村長の頼み
あれから3日が立った
村を襲っていた魔物の群れはどうやら全員ゾンビに操られていたらしくゾンビが死んだ途端正気に戻りもとある場所へ帰って行った。
魔物の襲撃の被害は大きく復旧作業に取り掛かっているがいつ終わるかもわからない。なにしろ村の住民の4分の一は重症、または死亡してしまっていて人出が足りないのだ。
俺も復旧作業に参加しているが、正直焼け石に水だと思う。
「バジルちょっといいか?」
「レンヤさん。どうしたんですか?」
彼の名前はレンヤ。俺と同じ人の顔立ちをした蜥蜴人で、若くして村の兵士を束ねるリーダーを務めている。後メッチャイケメンである。落ちこぼれの俺とは月とスッポンだよな、自分でいって虚しくなってきた…
「どうした?ため息なんか吐いて」
「あっ、いやなんでもないです。」
やべ、今無意識にため息吐いてたぞ俺。
「それよりも、何か用事あるんですか?」
「ああ、村長がお前を呼んでいる」
「へ?村長が?」
ーーーー
「おお、来たかバジル」
「村長、用ってなんですか?」
「まあ一旦座れ」
村長にそう言われ俺は地面に胡座をかいて座った。あっ煎餅ある、美味そー…
「…食べてもよいぞ?」
「えっ?いや別にそんな…」
「涎がたれておるぞ」
やべ、また無意識に。
「無理をするでない。農業が出来なくなり収入が無くなったのでろくな飯を取っておらんのだろう」
「…はい。じゃあお言葉に甘えて」
あ、美味い。醤油煎餅だこれ。
しかし村長の言う通り俺は育てていた家畜と野菜を全て魔物に食い荒らさてしまい収入源がゼロになってしまったのだ。おかげで大した食事もできずに…
あれ?農業が出来ないってことは俺ってまさか…
ニートってこと…?
「ーそこでお主にはゲイル王国へと行ってもらいたいのだが…」
ん?え?ちょっとまって!!
「え?ちょっと待ってどう言うこと!?俺がゲイル王国に行くって!?」
ゲイル王国ってここから3日はかかる遠い場所でかなりでかい国だぞ!?
「聞いておらんかったのか?もう一度言うぞ。今この村は危険な状態にある。建物はほとんど破壊され食料調達もろくに出来ず、さらには兵士の数が圧倒的に少ない。この状態であのゾンビの様な敵が再び襲撃に来たらこの村は今度こそ終わる。」
村長の言っていることは俺も前から何となく感じていた。人手が足りないのだ。何をするにしても動ける人が少なすぎる。
「そこでお主には王国へ行って救援を頼みたいのだ。必要なのは食料、家を建て直すための材料そして人員だ」
なるほど。この村は外との交流はそこそこしている。確かゲイル王国とも交流をしていて俺の育てた野菜何かも輸出していたからな。救援を頼みに行くのは納得できる。
「あれ?でもそれなら俺よりも適任がいるんじゃ…レンヤさんとか。」
「レンヤは村を防衛するのに必要な戦略だ。長い間村を離れさせては不安なのだよ。」
「いやでも俺じゃなくても…」
「お前には息吹がある」
後ろから声が聞こえたので振り返るとそこにはレンヤさんが立っていた。
「レンヤさん。息吹って?」
「3日前にお前がゾンビに向かって放ったものだ。もっともわたしは村長の話を聞いただけだがな」
そうだ。あの時、腹から叫んだら喉が焼けるように熱くなって気がついたらゾンビが燃えていて…あの時は村が崩壊していて大変な状態だったから何が起きたのか確認が取れなかったんだ。
「本来息吹は竜の血を継ぐ者しか使えない強力な技だ。それがどう言う訳かバジル、お前が使えたんだ。」
ん?竜の血を継ぐ者…?
「ちょっと待ってくださいレンヤさん!竜の血を継ぐって、俺は只のリザードマンですよ!?」
レンヤさんの言葉を聞き慌てて俺は返答した。だって俺はただの蜥蜴人で両親は二人共普通の蜥蜴人だから竜の血なんて絶対に流れてるわけないんだ。
「落ち着けバジル。現にお主が息吹を使った所を儂が見たのだ」
村長にそう言われるが、俺は動揺を抑えられなかった。自分が何者なのか不安に駆られてしまう。
「何で俺がそんなの…村長、何か知らないんですか?」
「…すまないが、儂にはわからぬ…」
…?何か少し間があったような?
「だがお主の息吹の威力は本物だ。その力なら外にいる魔物も相手にできるだろうし。今村で万全な状態で長い間外に出ることができるのはお主しかおらんのだ。」
村長はそう言うと俺に向かって頭を下げて頼みこんだ。
「頼むバジル。突然のことで困惑していると思うが、ゲイル王国へ行ってくれぬか」
「…」
どうしよう…つい最近までリザードマンの恥さらしと言われてたのに急にゲイル王国へ行くのは正直無理だと思う。いくら息吹ってやつが使えても学校の戦闘訓練でいつもドベだった俺が外の魔物に敵うわけがない。
でも村長には昔から色々と恩があるし…
「不安なら、一人連れて行かせようか?」
「センヤ。だが兵士達は皆怪我をしている。無理をさせるわけには…」
「村長。わたしの弟子は不幸中の幸いにも軽症で済んでいます。バジルと同行するのは問題ないはずです」
え?センヤさんって弟子いたんだ。えーと、つまり少なからず俺よりも強い人が一緒についてってくれるのか…
「まあ、それならいいかな?」
「バジル本当か?」
「はい村長。一人だと不安だけどセンヤさんの弟子が一緒ならこころ強いですし」
「そうか…ありがとう…」
そう言いまた村長は頭を下げ始めた。いやいや大げさだなー村長。そんなに感謝しなくてもいいのに。相手俺なんだし。
「よし。それじゃ出発の支度をしてこい。わたしはお前と同行する弟子に連絡をしてくる。一時間後に村の門で落ち合おう。」
え?一時間後!?
「ちょ、ちょっと!センヤさん早すぎない!?いくらなんでも!?せめて明日とかでしょ!?」
「早く出発しないとお前の考えが変わってしまうかもしれないからな。わたしと喋っている暇があったら早く準備をして来い。後58分だぞ」
この時間も含まれてんのかよ!!早く家に戻って準備をしないと!
「うおおおーーーっ!!!」
俺は全力で走って家へと向かって行った。前世も合わせて今までで一度も出したことのない程の速い速度で…
ーーーー
「村長…バジルがなぜ息吹を使えるか。知ってますよね」
バジルが去って行って二人となった空間でレンヤは村長に真剣な表情で問いかけた。
「ああ…だが今それを言うべきではない。」
「何故です?理由がわかっているなら本人に伝えるべきです。ただでさえあいつは不安になっているんですよ」
レンヤの言葉には怒りが含まれていた。それは仲間を思ってこそ出てくる怒りだった。急に使えるはずのない息吹と言う能力が発現してバジルは困惑をしている。知っていることがあるなら話すべきだとレンヤは思っていた。
「今は言えぬのだ!!あやつが息吹を扱えるのは……
自分の友を殺ろしたからなのだ……」




