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9話

 月曜日さん、こんにちは。

 

 つまらないなー、リューイはさっさとお仕事に行ってしまった。

 なんでも日曜日の埋め合わせでいつもより早くいかねばいけないらしい。


 そんなわけでいつもリューイと一緒に食べてた朝ごはんも今日は一人です。

 今日の朝ごはんはねー、シリアルとソーセージと卵焼きだよ~。

お肉飽きてたので卵焼き嬉しい。


 なのに、何故か食べる気がしない。

折角リューイが用意してくれた朝ごはんなのだからちゃんと食べるけどね。


 もぐもぐもぐ。ぱくぱくぱく。ごくん。


 ふと『ヒューマニア』にいた時の事を思い出す。

 アグリがお皿にシリアルを入れてくれて、でもアグリは他の人間の世話もあるからさっさと行っちゃうの。

だから私はご飯を一人で食べてた。

 特にご飯を美味しいと思った事、なかったな……。


 ……。


 ご飯終了!

お皿、自分で洗おう! きっとリューイ「すごいなー!」って褒めてくれるよね。

そうだ! お掃除とかお洗濯も私がやればリューイの役に立てるんじゃないかな!

うんうん、頑張ろう!


 ――で。


 やる気満々で挑んだ私の成果は散々たるものだった。

お皿? あの床に粉々になってる物体ですか?

お掃除? 割れたお皿拾おうとして指切っちゃったので諦めました。床にポツポツと落ちてる赤い血がホラーです。

洗濯? 考えてみればやったことないのでどうすればいいのかわかりません。洗濯機、どのボタン押せばいいのー?


 私って役立たずだったんだな……。


 しょんぼりとリューイの部屋に向かうとベッドにゴロリと転がった。

リューイ早く帰ってこないかなー。つまんないよぅ。


 なんでかな。こんなのいつもの事なのに。ずっと一人だったのに。

 さびしい。さびしい。さびしい……



 ――は! 寝てた!

外はまだ明るいのでリューイはまだまだ帰ってこない。

 お腹がぐーっとなったので、リューイが用意してくれていたお昼ご飯を食べよう。

確か、冷蔵庫にいててくれてるハズ。


 台所に向かうと、割れたお皿がそのまま散乱していた。

片付けしてないし、そりゃ散らばったままだよね。

 邪魔だなあ、と思いながらお皿を踏まないように冷蔵庫を開ける。

踏んでもスリッパ履いてるし平気だけどさ。


 冷蔵庫の中にはシリアルの入ったお椀がポツーンと入っていた。

これがお昼ご飯だな。

 それをモソモソと食べて、サプリを飲む。

お椀は……また割っちゃうかもしれないから洗わないでおこう……。


 そしてまたリューイの部屋に戻りベッドに転がる。

早く夜になればいいのになー。暇だなあ。

 外行きたいなあ、昨日みたいにリューイとお散歩したいなあ。

なんて考えながらまたウトウト。


 ゆっくりと目を開いて窓の外に目をむける。

外は赤く染まっていた。

 まだ夜じゃないのか。

 リューイが帰ってきたら『おかえり』って言いたいから今からは絶対寝ないで起きておこう!

眠らないようにテレビをつける。

 リューイの部屋のテレビ大きい。

 チャンネルを色々と変えてみるけど面白そうな番組がやっていない。ニュースばかり。

一つだけ、ドラマがやっているチャンネルがあった。凄くつまらなそーなドラマだったけど、蜥蜴人が画面に一瞬だけ映り込む。

 リューイとは全然違うけど、なんとなくその蜥蜴人が気になりドラマをみる。

その後の彼のセリフは「そうだよ!」一言だけで、後はちょこちょこ画面の隅っこに映りこむ程度の役柄だった。

 ドラマの内容は全然わからないけど、私、そのドラマを最後まで見てしまった。蜥蜴さんだけ目で追ってしまう。


 「ただいまあ~……疲れた……」

ガチャリとドアが開き、リューイの疲れ切った声が聞こえてきた。

ちょっと早いような気がするけど、リューイ帰ってきたー!


 おかえりなさい!おかえりなさいリューイ!

私がリューイに飛びつくと、リューイはしっかりと私を抱きとめてくれる。


 「ヒィ、いい子にしてたか~……って、うおっ!」

台所に向かってたリューイ、散らばったお皿を見て声をあげる。

 そして。


 「ヒィ!!!」

 怒鳴るリューイ。

ごめんなさい! お皿、ちゃんと片づけようとしたんだよ!? 本当だよ!?

 ビクリと体を縮こませた私の腕を取ると真剣に手をジッと見つめる。

 

 「大丈夫か!? お前、どっかケガしてんじゃないのか!?」


 ケガ?

あ。指をちょこっと切ったんだった。

 リューイの目の前で小さな切り傷のある指をゆらゆら動かして見せるとリューイ、ホッとした顔をした。


 「今度から割れた皿は片づけなくていい、あぶねーから」

 そう言いながらリューイがお皿の破片を片付け始めた。

私はリューイの手を掴む。

 ダメ! リューイもケガしちゃう。


 「ああ、俺は大丈夫。ほら、俺の鱗、硬いから」

そう言ってハハハと笑う。

 リューイは凄い。あっという間に散らばったお皿を片づけてしまった。

 私はリューイの手を取るとじっくりと見つめた。

大丈夫かな? 本当にケガしてないのかな?


 「そんな心配しなくても大丈夫だって。でも、ありがとな……」

ヒューイが頭を撫で、そして私をぎゅーっと抱きしめる。

 「ああ、やっぱ癒されるなあ……」


 うん、私も。私もなんだか凄く癒されてるよ。

でも、そんなにぎゅ~っ!ってされるとちょっと苦しいよ。

 「ん~!」と小さく抗議の声を出す。

 

 「あ、わりわり! 苦しかったかー。ごめんごめん」


 そう言ってパッと私を抱く手を緩め顔を覗き込むとそのままリューイの顔が近づいてくる。

むぐ?


 「おっと。つい」


 ――あ、れ?

今、何が起こったのかな。

 リューイの口が私の口に……あれ?


 リューイは何事もなかったように台所に行くとぼんやりと呆けている私の前に料理を運んできた。

私の目の前にはシリアルとフルーツサラダ。

リューイの席にはいつもの通りのレアのステーキ。


 「どしたー? 晩飯の用意できたぞー?」


 私はスプーンを手にとりシリアルを口に運ぶ。

リューイも切り分けたステーキを口に運ぶ。

 

 私の視線、リューイの口に集中してしまう。


 ただ唇に触れただけ。

でもあれは確かにキスだった……。



 


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