28.幼馴染は唯一の男 【薫視点】
オレはいつも息苦しさを感じていた。
肉体的な意味ではなく、精神的な意味で。
――学校
それがオレの時間を奪う。
学生生活は青春だと言う人間がいるが、それが幸せだとは限らない。
学校に馴染めなかったオレみたいな奴や、いじめられて不登校になった奴だっている。
そいつらが幸せだとだと思うか?
子供にだって人間関係はある。
人間関係が全て上手くいくなんてことはあり得ない。
学校というところは、人と少しでも違えばバイ菌のように人を扱う。
下らねぇ。
レールに乗れなかった人間なんざいくらでもいるのに、世間じゃそいつらを存在しないかのように言ってやがる。
何故のそんなしょうもない学校に束縛されなければならないのか、オレは全く理解ができない。
義務だから我慢しろとか言われても、先の見えない苦痛に耐えることなんてできたりしねーよ。
ストレスが溜まるだけじゃねーか。
たから、オレは学校のルールを積極的に破った。
破れば破るほど自分が解放されていく感じがして、爽快だった。
気に入らない奴がいれば殴ったし、欲しい物があったら躊躇なく盗んだ。
女子はオレと趣味は合わなかったため、オレは所謂学校の不良と呼ばれる男達とよくつるんでいた。
しかし、散々意気がっていた男達は、オレが悪行を重ねる度に逃げていった。
途中でビビって、学校という檻に自分から入っていった。
あまりの根性のなさに、オレはこの世に男なんていないと錯覚しまいそうだった。
でも、オレから離れない男がいた。
悪事を働いても変わらずオレと接してくれる男。
学校とは関係のないところで繋がりがある男。
――北村和也
オレがカズっちと出会ったの保育園の時だ。
カズっちは俺が暴力を振るったのに、オレと友達になりたいと言ってきやがった。
変わってるなとは思ったか、オレは友達になってやった。
カズっちと遊べるのは、夏休みのごく僅かな期間だけ。
オレにとって、カズっちと遊ぶ時だけが学校を忘れることができた。
本当に幸せだった。
学校に来い、授業を受けろ、席を立つな、皆我慢してるんだからお前も我慢しろ、そんなことカズっちは一切言わない。
オレはカズっちと顔を合わせる毎に、カズっちのことが好きになっていった。
気付いたら、好きという感情を突き抜けて愛してしまっていた。
オレとカズっちの関係を表すとしたら、少なくとも学校の友達ではない。
なら、時々会う友達か。
いや、そんな安っぽいものではない。
もっと深い関係。
カズっちは幼い時からオレに幸せを与えてくれたこの世で唯一の男――。
そう、『幼馴染』だ
オレは中学を卒業した後、働くことを選択した。
他人に自分の時間の使い道を決められたくなかったからだ。
それにオレには働くことに一つの狙いががあった。
働くことで何処に住むのも自由に決められる。
オレはカズっちの家の近くに住んで、カズっちと毎日遊ぶのだ。
体力には自信があるので、金は肉体労働で簡単に稼げる。
金が足りなければ治験をしたっていい。
兎に角、時間は学生の時よりたくさんある。
楽しい生活が待っているはず。
オレはそう思っていた。
そう思い込んでいた――。
オレは失念してしまっていた。
オレが学校に行かなくなったとしても、カズっちが高校に行くことを。
いくら、オレに時間があったとしてもカズっちには時間がない。
カズっちが学校に縛られていては元も子もない。
やっぱり学校なんてろくなもんじゃない。
オレだけじゃなく、カズっちの時間まで拘束してしまう。
カズっちも結局学校があるから、夏休みの間だけしかオレと遊べなかった。
昔の人は学校がなくても生きていた。
それに今は分からないことはネットで調べられる。
勉強が必要なら、必要な時にすればいい。
カズっちは学校という檻のせいで、自由な時間を奪われている。
カズっちは学校という牢獄のせいで、学校に通うことが当たり前だと思っている。
オレがカズっち学校に行くことを止めさせたところで、気が変わるかもしれない
ハハハハハ! そうだ! カズっちの目を覚ましてやろう!
学校の設備が使えない環境に身を置けば、学校なんて要らないことにカズっちも気付くはず。
カズっちの通う学校を燃やそう。
燃やして学校を使い物にならないようにしてやる。
学校なんてなくなってしまえ――。
★★★★★
オレはカズっちの家の近所に引っ越してから、ひたすら計画を練っていた。
ただ火をつけたところでボヤ騒ぎでおしまいだ。
大きな建物を燃やすとなると、それなりの燃料が必要になる。
燃料ばらまくにしてもタンクを持った人間がうろちょろするのは流石に怪しすぎる。
警備員にバレてしまうだろう。
それら問題を解決するには一人だと流石に厳しい。
教員、もしくは生徒に協力者が必要だ。
しかし、オレにはそんな知り合いはいない。
そもそも、オレはカズっちが何処の高校に通っているのか知らなかった。
カズっちに会って聞き出す予定でいたのだが、なかなか会えずにいた。
オレはカズっちのどの辺に住んでいるのかは知っていたが、まだカズっちの家が何処のなのかも知らなかったのだ。
しらみ潰しに探して回ったが、北村という苗字の家のネームプレートが二、三件あった。
そんな時だった。
オレは村山麗佳という女に出会ったのは。
聞くところによると、村山はカズっちのカキタレらしい。
ちなみにカズっちの本命はもちろん俺。
村山はカズっちとは同じ高校に通っていた。
そして都合のいいことに、学校というもの不信感を抱いているようだった。
しかも、村山は相当病んでいる。
カズっちとの思い出話を聞くと整合性の取れない点がいくつかあった。
オレに一つのアイディアが思い浮かぶ。
村山を放火を実行してもらい、何かあったら全部村山のせいにする。
逮捕されてカズっちの会えなくなるリスクも回避できる。まさに名案だ。
村山を洗脳するのは簡単だった。
頭のネジが飛んでいたのだろう。
カズっちと一緒に過ごせる時間を増やす方法があると言ったら、すぐに飛び付いてきた。
オレは放火に必要な道具や燃料を村山に買い与えた。
燃料は村山のバックに詰めて少しずつ持ち運ばせるようにする。
ある程度燃料を学校に保管できたのを見計らい、俺は火をつけるように村山に指示した。
カズっち、学校がなくなったらいっぱい遊ぼうぜ!




