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クズで無能な勇者が有能な仲間たちをパーティ追放しまくるお話  作者: 耳垢の一
帝国勇者クラムと対決!
71/120

絶対に俺が勝つ

帝国領で新たに発見されたSランクダンジョン。

俺たち勇者パーティはその入り口でクラムのパーティを待っていた。


「クラムのやつ遅いっスね」


「大丈夫かな。決闘は遅れてくる方が勝つのがセオリーって聞くし」


「ないだろそんなの」


俺たちはこの日までさまざまな特訓を重ねてきた。

レベル上げ、筋トレ、徹底した食事管理、最高級装備の入手、ダンジョン探索の基礎から学ばされた。

まあそんな特訓なんかしなくても俺なら勝ってみせるけどな。騎士団長が心配性だから仕方がない。



「シッ……。クラムたちが来た!」


はあ?どこにもいないが。

と言おうと思ったらいきなり俺たちの前にクラムともう一人、軍服を着たおっさんが出現した。


「おやおや、騎士団長様はお気づきでしたか。気配を消してるのに気づくとはさすがで……」


「敵を探る方法は気配だけじゃない。王国騎士として当たり前のことだ」


「おい待てクラム。お前まさか俺たち4人に対してたった2人だけで張り合おうってのか?」


「挑むのは2人じゃない。クラム1人だ。儂は帝国軍を代表し貴様らの勝負を見届けにきたに過ぎない。不正があっては困るのでな」


軍服のおっさんが答えた。

騎士団長は慌てたようにお辞儀をした。


「こ、これはガールズトーク大佐……!貴方がこの勝負を見届けられるとは……」


「ガールズトーク大佐って『帝国の鬼軍曹』の異名を持つあの……!?あわわわわ」


大佐の異名が軍曹なの?

格が下がってるけど本人的には大丈夫なのか?

いや、んなことどうでもいいわ。


「おかしくねえか?見届けるのが帝国側の人間なら俺たちに不利だろ」


「そうっスよ!ズルいっスよ!」


「口を慎め若造共。儂が持ってきたのはこの誓約書だ」


大佐は真っ黒な紙切れを見せた。

墨汁にひたしておいた紙か?


「あ、あれは『刻命の誓約書』……!」


な、なにっ!あの『刻命の誓約書』だと……!?

ってなんだそれ。


「左様。この誓約書に血の判を押した時点で、ここに書かれた文言には必ず従わねばならない。古の魔族の遺物である」


ほーん。

ようはこの勝負のイカサマ防止措置か。

クラムは約束を破る気はねえってことか。


「レフ。帝国はその長きに渡る歴史の要所要所で『刻命の誓約書』を使って厳正に物事を進めてきた。あれは帝国博物館で保管されていた最後の一枚だ。それをここで使うとは、帝国は本気だ」


騎士団長、この期に及んでうんちくを披露。

お前が真のうんち使いだよ。



「ではさっそく、ルール確認をしておこう……。後でレフにゴネられてはたまらないからなあ」


こっちのセリフだっての。


「じゃあ大佐。ルール説明よろしく」


「……先日通達したように、この勝負は秘密裏に行われる。ここにある前人未踏のSランクダンジョンに、帝国が誇る勇者クラムと、貴様ら王国勇者のパーティが同時に探索を始め、先に最奥部のダンジョンボスを倒した陣営の勝利。敗北者は勇者を金輪際名乗れない。よいな」


「俺は構わないが、クラム。お前は1人で俺たち4人と張り合う気か?悪いが容赦はしないぜ」


「君たち相手なら1人で十分。これはちょっとしたハンデだ。享受しておくといい……。そっちのパーティはずいぶん残念なメンツじゃあないか。うん?」


何が残念だ。

俺たち勇者パーティは無敵だぞ。

うんち使いと無職と……あれ?まあいい。

大方、クラムは人望がなくて碌な仲間が集まらなかったのをごまかして負け惜しみを言っているのだろう。



「ちょっと待って。ミハイレスクさんって厳密には勇者パーティじゃないんじゃないっけ?勇者パーティに付き添って共闘するだけって感じの立ち位置で」


ヴェン!うんち使いのくせにそんなことに気づくな!


「そうだった……!どうしたものか」


「マジっスか!じゃあ俺たち3人でダンジョンに潜るってことっスか?負け確じゃないっスか!」


「ふん。俺はミハイレスク抜きでも問題ないぜ」


「レフさん、絶対無理ですそれ」



「ほうほう、それはそれは複雑な状況だったのだな。王国側の迷走が窺える……。いやいや、俺は懐が広いのさ。特別にレフのパーティに騎士団長の同行を認めてやるよ。そっちの方が面白い」


そう言われると情けをかけられてるみたいで腹立つな。まあ連れてけるなら連れてくけどな。


「いいのか?敵に塩を送るような真似をして」


「送った塩は傷口に塗り込んでやるのが俺の流儀さ……。俺の能力は強すぎるんでね。ハンデがあった方が面白い」


何言ってんだか。



「では今の通りに誓約書に文言を書いた。各自確認次第、血の判を押せ」


「書類の確認とか面倒くせえな。ミハイレスクお前が読め」


俺は誓約書を騎士団長に押しつけた。


「はいはい……。特に罠は見当たらない。この内容なら判を押してもいいだろう」


「待て、血の判って俺の血でやるのか?痛いのか?」


「もちろん」


うっわ、やだな。

まあ仕方ねえか。


俺は右手の人差し指の腹に剣先で傷をつけ、誓約書に血の判を押した。

その後クラムが血の判を押すのを皆で見届けた。



「よし、双方とも押印したな。ではこれより真の勇者決定戦を始める。用意はよいな?」


「真の勇者であるこのレフに不足はない。そうだろ?」

「不安っスけど、頑張るっス!」

「トイレなら大丈夫!」

「僕も今はレフを信じる」


「俺はいつでも構わない……」



「よし、それでは勝負、始めえ!!!」


大佐の掛け声と同時に、

俺たちは目の前のSランクダンジョンに入った。

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