8.娘
「ん、ここは・・?」
ゆっくりと目をあけて真っ先に目に入ってきたものは天蓋だった。
体中が重く、鈍く痛む体をゆっくりと起き上がらせて見ると人が4人は寝れるんではないかと思うような天蓋つきベッドに寝かされていたことがわかった。
「ここはどこ?私なんでこんなとこにいるの?」
自分がなぜこんな立派なベッドに寝ているかもわからず混乱していると扉が音をたて開いた。
現れたのはとても顔立ちの整った男性だった。
「・・起きたのか」
そう言葉を発するとゆっくりとベッドの方へと近づいてきた。
「気分は?」
「えっ?」
近づいてきた男の顔に見とれてたところに話かけられ、何を聞かれたのかまったくわからなかったのだ。
「体はもう平気なのか?」
「あっ、はい。大丈夫です」
「そうか」
お互い相手の様子を窺うかのように、じーっと見つめ合う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙に耐えかねたのか、先に口を開いたのはシェイナの方だった。
「あ、あのぅ・・」
「なんだ?」
「え、えっと、そのぅ・・・」
「ここはどこ「ティアス!ここにいたのか」
バタンという音と共に顔を現したのはこれまた端整な顔の男。
「ヒューズ。お前は静かに入ってこれないのか」
荒々しい様子に眉をひそめる。
「わりぃわりぃ。
あれ?彼女起きたんだ」
「ああ。さっきな」
「へぇ。よかったよかった」
ティアスとの話を終えるとくるっと体の向きをかえ陽気な声で話しかけてきた。
「俺はヒューズ=ミレン。第2護衛団団長でティアスの幼馴染。よろしくなっ」
人懐っこい笑顔をみせ挨拶をすました。
「よ、よろしくお願いします。
あの、ティアスって誰ですか?」
少し戸惑いの笑みを浮かべながら、疑問を口に出す。
「へ?お、おい、お前自己紹介もしてないのかよ」
なにをやっているんだか。という眼をティアスに向ける。
「しようとしたところに入ってきたのはお前だろ」
「あぁ、そっか。わりぃ」
まったく悪いと思っていない声色に、ティアスも呆れてしまう。
「はぁ。ったく。俺がティアスだ。ティアス=ド=ジアグエルド=セルティア。で、お前は?」
名を促すように視線をむける。
「私は・・・シェイナです。シェイナ=エイリング」
「へぇ。シェイナっていうんだ。顔に合っている可愛い名前だな」
ヒューズの軽口を盛大に無視し、抑揚にない声で端的に一番聞きたかったことをティアスは口にした。
「で、シェイナ。お前はどうやってここにきたんだ?」