作戦を練ろう
前回から間が空きました。
すいませんでした。
何やってたのかといいますと、何もやってませんでした。
すいませんでした。
ゆきも魔球が投げられるようになったし、改めて作戦を考えよう。
まぁ、そういうわけだから。
「んじゃ今日は終わりでいっか。解散!」
現在3時。
ちょっと早い気もするけどもう解散でいいだろう。
暑いし。
そもそもこんな中外で遊ぼうとする方が無理がある。
川でも行って泳ごうにも、この時間だと気が乗らない。
明日は集まらなくてもいいか。
作戦は明日考えて…。
アニメでも見ながら。
だいたいマジになってやる必要も無いだろうし。
所詮は小学生のレク感覚。
のんびりやろう。
そう決めて、切り上げるのが速いと文句をいう小学生どもを押し切り家に帰った。
「あー、涼しい!やっぱ夏はエアコンだよね!」
エアコンをつけてソファーへ寝転がる。
「アイスあったよな」
ふと思い出し、冷凍庫からスイカの形をしたアイスを取り出した。
録画したアニメを見ながらゴロゴロ。
これが正しい夏休みの過ごし方であって、あんな外で過激なドッジボールやるのは間違っている。
俺はあくまで正しいことをしているに過ぎないのだ…。
そう思っていたらチャイムが鳴った。
「はーい」
返事をして玄関の扉に手を掛けた。
が、嫌な予感がして、のぞき穴から覗いてみた。
…磨里亜だった。
扉、開けないでおこう。
「ちょっとおにーちゃん!?いるんでしょ!?返事した上に人影まで見えてるよ!開けてよ!」
玄関を叩いているようで、ドンドン音がする。
「…何しに来た?」
扉越しに聞いてみた。
「宿題教えてほしいの!開けてよ!お外暑いよぉ!」
「小学校の宿題なんて教えるまでもなく解けるだろ」
「一か所だけ分かんないの!」
「一か所か…」
そんくらいだったらいいか。
そう思って扉を開けたのが運のつきだったようで…。
「お邪魔しまーす」
「あー涼しい!」
おいマテ…。
なんでみんないるんだよ…。
ぞろぞろ入ってくんなよ…。
「磨里亜だと開けてくれるんだよねおにーちゃん」
ゆきの作戦だったみたい。
決して磨里亜だから開けたわけじゃないけど、もはや反論する気すらない。
「…で、宿題やったらさっさと帰れよ。教えてやっから」
「今日はみんなで磨里亜の家にお泊りだから、にーちゃんもどう?」
小春に言われた。
また唐突な…。
「行かねー」
「なんでよ!」
「一人で作戦考えるの」
「え~…。協力してあげるから!来て!」
そう言って腕を掴んできた。
「あー離せ離せ。今日は行かない。パーフェクトな作戦を考えるんだよ!」
「そんなー!」
彩萌が叫んだ。
「わざわざマジック持ってきたのにー」
ああ、こいつ。
俺のデコにスタイリッシュな文字書く気だ…。
絶対いかねー。
「顔中に四文字熟語書いてやろうと思ったのにー」
…断固行かない。
「じゃあ、あとちょっとだけ練習に付き合ってよ」
「あ?まぁ、それならいいけど」
ホントは気が乗らないけど、それで行かなくていいなら…。
こむぎの提案に乗ってやった。
練習場所は庭。
大通りに面していないし、無駄に広いのでちょっとしたキャッチボールくらいならできる。
「変なとこ飛ばすなよ。絶対に」
「はーい」
さて、練習開始。
「んじゃ、ちょっと鳴海投げてくれ」
「はいよ!」
パスを受けてから素早く球を投げる練習。
それの手本を示してやろうと鳴海に球を渡した。
「いーい?」
「いいよ!全力でな!」
「おっしゃ!」
すると、物凄い速度で全力で投げてきた。
…人選を間違えた。
しかしここでミスるわけにはいかない。
さっと取って、相手に見立てた磨里亜に当ててやる!
「よっと!殺人ドール!」
やたら回転のかかっていたパス球(マジ投げの魔球)を、威力を殺さないように受け流しながら魔球を投げた。
すると…。
「え!?」
磨里亜が声をあげた。
俺が魔球を投げたから…ではない。
今まで見たことのない球を投げたからである。
俺はいつものように投げたのだが、宙に散ったボールが殺到するときの軌道が違った。
風呂の栓を抜いた時の渦巻きのように、円を描くような螺旋の軌道を取ったのだ。
俺自身初めて投げた。
そして…。
「きゃっ!」
アウトにした。
「なんだ…今の…?」
投げた時の違和感は無かった。
「すげー!今の何?」
小春の質問にも答えられない。
意図して投げた物ではないから。
「わからん。鳴海、もっかいさっきの投げてみてくれ」
「オッケー!」
やはり全力で投げてくる鳴海。
ボールの威力を殺さないように魔球を投げたところ…。
「やっぱり…」
さっきのような軌道を描いた。
「これ…いわゆるコンビネーション技みたいなもんかな。パスから出す魔球はすごいの投げれるかも。でもこれは…」
「どうしたの?」
磨里亜が顔を覗き込んできた。
「いや、やってみるか。磨里亜、痛くしないからもっかい球受けてくれない?」
「え~…」
「で、今度は直前にジャンプしてみて」
「え?」
「ちょっとね」
そんなわけで、鳴海からパスを貰ってもう一度殺人ドールを投げた。
「ジャンプ!」
「うん!」
今度は磨里亜がジャンプした。
すると…。
「あれ?避けれた?」
「やっぱりねぇ」
これが弱点になりそう。
まだまだ開発しなければならない技である。
そもそも鳴海とチーム組むことなんてあるか知らんけど。
「よく見ればどんな球だって避けれるよ。この技だって実は簡単に避けれたでしょ?」
「確かに…」
彩萌が頷いた。
「これが作戦かな。相手をよく見ろ。あと、一番楽に避けれる方法を考えろ。あとは、仲間を信じろ」
明日は集まらないで自主練習ということを告げて解散した。
解散と言っても、うちから追い出しただけだけど。
やつら磨里亜の家らしいし。
夕飯を食べ、風呂に入って部屋にこもる。
「ん~…やっぱりここは磨里亜の催眠魔球を使って押すか、それとも鳴海の速攻魔球か…」
テスト前くらいしか使わない勉強机に座り、紙と鉛筆を持つ。
「あえて主力を決めない方が強いのか?もし真っ先に主力がやられたらそのあと士気がだだ下がりだ」
考える。
「最初の外野は誰にしよう」
…考える。
「いや、相手は小6の女子だ。作戦次第でいける。やっぱり一人狙いで隙を作るか…」
「私が外野行こうか?」
「いや、磨里亜は最初から相手のペースを乱して欲し…い…」
普通に話していたが、よく考えればおかしい。
「…なぜここにいる?」
「おばさんに言ったら通してくれた」
「…はぁ。で、何しに来た?」
答えなんか分かってる。
…絶対呼びに来たんだよな。
「やっぱりおにーちゃんにも来て欲しいなって」
ほらね。
当たった。
「なぜそうまでして俺を呼びたがる?」
「それは…一緒にいると楽しいからさ」
「はぁ~…」
そんなこと初めて言われたよ。
不思議と悪い気はしないな。
「みんなで考えた方がいいのできるかもな、作戦」
「え?」
「仕方ない、行くかー」
「うん!みんな待ってるよ!」
結局行くことになった。
「連れてきたよー」
磨里亜がそう言いながら玄関を開き、俺を招き入れた。
二階の磨里亜の部屋に入ると、そこにはやつらが集結していた。
「お!来たんだ!」
こみぎが俺を見るなり叫んだ。
「あー来たよ。無理やり来させられた」
「はい、じゃあこれ教えて」
「は?」
目の前に差し出されたのは「あさがお観察日記」と書かれた一冊のノート。
自由研究だろうか。
「俺んときこんなの無かったぞ?」
「えー!いいなー!あたし適当に種蒔いたらアメリカセンダングサとヘチマが生えてきてさー」
「種の形が似ても似つかないだろ!しかも外来種!」
「だってさー、服にくっついてきたんだもん。運命を感じるじゃん?」
「それはクッツキ虫だから!別に運命とか感じないよ!」
「あはは!信也面白ーい!」
「俺は突っ込んでるだけ!ってか名前で呼んだの初めてだろ!」
こむぎに突っ込んでいた俺は、そのまま笑っている鳴海に突っ込んだ。
さて、観察日記というものは厄介である。
最初はいいものの、花が咲いてからはほぼ変化がない。
それに、俺は朝顔の成長過程は知らない。
「ってか、誰かやってないの?観察日記」
で、全員の顔を見渡す。
笑ってやがる…。
こりゃ全員やってねーな…。
小春は…。
「鳥に食べられた!」
ゆきは…。
「旅行行ってたら枯れちゃった」
彩萌は…。
「最初から見せてもらえばいいかなって」
磨里亜は…。
「種植え忘れちゃった」
はぁ…。
ダメだこいつら…。
「ネットで調べれば?」
「パソコン今お父さんが使ってるよ」
「じゃあスマホで」
「アクセス制限が…」
…はぁ。
じゃあ…。
「俺の携帯使えよ」
そうしてれば大人しくなるだろ。
携帯でアサガオを検索して机の上に置いた。
「わぁー!ガラケーだ!」
「いいだろー別に」
小春に言い返して、俺は磨里亜のベッドに勝手に寝ころんだ。
部屋の中心に置いてある机にみんな集まってるので俺がいるスペースがない。
「ってか、お前らどこで寝るの?ここそんなスペース無いだろ?」
「和室開けてあるよ。おにーちゃんの分も」
「ああ。俺は帰るからいいよ」
「ええ!?」
なんかみんなから驚かれた。
人の家に泊まるの好きじゃないんだよね。
アサガオ終わったら帰る気満々ですし。
「泊まってってよ!じゃないとゆきが泣くよ!?」
「ちょっ!?」
彩萌の言葉にゆきが驚く。
というか動揺している。
「あ、おにーちゃんお風呂入った?」
「あ、そういやまだ」
「じゃあ入ってきなよ」
「いいの?」
「うん。もうみんな入ったけど」
「そうか。じゃあ入ってくる」
「場所分かる?」
「おう」
昔来たことある関係で場所はわかる。
風呂から出たころには書き終わってるだろう。
観察日記。
俺の時は一番めんどくさいのは計算ドリルだったな。
そんなことを思いながら風呂に入った。
一方磨里亜の部屋。
「そういや、信也ってどんな人が好きなのかなぁ?ねぇゆき?」
鳴海が唐突に言った。
「え?え?」
キョロキョロするゆき。
「ゆき、にーちゃん好きなんでしょ?」
「えー!?」
小春の質問に声をあげた。
「じゃあ嫌いなの?」
「…好きです」
「キャー!」
「ひ、秘密にしてね」
「どうしようかなー?」
こむぎが笑う。
「言っちゃえ!言っちゃえ!」
「彩萌ぇ~…」
ガールズトークで盛り上がっていた。
風呂から出ると、部屋に入っただけなのにキャーキャー言われた。
…なんもしてねーだろおい。
「もう10時だぞ。ガキは寝ろー」
「えー。おにーちゃんだっていつも2時くらいまで起きてるくせに…」
磨里亜が言う。
「なぜ知っている?」
「夜中までおにーちゃんの部屋電気ついてる」
なぜ起きているんだという疑問はしちゃダメなのでしょうか。
「子供は寝る時間だ。寝ろ寝ろ!」
「にーちゃん帰るじゃん」
「そりゃあね」
「帰らないなら寝る」
「なっ…」
なんだこの交換条件…。
ちっ…意地でも帰らせないつもりか。
はぁ…仕方ない。
「わかったよ。今日だけだからな」
「やったー!ね、ゆき」
「う、うん」
なんだか顔の赤いゆきだった。
10時半。
布団の中。
一番扉側の端っこを取った。
なんで布団7枚も敷けるほど広いんだこの和室…。
うちは三枚でもキッツイというのに…。
布団に入って暫く、さっきまでうるさかった6人が静かになった。
寝たのか…そう思ったとき。
「みんな寝た?」
彩萌が小さく聞いた。
寝れねーよ…。
返事するのもおっくうなので、しばらく黙ってた。
「わたしは起きてるよー」
ゆきが軽い返事をした。
「みんなは?寝た?」
返事がない。
代わりに寝息が聞こえた。
「ねぇ、ゆき。なんで信也にぃのこと好きなの?」
はぁ?
余りに突拍子の無い発言に固まってしまう。
「だって…優しいじゃん」
「そうか?」
俺だって優しくしたつもりは無い。
でもさ、他人に「そうか?」とか言われるとなぜか腹立つよね。
「わたしを助けてくれた」
「ああ、そうか」
まぁ、いじめは解決してやったけど。
偶然友達の弟だったわけで。
「試合が終わったら告白する」
!!????
どうすりゃいいんだ俺は?
俺は年上が好みなんだぞ?
3歳くらい上のお姉さん的な人が!
「頑張ってね!おやすみー」
「おやすみー」
眠れない夜が続くのであった。
これだから帰りたかったんだよ…。
面倒なことになった。
次回を最終回にしようかと思ってたら終わりそうもないっすね。
いや、終わりにできるか…。
微妙っすね。
さて、美術2の晒しのお時間です。
ちゃんとしたイラストはげどーさんが描いてくれてますが、その前に意味もなく描いてみました。
毎度のことながら大参事です。
どなたか書き直していただいたら嬉しいです。
ホントにそのくらいです。
ではで、せっかく書いたので。
信也です。
左手がおかしくないですか?
左手が右手じゃないですか?
バランスがおかしくないですか?
という質問には一切お答えできません。
下書き段階で気付いてたのですが直すのが面倒だなと…。
さらに言うと、下書き時点では肘から先が二倍の長さありました。
キャラデザは私がしました。
磨里亜です。
水性ペンが使い辛いっす…。塗るのに向いてないんじゃない?(おめーの画力の問題だよ)
同じ構図で描いてみました。
パソコンだと楽なのですが、アナログだとキッツイです。
なぜ水着かは聞いちゃダメです。
水着に合わせて背景も海に。
思いつきで描いた背景です。
無理でした。
描いたところから反省します。