先代勇者を追放した俺たちの末路
俺は勇者レフ。
勇者だ。
この前俺たち勇者パーティは、
ローガンを自爆させるという俺の見事な采配で
無事にAランクダンジョンを踏破。
多くのダンジョン踏破報酬を受け取った。
ローガンはそれなりに使えるやつだったが、
もちろん勇者である俺には遠く及ばないし、
ステータスはマナトの方が上だし、
モンスターの妨害はレイの方ができるし、
まああの状況では犠牲になるのは妥当だろう。
ローガンがいなくなった分は、
新たな仲間として盗賊のシフティを加入した。
なに?すぐ死にそうな名前だって?
なんのことかわかんねえな。
逆再生すると下ネタを言う某キャラとは無関係です。
なんで盗賊を雇ったかっていうと、
前回ダンジョンの罠にかかりまくっていろいろと悲惨だったから、罠の回避や解除ができるメンバーが必要だと思ってな。
『盗賊』は罠の察知やら解除やらができる職業のことだ。
そのへんの解説はまあいらねえだろ。
中世ヨーロッパでは盗賊は犯罪者じゃなくて職業の一種とされているからな。
ここ、世界史Bの定期考査に出るから学生諸君は覚えておくように。
冗談言ってる場合じゃねえわ。
実は今俺たちはパーティ壊滅の危機に瀕していた。
「レフ!あたしの魅了技が効かない!」
「俺の魔力も尽きちゃいました!」
「どうなってるんだ!勇者パーティはこんなに弱かったのか!?」
おかしい。
いったい何が起こっているんだ。
ローガンはたしかにまあまあ使えるやつだったが
それが抜けただけでこんなになるなんてありえねえ。
「なんで俺たちはBランクのモンスターごときに苦戦してるんだよーーーー!!!!!」
ノルマなので叫んでおいた。
俺たちは今、罠の多さと厄介さで有名なBランクダンジョン『罠の巣窟』にいる。
せっかく一流の盗賊であるシフティが加入したので、その腕を試すためである。
さすが、シフティは全ての罠を回避し、あっさりと最奥部の宝箱までたどり着いた
そこにいたのは宝の門番のBランクモンスター
『巨石宝玉体』。
それ自身が巨大な宝石でできているモンスターで、倒せれば死体は高値で売れるという。
前回Aランクモンスター相手に負けそうにはなったが、相変わらずBランクモンスターなら簡単に倒せるはず。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
まあ実際にはご覧の有り様。
毎週恒例の苦戦だ。
「レフさんヤバいです!逃げたほうがいいです!」
「しかたねえな、マナト。逃げる技を使え!」
「いえ、俺は今はちょっと魔力が尽きてて無理なんですよ」
お前それこの前もそうだったじゃねえか。
まったく使えねえゴミ野郎め。
「だったらシフティ!お前は逃げる技を持ってるはずだ!使え!」
「なんだと!逃げる技ならあるが、俺は盗賊だ!宝を前にしてみすみす逃げられるかよ!」
「なにそのこだわり!そういうのいいから使ってよ!」
「シフティさん!早く逃げないと終わりですよ!」
「俺は盗賊だ!宝を前にして逃げるなんて盗賊の流儀に反する!」
なんだこいつめんどくせえな。
「なんなんですかそれ!」
「ちょっともう、こうなったらあたしだけでも逃げるから!」
こいつ雇ったの失敗じゃねえか?
総スカンじゃん。
「勇者命令だ!シフティ!逃げる技を使え!モンスターに殺されるか!俺に殺されるか選べ!」
俺は愛用の剣をシフティに向けた。
「ちくしょう……宝を前に!わかった、わかったよ、使うよ」
ようやく使う気になったか。
こっちは一刻も早くお前を解雇したいよ。
「盗賊奥義『脱退獄中』‼︎」
シフティが技を使ったと同時に
一瞬視界が真っ白になったかと思うと
俺たちは気づいたらダンジョンの外にいた。
「どうだ、これが盗賊の技だ」
「助かったあ……」
「疲れましたね」
「いや、ちょっとまて。俺たちが泊まってる宿屋の部屋に直接着くわけではないのか?」
「ああ。ここからは王都まで歩きだ」
ええ……。今までは宿屋に直接着いたのに。
つかえねー。
〜宿屋〜
宿屋についた俺は会議の準備にとりかかった。
「会議って、何するんだ?」
「レフがフリップで遊ぶ時間よ」
「へえ、そんなのがあるんですか」
俺を子どもみたいに言うのはやめろや。
「フリップはもうやめた。手間だしつまんねえから」
「あら残念」
「楽しみだったのに」
こいつら俺を深いところで舐めてねえか?
「さて、問題はなぜ俺たちがBランクモンスターに苦戦したのかだ」
「お前らが弱いからじゃねえかな」
「いや、それはないですよ。俺もレフさんも強いです」
「そうは見えねえが……」
「答えはこうだ。ローガンが死の間際に俺たちを弱体化させたんだ」
「マジで?」
「ローガンって言うと俺が来る前にパーティにいた老人って話だな。そいつが原因か?」
「ああ、ローガンが抜けてから脱力感を感じたことはないか?」
「たしかにいつもより肩が凝る気がするわね」
「そういえば俺も昨日寝冷えをしました」
「無理な豊胸と寝相の問題じゃねえの?」
「そう、俺たちはローガンが抜けてから弱体化している。だったら答えは一つ。ローガンは死の間際に俺たちに弱体化魔術をかけたんだ」
「そんな魔術ありましたっけ」
「あいつはアドリブで魔術を作成できる。死の間際に嫌がらせくらいしてもおかしくない」
「たしかに!全部ローガンのせいだったんだ!」
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レフ、当たらずしも遠からず。
何話か前に話していたように、俺たちはローガンの魔術『潜在能力解放』によって能力を大幅に強化していた。
それがローガンの死で解除されたために、俺たちは弱体化してしまったのである。
それだけでなく、ローガンのその場その場に応じた魔術開発と、それを駆使した臨機応変な戦い方によって、俺たちは大幅に楽にモンスターと戦えていた。
それがなくなったことで俺たちは予想以上に苦戦を強いられてしまったのである。
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「なるほど、ローガンってのは悪いやつだな。だがその弱体化の魔術とやらは解けねえのか?」
「いい質問だシフティ。実を言うと以前から追放者に呪いをかけられる事例が頻発していてな。そこで永続補助魔系式の解除方法について調べてたんだ」
俺は王宮の大書庫からくすねた魔具辞典を取り出して言った。
「このページを見てくれ」
「エッチになる薬。わあ♡」
「おっと、ちょっと間違えた。今のは忘れてくれ」
やっちまった。
「ええっと、これだな、このページだ」
「なになに?『魔効果解除石』?なんですかこれ?」
「この本によれば、『魔効果解除石』という希少な宝石が放つ光を浴びると、どんな強力な魔法もその効力を失う、とある」
つまり『魔効果解除石』で今まで追放者にかけられた補助呪文をすべて解除しようというわけだ。
「なるほど!それがあれば俺の寝冷えも治るわけですね!」
「それは知らん」
「でも希少な宝石だからどこにあるかわからないって書いてるわよ」
「そうだな。問題はそこだな」
「おい、ちょっと待て。『魔術解除石』の場所なら知ってるぞ」
シフティが口を開いた。
さすが一流の盗賊だ。宝のことには詳しいのだろう。
「なに?知っているのかシフティ。どこにあるんだ?」
「さっき諦めたダンジョンの宝箱の中だ」
「「「ズコーーーっ!!」」」
「それを早く言えーっ!」
こうして俺たちは再びさっきのBランクダンジョンに挑み、またボコボコにやられて帰ってくるのであった。




