後日談 バレンタイン
リクエストいただいた2人のバレンタインです。
「円~、ダンナのお迎えだよ~」
「あ、うん、わかった。
じゃーね、また明日~」
ヒロは毎日迎えに来てくれる。腕を組んで歩くのは、とっても幸せ。1月の満月も、2月の満月も、あたしの部屋で尻尾をなでてもらった。すっごく気持ちよかった。
初めてなでてもらった時よりも気持ち良かったんじゃないかな。ちゃんとかぷってできたし、サイコーだった。
来月もまた、なでてもらうんだ♪
うちに帰る途中、ヒロの家に寄る。
ヒロが着替えたら、2人であたしの部屋に行って勉強会してる。2人で一緒の高校に行くんだもんね。
お母さんは、あたし達が帰ってくるとコーヒーをいれてくれる。
一緒に部屋に行って、ヒロがコーヒー飲んでる間にあたしは着替えるの。ほんとはパパッと着替えられるんだけど、ヒロはゆっくり着替えた方が嬉しいって言うから、かなりのんびり着替えてる。
時々、服を並べて「どっち着た方がいい?」なんて聞いてみる。
ヒロは、ちょっと可愛い感じの服が好きみたい。
今度服買うときは、ヒロの好きなの選んでもらおうかな。
勉強はちゃんとしてる。真面目に問題集一緒にやって、わかんないとこ調べたり。その間はおしゃべりは我慢。5時くらいにちょっと休憩。
その時は、ギュッてして、ペロペロする。息抜きもしないとね。
7時くらいまで勉強したら、ヒロが帰る。時々夕飯食べてく時もある。ヒロはあたしの“つがい”だから、もう家族みたいなもんだしね。
泊まってってもいいと思うけど、それは高校合格するまでおあずけだって、お母さんが言ってた。
「円さあ、中野君のこと“ダンナ”でフツーに返事するようになったよね」
「そりゃまあ、そのとおりだし?」
「うわ、ノロケられたよ。
で? どこまでいったの?」
「どこって? 神社くらいしか行ってないけど。
あ、今度、一緒に服見に行こうかなって思ってる」
「天然か! そうじゃなくて、AとかBとか、あるでしょ!」
「A? 英語なら、一緒にやってるよ」
「わざと? ねぇ、わざとなの?
キスしたとか、えっちしたとか、ないの?」
キス? あ、ちゅーか。えっと…あれ? もしかして、ペロペロするのって、ちゅーしてるのと、あんま変わらない?
「ベロからめるのもキス? なら、してる」
「ディープキスしてるんだ。
ねえねえ、キスってどんな感じ?」
「ん~、すっごく幸せな感じ。好き好き~ってなるよ」
「やっぱ気持ちいいの?」
「うん、すっごく。ず~っとしてたい」
「うわぁ、それでそれで? 触ったりとかは?」
「ヒロはねえ、おっぱい触るのが好きみたい。最近大きくなったって喜んでた」
「生で触るの?」
「生? あ、直接ってこと? そりゃそうだよ。服の上から触ってもらってもつまんないもん」
「触ってもらって? やっぱり気持ちいいんだ?」
「すっごい幸せだよ~♪ 頭が真っ白になるの。
ず~っとなでててもらいたいけど、まだお泊まりはダメってお母さんに言われてんだよね」
「お母さん!? ちょっと円、あんた達、そういうことしてんの、親に隠してないの!?」
「そうだよ。なんか変?」
「フツー、親には言わないよね」
「そう? お母さん、ヒロなら安心だって言ってるよ」
「あ、幼なじみか。そうすると、アリなのかな…」
「あたし、すっかり忘れてたけど、小っちゃい頃ヒロと結婚の約束しててさ、お母さん、それを覚えてたから」
「親公認! すごいね、円んちって」
「すごいかな?」
「うわ、わかってないよ。
そうすると、バレンタインなんかどうすんの?」
「どうって?」
「あたしをあげる、とかやんないの?」
もう尻尾預けちゃったしってのは、言っちゃダメなんだよね。
「今更チョコもな~って思うけど、あ、でも、期待してるかな」
「ハートのコンさんとか、買ってみたら?」
「バレンタインって、チョコあげるんじゃないの?」
「まぁ、基本はね。でも、あんたらもう付き合ってるし」
「そっか。うん、何か考える」
「レポートよろ」
そうかあ。
何かあげないとね。満月は、もう終わっちゃったしなあ。
それにしても、ペロペロするのってキスだったんだ。気付かなかったよ。
尻尾の形のチョコとか作ろうかなあ。
ヒロに聞いてみようか。でも、内緒にしてたら驚くかな。
「お母さん、バレンタインってどんなことした?」
考えてもわかんないから、お母さんに聞いてみた。
「バレンタイン? そうね、円にリボンでもかけてみる?」
「リボン? 自分に? プレゼントはあたしなの?」
「いっつも部屋で舐めたり撫でたりしてるんでしょ?
あんた達“番”なんだし、しちゃってもいいわよ。あ、ただ、これは使ってね」
お母さんが渡してきたのは、ピンクでハートの絵のついた小っちゃな包み。薄くて、柔らかい。なにこれ、ギョウ虫検査のシール?
「なに、これ?」
「さすがに赤ちゃんは困るからね~。見たことないだろうけど、避妊具よ」
「あ…ハートのコンさんって、これのこと?」
「友達にでも聞いた?」
「うん。ヒロの赤ちゃん…欲しいかも」
「まだ駄目よ。最低でも高校出て、ちゃんと結婚して、それからよ」
あれ? なんかお腹がむずむずしてきた。
変だなあ。お腹減ってないのに。
お腹に手を当てて首をかしげてたら、お母さんに聞かれた。
「どうかしたの?」
「ん、なんか変なの。むずむずするっていうか…」
「ああ、気にしなくていいわ。
赤ちゃん欲しいって思ったからよ。そのうち収まるから」
「? そうなんだ」
じゃあ、バレンタインは、あたしにリボンかければいいのね。
可愛いリボン、用意しなくちゃ。
いよいよバレンタイン当日。
ちゃんとリボンも準備した。ヒロ、早くおいでよ。
「円、ダンナに何あげるか、決まったの?」
「んふふ、内緒。
あ、ヒロ! 帰るよ~」
「あのね、ヒロ、今日はバレンタインのプレゼントがあるから、1人で着替えてから来てね」
「一緒に行っちゃ駄目なのか?」
「準備があるから、あたし先に帰ってる。のんびり来ていいからね」
ヒロを置いて、ダッシュでうちに帰る。
「お母さん、ただいま! じゃあ、ヒロ来たら、よろしくね!」
バタバタと階段を上がって部屋に飛び込む。
時間との戦いだ。
急いで制服を脱いで、お気に入りのブラウスとスカートに着替えて、アゴから頭のてっぺんにリボンを結ぶ。耳の出る辺りにリボンのわっかがくるように結ぶのがポイント。
最初は、裸の上にリボンを巻こうかと思ったけど、そんな長いリボンはないのと、この季節に裸は寒いから諦めた。
リボンが曲がってないか、鏡で確認。よし、準備OK!
ヒロ、早く来ないかな。
あ、チャイム鳴った。
ヒロが上がってくる。
「まどか、入っていいか?」
「いらっしゃい、入って、ヒロ!」