撃墜命令
―戦艦大和CIC―
SM2は目標ミサイルを捕捉し、叩き落とした。
"マークインターセプト!!命中です"
「よしッ」
砲雷長がガッツポーズを取る。私は相応な歳なのでやらないが、同感だ
った。
だが、喜んだのもつかの間。
「「早期警戒管制機からの情報!」」
―護衛艦あきづきCIC―
「「新たな目標探知!!」」
船務士が危機的状況を伝える。
「敵、いや目標は!?」
すぐに艦長が情報の詳細を求める。
艦長が思わず「敵」と言ったのはスルーしておく。日本国と中華人民共和国は戦争に突入した訳ではないが、あながち間違いではないしな。
「目標20。この目標航空機と思われます」
これは……。
「波状攻撃です、艦長、砲雷長」
俺は思わず艦長たちに進言した。
「『急迫不正の侵害』です、殱15の撃墜命令を!!」
―戦艦大和CIC―
あきづきが撃墜命令を求めてくる。
「艦長……」
CICメンバ―は困惑し、私の顔色を窺うばかり。
有人機自体の撃墜命令。
これを出せば、中華人民共和国は日本国に宣戦布告する。
アメリカ合衆国の軍事プレゼンスが後退しつつある今、そんなことは絶対に避けなければならない。
「……大和CICよりあきづきCICへ。機自体の撃墜は許可できない」
―護衛艦あきづきCIC―
俺は舌打ちしてしまった。幸い誰にも聞こえなかったようだが。
戦闘機自体を撃墜できないのだ。
敵機はおそらく、対艦ミサイルを2発ずつ積んでいる。計40発。
落としきれない。
護衛艦こんごうは先程の発射でシステムチェックをしている。
必然的にあきづきが迎撃担当艦になるが……。
あきづきの対空ミサイル、ESSMの能力を持ってしても限界がある。
「20機のうち5機編隊が接近!!この目標、大和を狙うと思われます」
―戦艦大和CIC―
「敵機ミサイル発射!!数10!!」
緊急出航のため、大和はESSMをあまり搭載していない。
"ESSM攻撃始め"
"用意……撃て!!"
"……バーズアウェイ(飛翔中)"
"インターセプトまで10秒!"
"……命中!!マークインターセプト!!"
「よっしゃッ!!」
若い隊員を中心に歓びを爆発させる。
だが……。
"こちらあきづき!!敵機ミサイル発射!!残りの、敵編隊15機のミサイル、全て本艦に向かって来ます!!"