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4話

 色々な手続きを終えた後、アステリアとキアランと共に外に出ると、キアランにこれからの事を聞かれた。

 私はこれからどうしようかと考えながら、奴隷商会で買った2人の奴隷を交互に見る。

 どちらも私よりよっぽど良い格好をしているし、顔もいいから周りからチラチラとチラ見されている。しかし、そんな視線など全く気にしている様子もない。

 2人は周りの視線など気にせずに私だけを見ていたが、周りから注目されるのに慣れていない私は場所を移動するを提案した。

 ゆっくりこの2人と話す場所として選んだ所───それは。



 ホテル、である。



 最初に話し掛けてきたキアランに、金額は気にしないから、この近くで防音や安全面がしっかりしていて、尚且つ食事が美味しいホテルは無いかと聞けば、直ぐにその場所へ案内してくれた。

 外観はホテルと言うより城と言ったほうが良いんじゃないかと言うくらい立派なホテルに案内され、そのホテルに入った私達はその中で1番高いスウィートルームを借りた。

 そこは私が住んでいたオンボロアパートがすっぽりと入ってしまえるのではないかと言えるくらい広くて、白を基調とした部屋であった。

 見渡す限りクリスタルシャンデリアが天井から下がっているし、キングサイズ以上の大きなベッドの上から垂れ下がる透けるレースカーテンが乙女心を擽る。

 ヨーロピアンラグジュアリーといった感じで、貧乏人であった私がキョロキョロと辺りを見回しながら室内に入ると、アステリアが私の手を引いて椅子に座らせてくれて、その後ろではキアランがドアを閉めて鍵を掛けていた。

 鍵を掛け終えて此方に近付いて来たキアランを確認したアステリアは、私の目の前で跪いた。

 そして、それに続くようにして、アステリアの横に並んだキアランも跪く。

「ご主人様、何かお望みは御座いませんでしょうか」

 頭を下げる2人の旋毛を見下ろしながら、私はどうしたものかと思い悩む。



 私は異世界人で、こちらでの常識や生き方など何も知らない人間なのだ───と、本当の事を言ってもいいものかと。



 うーんと悩んでいると、またしても腕輪が光っているではないか。

 今度は何だと腕輪を触ってみれば、画面の中の『アイテム』と言う文字が点滅していた。

 点滅している文字を触れば、画面全面に全てのアイテムがダーッと出て来て、その中の1つ───『隷命の絆』と言う物が点滅していた。そのアイテムの横には、そのアイテムについての説明が書かれていた。

 それには、『隷命の絆』は買った奴隷が主人を裏切らないようにするための物であると書いている。

 そして、主人の危機の際には普段以上の力を発揮出来るようにもなる、ともあった。

 私はまだこの奴隷達の事を100%信頼する事が出来無いので、これから彼らと共に過ごし、本当の意味で彼らを信頼する事が出来るようになれば、そのアイテムを外せばいいと思うことにして、私はソレを使う事にした。

 画面の『隷命の絆』と書かれた所を押して使う個数を打ち込めば、一段と光り輝いた腕輪からルビーの様な色の石が付いたピアス───『隷命の絆』がポンッと言う音と共に出現する。

 それを手に持ち、未だに頭を下げて跪く2人に頭を上げるように声を掛ける。

「2人に、これを付けて欲しいの」

「これは……」

「『隷命の絆』ですね」

 私が顔を上げた2人の掌にピアスを乗せると、それを見た彼らは一瞬目を見開いて驚いた様な表情をした。

 どうやら、2人共このアイテムがどういったものか知っているらしい。

 ドキドキしながら2人を見ていると、お互いの顔を見合っていたアステリアとキアランは、躊躇いもなくそれを各々の耳に取り付ける。

 すると、一瞬石が光ったかと思えば、元々アステリアとキアランに施されていた“隷呪の輪”が消え去り、新たに2人の首に刺青の様な黒色の紋様がグルリと───まるで首輪の様に浮かび上がった。

「ご主人様、これでよろしいでしょうか?」

「あ……うん、ありがとう」

 キアランが新しく浮かび上がった、私だけが使える“隷呪の輪”を指でなぞりながら確認するのを見ていた私は、ドキドキしながら2人に声を掛ける。



「あのね、ちょっと2人に見てもらいたい物があるの」



 彼らの耳で揺れる石と、首の“隷呪の輪”を見ながら、私はこの世界に来てからある意味お世話になりっぱなしの腕輪を腕から外し、彼らに手渡した。

「……これは」

「うっわ!? これって超レアアイテム、『アーネスヴァイ』が作った作品の1つ───無限にアイテムを入れる事が出来ると言われてる物じゃ」

「確かにこの形……意匠は『アーネスヴァイ』の物と同じだが……。ご主人様」

「な、何?」

 アステリアの真剣な表情に固まりながら返事をすると、私の顔を見たアステリアはハッとした表情をして、苦笑しながら手の中にある腕輪を持ち上げた。

「その……この腕輪に収納されている物を見せて頂いても?」

「あぁ、うん。いいけど?」

 私が自分の意思で見せようと思えば、浮かび上がる画面が彼らにも見えるように出来ると腕輪の画面にあったので、2人に中の物を見せれば───固まった。



「………………」

「………………」



 なんと言いますか。

 初めはこんなに沢山アイテムがあるんですね、みたいな感じで見ていた2人は、中に入っているものを読み進めていく内にだんだん表情が引き攣ってきて、次第に石の様に固まりだし、そして最後には無言になりながら画面の中を食い入る様に見詰めていた。

 えー、そんなに凄いアイテムとか入ってるの? と気安く声を掛けられない雰囲気が彼らから出ていて、私は大人しく椅子に座って待っていることしか出来なかった。

 彼らが画面の中を確認し終わるのを待っている間、私は何もすることが無いのでボーっと部屋の中を眺めていたのだが、「ご主人様」と硬い声質で私を呼ぶキアランに焦って視線を戻せれば、まずは丁寧な仕草で腕輪を私の腕に嵌め直される。

 そして、この腕輪の中を絶対に自分達以外の者に見せてはなりません、と真剣な表情で言われた。

「キアラン? アステリア? あの……」

 急にどうしたのかと声を掛ければ、キアランは小さな子供に言い聞かせるように口を開いた。

「いいですか、ご主人様。この中には───」



“この世に存在する全ての物”が入っています。



「全て?」

「はい」

 この世にある全ての物───といわれても、いまいちピンとこない。

 いや、確かに画面の中でMAX状態って書いてあったのは見てるけれども、実感としては『ふ~ん。でも、勿体無いし何が何だか分からないから、あんまり使わないかも』ってな感じであった。

 貧乏性とも言える。

 そんな私の表情を見て、2人は口を開く。

「そこら辺に売っている粗悪品の物から、一生見ることも出来ないようなアイテムやら武器やらが───それこそ、大きな国1つを一瞬にして滅ぼしてしまうような物などがこの中に溢れるほど入っているんです」

「しかも、普通であれば中に入っている物を取り出すのは、腕輪を所有している者でなくても取り出す事は出来ます。ですが、この腕輪には鍵か何かが掛かっているらしく、ご主人様本人が取り出そうとしなければ、中の物をその腕輪から出すことが出来ないような仕組みになっています」

「富や地位、自分の力を追い求める人間や獣人……この世に存在する全ての者に、貴女の腕輪の存在を知ればどうなるか分かりますか?」

 ゆっくりと話すアステリアの言葉に、私の喉がゴクリと音を立てる。

「しかも、その中の物はご主人様しか取り出せない」

「………………」



 だんだん2人が何を言いたのか分かってきた。



 私は腕輪が嵌った腕を自分の胸元に持ってくると、もう片方の手でそれを抱き締めるようにしながら、私を見詰める2人を見下ろした。

「お金の支払くらいは大丈夫です。ですが……絶対に腕輪の中の情報を見せてはなりません」

「そうしなければ、ご主人様の御身が危険に晒される事になるでしょう」

「わ、分かった。これは絶対に他の人に見せないようにするっ」

 アステリアとキアランの言葉に、私は真剣に頷く。

 


 


 それから少しして、腕輪の画面に『これより後、画面でのサポートを終了致します』といった言葉が出て来た。

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