど」
郁也がそう返すと、彼女のケンカ相手が「そんなの嘘!」と叫んだ。
「そんなわけないわ!
彼、アンタと話したって言ってたもの!」
ケンカ相手の女子が猛反論している。
彼という単語に、郁也は男子に悪口を吹き込んでいた方の彼女のことを思い出す。
「ねえ、本当なの!?」
相手の女子に歩み寄って迫られ、郁也は思わず二歩後ろに下がる。
怒っている女子とは本当に怖い。
それにしても、なにをそんなに揉めているのか。
「あの、そっくりだから、間違った、とか?」
そう、双子でそっくりだから、その男子が見間違っただけだろうに。
中学の頃にクラスメイトに一卵性双生児の双子がいて、「間違われるのはしょっちゅうだ」と双子あるあるで語っていたものだ。
けれどこの郁也の指摘に、その女子は眉をひそめる。
「なに、そっくりって?
なに言ってんの?」
意味が分からないといった様子のその女子が、郁也の方も意味がわからない。
簡単なことなのに、何故疑問を返されるのだろう?
「だって、その人、双子だろう?」
郁也は放った言葉に、怒っているその女子も、双子の片割れの彼女も、きょとんとした顔になる。
「なに言っているの?
私、一人っ子よ?」
そして双子の彼女が、そう言った。
「……え?」
郁也はその場で固まる
≪なんか、メンドクサいことになってるぅ≫
ポン助の声が脳内に響いた。




