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Prologue0

 久しぶりに小説書きました。

 お気に召されたのなら幸いです。

むしろ最強は弟子でした!?‐世界最強魔術師の弟子はもっと強いらしいです‐


「――というわけでだ! お前は今日から“中”へ行って勉強してこい」

「はぁぁぁぁあああ?」


 魔導歴965年ソレイド国、北端ハイドラル山にて――


 今まさに、目の前では期待と困惑という表情が部屋の空気を満たしていた。

 第一声を放ったのは驚きの声を上げた少年とは別の美女。

 長い紫の髪を肩の前で二つに結っていて、片目を髪で隠している。そして見事なプロポーション。だがしかし、その年齢は神のみぞ――はたまた本人のみが知るもの。

 そしてその声に反応したのが普段の性格から考えれば考えられないほど素っ頓狂な声を出している少年。

 おおよそ見た目十七、八辺りに見えるのは身長が平均より少し高めであるからだろうか。本当は十五である。まぁ、もう少しで誕生日を迎えるのだが。

 少し肩にかかりそうな髪を雑にそろえたような髪型で、かなりいい体躯をしている。顔は平均的。

 そんな二人が今、人里から遠く離れた山奥で口論というより一方的な交戦劇を繰り広げていた。


「なんでだよ。もう少し力を付けてからじゃないのか? 少なくとも十七になるまでは中に入らないって師匠言ってただろ」

「少し事情が変わってな。国から長期任務を任されたもんだからこの機にお前を送り出してやろうと思ったんだよ、セン」


 驚愕から覚めていたセンという少年は新たに疑問を頭に浮かべる。

 確かにこれまで師匠――レイネは長期任務に就いたことはなく長くても三日ほどで山に戻ってきたのだがここにきて唐突に弟子であるセンを認めたからか久しぶりに長期任務に就くというのだ。


「大丈夫。中に行ってもそうそうお前に勝てる奴はいない。なんたって私の弟子だぞ」

「いや、そういう問題じゃないんだが……」


 センはいろいろレイネから一般常識、もとい勉強を教えてもらい自分が常識から離れていることを知っていた。

 そこで唐突にこんなことを言われたもんだから自分の生活が心配で適わない。


「大丈夫だ。そういう心配ももちろんあるから私が紹介状を書いておいた。昔からの知り合いだし、まず邪険にされることはないだろう。あと地図も用意してるし――」

「……」


 センは容易の周到さに驚いて内心唖然としていた。無論外面には出さない訳なのだが。

 もしかしたら、というかだいぶ前からこれを予定していたのかもしれない。とセンは思った。


「よし、決まったならば即行動に移すぞ!」

「いや、俺何にも言ってないんだけど…」

「……」


 師匠の無言の圧力を受けたらどうしても屈してしまうセンであった。

 なにせ昔からの様々なトラウマが蘇ってくるのだからしょうがないだろう、とセンは心の中で毒づいた。



「……準備はできたな」

「師匠が一方的に用意してたのを持ってきただけだけどな」


 そう、センはほとんど準備などしていない。

 前もってセンを中に行くことを予期して、というか強制的に追い出すことは既に決定していたのだ。


「こうしてお前と離れてしまうと思うとなんだか感慨深いものがあるな」

「そう思ってくれるならもう少し山の中に居させてくれよ」


 実際センは中に行くことについて抵抗があった。

 そもそも中というのは、現在センとレイネがいるこの山以外の世界の事を指す。

 生まれは中であるセンであるが、孤児として捨てられていたのを、拾ってくれたのがレイネなのだ。

 口には出さないがセンは大きな恩義を感じている。


「そういうわけにもいかない。私にも用というものがあるし何よりきっかけは突然だと言うだろう」

「……」

「中に行く前に最後の授業をしてやる」

「……最後?」

「ああ、最後だ。お前は気づいてないだろうが、このまま鍛えれば私を上回る魔術師になる」


 センは驚いたような表情をとったが、内心薄々気づいてはいたのだ。師匠と修行をしていても師匠が弱くなったような錯覚を覚えていた。もっとも、センはレイネが手加減していると思っていたのだが。

 だがそれはあくまで推測であって事実ではない。その程度で師匠を超えたという慢心を持つことが怖かったし、何よりそれは師匠に失礼なことであると思っていたのだ。


「最後までいろいろしつこく言うのは好きじゃないからな。こういう時は拳で語るもんだろう」

「そうか」


 レイネが自前の魔導具を取り出す。

 魔導具と言うのは魔術師の使う武器のようなものだ。それぞれの系統や戦闘スタイルによってそれは大きく変わるのだが、レイネのものは一般的なものと比べて圧倒的に異端なもの。

 銀色の球体のようなものを無数にコートのポケットから取り出した。かなり一つ一つは小さく軽量なものだ。

 たいしてセンのものは自分の名の通りか、千本にも近いナイフをどこからか取り出す。

 二人とも収納魔法は使えるのだが、それに使う魔力をも使わなければ勝てないと互いに思っているのだろう。


「……行くぞ」

「かかってこい」


 センが駆け出して、レイネが第一撃を受け流した。



「まさか、ここまでだとはな……」

「……」


 一時間後には死闘の後と呼べるような、草木が半径一キロメートル四方に一本たりとも見当たらない光景があった。

 そしてそこには地面に伏しているはレイネ。

 そう、レイネの力をセンが上回っているという単純な事実と結果がそこにあったのだ。

 もっとも、経験値だけで言えばレイネの方がはるかに上回るのだが、それをも圧倒する力をセンが有していたのだ。


「もちろん手を抜いていたんだろう」


 無論、本当はレイネは本気を出していたことを知っているのだ。

 しかしセンは師匠としてのレイネの対面を持たせるためかそう問い、レイネは首を振るだけだった。

レイネは手など抜いていなかった。最後の授業にふさわしいように、全力を発揮したのだ。


「なぁ、セン」

「……何だよ」


 自らを幼少のころから育て上げてきた師匠――親が自分の力によって、こんな姿になっていることに少し複雑になりながら、反応した。


「強さとは、何だと思う?」


 レイネはそう聞いた。何を思ったのか。最後の授業で伝えたいことがあるのだろう。

 最後と言ってもここで命が尽きるわけもなく、レイネは自分で治癒して治していた。


「その問いは……少なくとも、今の俺にはわからない」

「私はな、自分の意思を固く守る力、それ(・・)を叶える力だと思っている」

「……」


 レイネは立ち上がってまた話し始める。

 センはそれを静かに聞き始めた。


「別に人のために力を使えなんて私は教えてないだろう?」

「……あぁ」

「人を守るためだとか、そんな崇高な目標は立てなくていいんだ。自分が頭で考えて、正しいと思えることを実行しろ。それだけで十分だと私は思っている」

「……」

「だが――」


 そこでセンの方に振り返り口元に弧を描きながら、自分の首へ指をくっつける。

 そして、首を落とすような動作をしながら――


「間違ったことを私の授けた力で成そうとしてたなら、私はお前を殺しに行くぞ」

「……わかった」


 センは、何故これが最後の授業なのかやっとわかった気がする。

 いままで授けてきてくれた強大な力だったが、その使い道は山で獣に遭遇した時くらいだった。つまるところ力を使う理由は今日初めて教えてもらったのだ。


 センは、今までの――十年間の修行の総まとめとも呼べるようなことを一時間で成し遂げられ、自分の力が師匠に認められたことが嬉しかった。

 そして、最後の授業で教えてもらった力を使う上で最も大事なことをセンは自分の胸に刻み付けた。


「師匠」

「なんだ、改めって……」


 レイネが前に向き直った後、センはレイネを呼び止めた。

 きっちりとした姿勢で立ち頭を地面にこすりつけ、膝を曲げながらセンは声を出した。

 師匠への敬意を表すための土下座。


「長い言葉は不要、拳で語れって師匠は言ったけど、俺は師匠への恩義だけでも言葉にしなきゃだめだと思う」

「そうか」

 

 拳で語った手前こんなことは無粋だと思ったセンであったが、一言でもお礼をセンは言いたかったのだ。

 静かに返事をしたレイネは心なしか目尻に雫を浮かべているような気がした。センもまた、しかりである。


「……身寄りも金もなかった俺を、ここまで育ててくださりありがとうございました……っ!! この恩を少しでも返すためにも師匠から貰った力を自分の意思を貫けるように使っていきます……っ!!」

「バカ野郎が。らしくねぇんだよ……」


 センの偽りのない感謝の言葉を聞いたレイネは目元を親指と人差し指で抑えながら、そう悪態をついた。

 センの方も王都のスラム街で初めて会った時から、一度も流されることのなかった涙が今ボロボロと固い地面に水たまりを作っている。


 数分後、別れの挨拶は無用とレイネが手を雑に降ったのを見たセンはその場を駆け出して大きな山を下っていった。


「行ってこい、新しい世界を知りに――」


 2017.12.3にて、情景描写やミスなどを修正いたしました。

 同年12.5にて最後の会話文の修正いたしました。

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