25話 アンデッドではないのに動く屍
あ、ありのままを起こったことを話すぞ。
母娘を助ける為にジャイアントゴブリンを倒して少し休んでいたら豚巨人達が全滅していた。
な、なにを言ってるか分からないと思うがオレも意味分からん。
虐殺とか瞬殺とかそんなチャチなもんじゃない!
もっと恐ろしいエルティアナの実力の鱗片を味わったよ!
何でたった1体の豚巨人で王国兵たちが瞬殺されるのにその豚巨人達を瞬殺できるのかさっぱり分からん。
絶対彼女、Dランク冒険者の実力じゃないだろうアレ!
当の本人は何食わぬ顔でオレが持ってきた外套を全裸の女性に着せていた。
そして彼女を抱き寄せて『お米様抱っこ』をしている。
「それって『お米様抱っこ』なのか?」
「まあ、そうとも言うね。こうすると速やかに移動できるし何より片手が塞がらなくても済むからね」
気になって聞いてみたらやっぱりそうだった。
それより塞がっていない手で片手剣を持っている所を見ると戦う気であるらしい。
おかしいな!
失禁して震えていた母娘と【肉の盾】になっていた全裸の女と同性のはずなのにエルティアナが同じ女だと思えない。
まあ、豚巨人に出会ったら彼女に頼るしかできない現状ではある。
生存者たちを救出したことだしさっさとこの街を脱出しなければならない。
彼女達を守ろうとした3人の兵士よ!
お前たちの意思はオレ達が継いでいくぞ!
そう思って石壁に叩きつけられた兵士を見る。
ぐったりと倒れていてぴくりとも動かない兵士。
だがオレはそいつの顔に見覚えがあった。
まさか!そう思って駆け寄ってみる!
そして確信に変わった!
そこには昨日の昼頃まで共にしていたヒューゴが血まみれで倒れていた。
「ヒューゴ!!」
お前!!ゴブリン1匹ですら手こずってたじゃないか!
馬鹿野郎が!!
くそくそくそ!
そう思っていると何か違和感を覚える。
微かに身体が動いているのだ。
「まだ息があるぞ!」
とはいえ文字位通り虫の息である。
おそらく身体には深刻なダメージを受けている。
目に見えないが全身骨折とか内臓が破裂していたりしてそうだ。
その時、後ろに気配がして振り返ってみる。
そこには女性を抱き寄せているエルティアナが居た。
「エルティアナ!ヒューゴが瀕死状態だ!すぐに助けないと!」
「いや、見捨ててこの街から脱出したほうがいいよ」
「ヒューゴを切り捨てて逃げろと言うのか!?」
「ゴブタロウ、私たちはこの3人を安全な場所に避難させるのが最優先だよ」
なんか彼女は最適な行動を選択する人のようで場合によっては見放す様だ。
確かに彼を背負って逃げるのは無理である。
だがここで諦めたくなかった。
まだ生きているのにそのまま逃げたら絶対に後悔してしまう!
「嫌だ!ヒューゴを置いていけない」
「じゃあ、どうするの?私は応急処置程度ならできるけど重症者の治療は無理だ!」
「私もそのような専門知識がなくて…お役に立てず申し訳ありません」
「畜生!なんか手はないのか!?」
息をしているのに助けることができない。
一体どうすれば良いんだ!
オレも魔物に襲われて死にかけた時があるがこうしてピンピンしてるのを…
そう思っていると疑問が1つ思い浮かぶ。
森牙狼に襲われた時、オレは全身を叩きつけられて虫の息だったはずだ。
でも目覚めてみると身体は痛かったがそこまで重症を負っていなかった。
つまりその時点で、エルティアナが手当をしてくれたということだ。
だが、それは応急手当の度を越えている。
つまり、彼女は応急手当以上の手段を持っているということになる。
「なあ、オレが森牙狼に襲われた時、重症だったはずだ。あそこからどうやって辛うじて動けるようになるまで治療できたんだ?」
「【治癒の呪文書】を使うことで身体の傷を癒したんだ」
「その呪文書はまだあるのか?」
「【治癒の呪文書】は1つだけあるよ」
よりによって1つだけか。
でも1つだけ疑問が浮かんだので訊いてみる。
「その呪文書を使うとヒューゴの怪我は治るのか?」
「完全とは言えないけど治るよ。ただそれでも生存するとは限らない」
やっぱ、この女嫌いだ!
『呪文書で治療できる』という選択肢を隠してやがった!
さて、ここで運命の選択肢だ。
〈オレはその呪文書を使ってヒューゴを治療する〉
〈何かあった用に呪文書を温存したいのでヒューゴを見捨てる〉
ここで選択肢を間違えれば一生後悔するだろう。
だがオレは迷わずに選択肢を選ぶことができた。
「なあ、エルティアナ!【治癒の呪文書】を使いたいんだ!」
「勝手なこと言って悪いけどヒューゴに使ってくれないか!?」
その呪文書の持ち主はエルティアナだ。
故に最終決定権は彼女にある。
オレは彼女に拒否されたら彼を見捨てなければならない。
「ふふふ、最高だよゴブタロウ!」
「エルティアナ?」
「呪文書を使うからちょっと退いててね」
そう言われて退いてエルティアナを通す。
彼女はヒューゴの身体に立つとポーチから呪文書を広げる。
すると呪文書から光が飛び出して彼の身体を優しく包み込む。
そして役目を終えた呪文書は崩れ去っていった。
「終わったのか?」
「うん、これで治療できなかったら諦めよう」
後方を警戒しつつヒューゴが目覚めるのを待つ。
「あー?ん?あれ?身体が」
「ヒューゴ!!」
「あれ?ゴブタロウ兄貴!ここで何やってるっスか」
「異変を感じて戻ってきたんだ!」
目覚めたヒューゴは呑気にオレに話しかけていた。
すぐにさきほどの出来事を思い出したのか急に立ち上がった!
「あああ!ここに豚巨人居るっスよ!みんな逃げてください!!」
「何っスか?その顔!まさか信じてないとか?」
「それならもう大丈夫だ!エルティアナが全てやっつけた!」
彼は彼女の顔を慌てて見る。
「ええっ!エルティアナ姉貴!本当にDランク冒険者っスか!?」
「ヒューゴ、過ぎたことはどうでもいい。それより何があったんだ?」
彼の的を得ているツッコミを華麗に受け流して彼女は質問をした。
うん、気持ちは分かる。オレもやりたかったんだそのツッコミ!
どうでも良い事を考えてしまい頭を振る。
「なんかエミリー伯爵令嬢の迎える護衛部隊が来たということでオレ達は屋敷の警備にまわされたっスよ」
「エミリー嬢を引き渡す時が一番警戒しないといけないと聞いたんだけど…」
そしたら何かを思い出してヒューゴが急に口を閉ざした。
「グリザイユの屋敷を警備してたんだな?それで?」
「そこに居た兵士の数が多すぎたっスよ!」
「明らかに最低限残しておく戦力すら動員している感じがして分隊長が危惧してたんだ」
「そこで分隊長がオレ達7人を連れて街の警護に戻ったス!」
えーっとグリザイユ屋敷では、過剰な警備体制になっていたようだ。
そこで分隊長が独断で部隊を率いて街に戻った…と。
「そしたら急に魔物たちが現れて分隊長たちは交戦し始めたっス!」
「オレ達3人は街の住民を避難させるように命じられてそれをこなしてたんだ!」
街の警備が手薄になった隙に魔物の大群に襲われたらしい。
だが、避難させていた割には死者が多い気がする。
「それでその避難させた人々はどこに居るんだ?」
「8カ所ある地下壕の1つに避難させたっス」
「でも、まだ逃げ遅れている人が居ると思ってここに来たっス!」
「そしたら豚巨人の群れが居て近くの生存者に襲い掛かろうと…」
この付近では、民間人の死体が少なかった。
それはヒューゴ達が避難させたおかげだろう。
でも、それでも住民の大半を逃がすことはできなかった。
「もういい、なんとか3人を助けたんだ。これ以上は思い出さなくていい!」
「姉貴!」
「ヒューゴすまないけどその地下壕に案内してくれないか?」
「あっ、もしかしてまだ動けないか?」
「大丈夫っすよ!この通りピンピンして…なんでピンピンしてるっスか!?」
もうこいつ、芸人になった方がいいんじゃないかな。
オレだって動けなかったのにあんなに元気そうでなんか損した気分がする。
胸を張って任せておけ!という動作を見てると本当にそう思う。
「治療したからだよ。さあ、案内してくれ」
「ありがとう、じゃなかった。いや合ってるか」
「いいよ、落ち着いてゆっくり案内してくれないか?」
「こっちっスよ!」
こうしてオレ達3人と生存者3人は地下壕を目指して前に進んでいく。
嗅覚には、この周辺に魔物たちが居た痕跡が残っていたが既に居なくなっていた。
奴らの視点から見るとBランク冒険者9人を瞬殺する化け物が居ると感じてしまい。
慌ててこの場を逃げだした感じだ。
そう思うほど、魔物姿が見当たらなかった。
ヒューゴに案内されて道を進んでいくと思うがある。
この辺でもあっちこっちが燃えているが犠牲者の数が明らかに少ない。
それどころか魔物の死体はおろか兵士の死体も少ないのを見ると…。
どうやら最前線は、豚巨人が屯していたあの場所だったようだ。
ただ、1つだけ疑問なのはグリザイユ家の屋敷にいた兵士達だ。
いくら命令とはいえ燃え盛る街を見れば任務を放棄して飛び出したはずだ。
もちろん兵士の死体もよく見てきたので何割かはここに来たようだ。
だがそれにしても指揮系統がめちゃくちゃになっている。
もはや軍隊として機能しておらず各自の判断で行動している有様だ。
故に各個撃破されたと言っても過言でないほど惨敗していた。
「ここまでこっ酷くやられるとはな」
「俺達、兵士として失格っスね…」
「そんなことありません。私達が生きているのはヒューゴさん達が奮闘したおかげです」
ヒューゴが暗い顔して自虐してみるのを見て女性が励ましている。
うん、誰から見ても感動的シーンだ。
その一欠片でもいいから頑張ったオレも励ましてくれないかな!
「ゴブタロウも頑張ったよ。だから気にしないで前に進もう」
「ああ、ありがとう」
立ち止まってヒューゴ達を見ているオレに気付いたエルティアナが励ましてくれた。
がこっちもなにか返さないといけないと思ってしまう。
その為、彼女にはどう声をかけようか迷ってしまった。
「やった!援軍が来たっス!」
彼の嬉しそうな声が聴こえてきた方向を見てみる。
遠くからは一糸乱れぬ隊列を組んだ8人の兵士たちがこっちに来ているのが見える。
やった!これで少しは楽にできるぞ!
そう思って兵士達に駆け出そうとするとエルティアナに手で制止された。
「どうしたんだ?」
「なんかおかしいと思わないか」
「どこが?」
「あれは行進する為の隊列だ。非常事態にしてはおかし過ぎる!」
なんかエルティアナが戦い過ぎて疑心暗鬼になっているようだ。
「ヒューゴちょっと訊きたいことがある!」
「何っスか?」
「この街を警備している王国兵の顔を覚えているか?」
「そりゃあ顔覚えが悪いって上官に怒られたので必死に覚えたっスよ!」
そういえばゴブリン退治でもそんなこと言ってたな。
かくいうオレも顔を覚えるのが下手だ。
そのせいか彼と意見が一致して急激に距離を縮められて仲良くなった経緯がある。
「そういえばゴブリン退治でも顔覚えが悪いって言ってたな!」
「はははっ!そうっスね!それで飲み会に行こうって…」
「つまりこの街に居るほとんどの王国兵の顔を覚えていると受け取っていいか?」
「はい、その通りっス…それがどうかしたっスか?」
なんかエルティアナは必死な様子で確認していた。
一体何が彼女を駆り立てているのだろうか?
「じゃあ、あそこに居る部隊はどこの分隊か分かるか?」
「……いや分からない。初めて見る顔ぶれっスよ」
「本当に分からないのか?」
「誰一人分からないっス。なんなら訊いてみますか?」
「ゴブタロウ!あいつらに向かって小石を投げつけてみてくれ」
いきなりとんでもない事を言い出して思わず彼女の顔を見る。
彼女は真剣な顔立ちで指示通りにしろと促してくる。
「もし怒られたらオレは知らないからな!」
「ちゃんと責任は取ってあげる。だから早く投げて」
「オラッ…よっと!」
なんか知らないが彼女は女性を抱き寄せているせいで無理そうなのは分かった。
仕方なく小石を拾いおもいっきり前方の王国軍の部隊に向かって投げつける。
投擲の練習をした甲斐があって前方に居た兵士の兜へ見事に命中した。
怒られると思って身構えたが何も起きなかった。
「すごい!石を投げられても動じないなんてまるで軍隊みたいだ!」
「ゴブタロウ兄貴!あれは軍隊っスよ!オレ達が頼りないからって酷いっスよ!」
「ゴメン。悪かった」
なんか更にヒューゴを精神的に傷付けたようで思わず謝ってしまう。
「私はDランク冒険者ティアラだ!只今、生存者を護衛中!」
「繰り返す!私はDランク冒険者ティアラだ!只今、生存者を護衛中!」
「不敬と知りながらも問う!貴公らの部隊名と任務を報告せよ!」
「繰り返す!不敬と知りながらも問う!貴公らの部隊名と任務を報告せよ!」
王国兵に向かって2回も同じことを叫んでいる彼女を見る。
明らかに友軍を見る顔ではなかった。
「我々ハ第3軍ニ所属スル第8分隊ダ!生存者ノ救出ニ来タ」
「生存者ハ我々ガ預カル。オ前達ハ街ニ戻リ引キ続キ生存者ノ捜索ニ当タレ!」
なんか呂律が回ってないが回答が返ってきた。
しかしそれを聞いたエルティアナは戦慄した様子で警戒している。
「ヒューゴ、彼女を頼む」
「ああ、疲れたっスね!わかりました預かるっスよ」
彼女は、お米様抱っこしていた女性をヒューゴに引き渡した。
そして前方から来た王国軍の方を見据えた。
「ゴブタロウ!ヒューゴ!【敵部隊】から生存者を守れ!」
「はあっ?」
「お姉ちゃん!あれは味方だよ!敵じゃないよ!」
「ちょっと待ってください敵じゃないっスよ!さっき聞いた通り味方っスよ!?」
何言ってんだこいつと言おうと思った瞬間、何かが風を切ってオレの真横を通り過ぎた。
念の為に確認してみると『矢』が刺さっていた。
まるで飛んできて間もないように微動だしている。
慌てて飛んできた方向を見る。
救援に来たはずの3人の王国兵がクロスボウを構えている。
残りの5人は槍や武器を構えてこっちに向かって走って来る。
後ろを見ても誰も居ない。
そう、この場はオレ達しか居ない。
つまり…この矢は。
「一丁前に会話しやがって動く屍がっ!!」
「暴風 初級魔法“風の刃”!」
「暴風 中級魔法“切り裂き竜巻”!」
エルティアナは怒声をあげて容赦なく風魔法を打ち込んだ。
接近してきた王国兵達は、見えない竜巻の餌食になり瞬く間に肉片となって飛び散る。
後方でクロスボウを構えていた王国兵達は『風の刃』で首や胴体を斬り落とされる。
その3人の兵士は噴水の様な血を出しながら倒れた。
「きゃあああああああ!」
「あああああ怖いよおお!」
「エルティアナ姉貴!味方殺しは重罪っスよ!?」
だがオレはそうは思わない。
だって攻撃してきたんだもん。
攻撃してきたら敵だろう。
Q.E.D.
そう思って肉片の塊を見る。
うわー前にも見たがミンチより酷いなコレ。
この肉塊ですらない物体は、山道でも見たせいかそれほど驚きがないのが逆に辛い。
「姉貴!姉貴!人殺し!」
「ヒューゴ、落ち着け彼女は…」
そう言いかけて言葉が止まった。
後方に居たクロスボウを構えた兵士たちが立ち上がったのだ。
頭や胴体が無いのも関わらずだ。
「ええ??えええっ!あああっばばばっば!何っスっかあれ!?」
「あれは動く屍だ!だから攻撃をした!」
「そんなバカな!もうすぐ夕焼けが近くて曇っているとはいえ日中で!?」
3人の兵士だった何かがこっちに向かって歩いてくる
頭という司令塔がないのに動き出すのは生物ではあり得ない!
つまりこいつらは死者である。
「生存者ハ我々ガ預カル。オ前達ハ街ニ戻リ引キ続キ生存者ノ捜索ニ当タレ!」
死んでいるはずなのに相変わらず何事もなく話してるのを見て確信する。
ああ、こいつら動く屍だと。
だがこいつらはそれ以上前に進めなかった。
血を流し過ぎて肉体が限界を超えて倒れ込んだのだ。
なんかあっけなく終わって拍子抜けをする。
そりゃあ、動く屍といえど肉体が動けなきゃ意味ないよ。
ちょうどここから見ると切断された傷口がよく見えた。
中身は空っぽだった。
血肉や骨は一切見当たらずまるで革製の胴着か何かなのかと思うほどだ。
「なあ、エルティアナ!中身が空っぽなんだが!」
「ねえゴブタロウ…山道にあった死体を覚えている?」
「あのぐちゃぐちゃな内臓か何か飛び出した物体か?よく覚えてるよ」
そうオレ達がこの街に戻ってきたのは山道に大量の死体があったからだ。
それは『ピエール・フルニエ』少佐率いる王国軍の部隊だった。
だから…そう思って彼女の顔を見る。
彼女はオレが察したの感じたのか微笑んでいた。
「つまりこいつらは!エミリー嬢を迎えに来た護衛部隊の王国兵か!」
「うん、ヒューゴの話を聞いて確信したよ」
「実はその前に知ってたんじゃないのか?」
オレの問いを聴いて何故か嬉しそうになる笑う彼女。
なんでこの状況で嬉しそうになるのかさっぱり分からない。
やっぱ、なんか変だ。
「だって、明らかにこの街に居た兵士と鎧の形状が違うんだもん」
「そしてこの形式の鎧はピエール少佐率いる部隊が身に着けていた物だと踏まえると」
「ヒューゴが答えられないのは最初から分かっていたよ」
当然の様に驚くべきことを話す彼女。
本当に彼女の観察眼はどうなっているんだ。
「でも念の為に会話して分かったよ。明らかに人の喋り方じゃないってね」
「じゃあ、さっさとこの街から逃げないといけないな」
「そうだけど素直に逃がしてくれそうもないよ!ヒューゴ!ゴブタロウ!警戒しろ!」
もう一度倒れ込んだ王国兵の遺体を見る。
その大きな空洞から何かが出てきた。
それは赤子だった。
ただの赤ん坊だった。
まるで青色の顔料をぶちまけた様に肌が真っ青だった。
それ以外はただの赤ん坊である。
いや、訂正しよう。
これがただの赤ん坊なワケがない!
3人の赤ん坊は、ハイハイしながらそれぞれ近くにあった死体に近づいていく。
異様な光景でオレ達は動くことはできなかった。
そして赤子が死体に触れるとそのまま吸い込まれるように体内に消えていった。
すると死体は痙攣を起こしてその場を暴れ出した。
大きく開いた口から内臓や骨を吐き出し始める。
まるで死体の皮以外は要らんとばかりに血肉を吐き続ける。
そして吐き出す物がなくなったのか口を閉ざしてしまった。
いつの間にか痙攣も収まって血肉に汚れている以外はただの死体に戻った。
次の瞬間、何事もなく立ち上がって近くにあった斧を手に取ってこっちを見る。
生気を失った顔であるが目は開いており生きているように動き始めた。
他の赤ん坊達も新たな肉体を得たのか武器を持ってこっちを見てくる。
そして同時に何度も同じことを言い出し始めた。
「「「我々ハ第3軍ニ所属スル第8分隊ダ!生存者ノ救出ニ来タ」」」
「「「生存者ハ我々ガ預カル。オ前達ハ街ニ戻リ引キ続キ生存者ノ捜索ニ当タレ!」」」
思わずエルティアナを見る。
あまりにも理解の範囲を超えていたのか彼女は苦笑している。
なんであの光景を見て笑えるんだよ…。
仕方がないので深く考え込んで前世の記憶から何か役立つことを見つけようとする。
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まず自分のキャラクターシートと10面ダイスを用意する
そしてサイコロを振ってSAN値チェックをしよう
出た結果をキャラクターシートにあるこの項目をみて…
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うん!意味分かんない!
魔物名とか余計な事は出てくるのに肝心の事が出てこない前世の記憶に腹が立つ!
頭に浮かんだキャラクターシートとやらの紙をビリビリに破いてサイコロを投げ捨てる。
そしてもはや動く屍ですらない『何か』に距離を取ってグラディウスを構える。
「もうやだ帰りたい」
オレの本音は誰にも聞こえることはなかった。




