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補助魔術でも立派な魔術ですっ!~最弱魔術で世界最強へ~(仮)  作者: 凛音
chapter1 クロキア魔術学園編
13/16

story11 世界最強の弟子

 更新に間が空いたので、いつもより文量を多めにしました。

「準備はいいか? 両クラスの代表」


 審判の剣術担当の教師がそう言うのと同時に、その場の空気は弛緩された。

 もっとも、センや一部の生徒にとってはその限りではないのだが。

 しかし、フランクの心中はそれどころではなかった。


(上級貴族の子息と言えども、元帥と学園長のお気に入りに手を出したらただでは済まないだろうな……)


 フランクの胸中は穏やかではなかった。 


「はい。A組の準備は万全です」


 そんなフランクの胸中をA組の生徒は知るはずもなく、自信ありげに勝気そうな男子生徒がそう報告した。


「B組は?」

「こちらも大丈夫です」


 B組の確認も、委員長がしたあと報告したので、さっそく対戦がはじまることになった。

 一番手はセンであるが、まったく緊張していないのか、だるそうに、しかし見るものが見れば全く隙が無い構えをしていた。


「では、A組対B組の代表対抗試合を始めたいと思います。双方、試合場の中心に集まって礼」

「「はい」」


 審判の呼びかけに返事をした両クラスの代表は、それと同時に試合場の中心に集まってきた。

 センもその例外ではなく、最後尾に着きながら最後に到着した。


 また、それと同時にそんな様子を見ながら数人、この試合場の観客席にこっそりと忍び込んでいる影があった。


「ここでいいのか? フィアラ」

「ええ。入試会場や編入試験の会場は普段、このように授業で使われておりますので」

「おっ! センがいるじゃないか」


 最初に発せられた声は、幼い子供を彷彿させる声色、しかしその中にも威厳が込められている声。

 それに反応したのは、大人の女性というような感じの声であった。

 この二人の正体は、クロキア魔術学園長と、ソレイド軍本部基地長兼総司令官である。

 二人ともわざわざ側近や護衛の意見を押し切ってわざわざここまでセンを見にきたのだ。


「何か楽しくなさそうだな、センのやつ」

「大方、A組の生徒に何かを吹っ掛けられてうんざりしているか、フランク先生に付き合わされているのでしょう」

「……私の権限でその家を取り潰してやろうか」

「……やめてください」


 センの顔を見ながらルイズがそう言うと、学園長はその理由を推測して語った。

 もっとも、推測としては当たりすぎているのだが、唯一当たっていないと言えばどちらもセンの身に降りかかっていることである。

 ちなみに、軍所属の上級貴族程度ならば、ルイズにかかれば解雇も難しくない。


 だが、そんな二人のほのぼのとした(?)会話は途中で打ち切られることになる。

 センがA組の生徒に絡まれているのを見たためである。


「何だ? 平民のくせに最後に到着とは舐めてるじゃないか」


 最後に試合場の中心に到着したセンは、案の定A組の生徒に絡まれた。

 しかし、そんな言葉を真に受けるようなセンではなく、無視し続けていた。

 もっとも、センだって反省くらいはしている。


「……」

「何も言わねぇってのは何なんだ? あぁ?」

「静かにしたまえ、君たち!」


 しかし、その絡みも審判に咎められて、すぐに終わった。

 その後A組の生徒はにらみつけるような視線をセンにぶつけると、何事もなかったかのように、自分の陣地へ戻っていった。


「はぁ……」


 面倒そうなやつに絡まれたと、センは憂鬱になりながらも、自分の大事なお守りを奪い取ろうとしている奴が相手であると気を引き締めた。



「では、一番手の各クラス代表は前へ」


 各クラスの代表が相互に礼をするのと同時――ではないが、ほとんど時間も経たずにその声が聞こえた。

 B組の生徒たちは、その声に緊張を帯びた様子で、しかし絶対に油断はしないという目で試合場を見つめている。

 もっとも、いつにしても例外入るものなのだが。


「おー! やっとA組との試合だな!」

「うるさいっ! エリック!」


 こんな感じである。

 いや、一応張り切っていることはしかと伝わってくるのだが、どうしても緊張感というものは感じられない。

 ちなみに上の会話は、エリックとセレストによるものである。

 まるでお調子者のクラスメートを咎めるクラスの委員長のような――いや、本当にその関係だった。


「あ、あと、セン君?」

「……はい?」


 そのいざこざがようやくまとまったのか、次は一番手であるセンに話しかけてくる委員長。

 まさか自分に話しかけられるとは、つゆほども思っていなかったセンは、一瞬間を置いたが、しっかりと反応した。

 しかし、委員長は委員長で少し緊張しているようにも見えなくはない。


「その、フランク先生は勝負ごとになると熱くなる先生だから、その……」

「……?」


 委員長のセレストの言っていることが、要領を得ないことに疑問を覚えながら、首を傾げていると、セレストは一瞬顔を赤くして、答えた。


「えー、と。絶対に勝たなきゃだめだなんてプレッシャーに感じることはないからね? フランク先生の言う通りの人なら、凄い人って言うのはわかっているんだけどその……心配だから」

「わざわざ新参者の俺に心配をしてくれてありがとうございます。でも、こちらも勝負を吹っ掛けられた身ですので、一回くらいは頑張りたいですね」

「新参とか、そんなのは関係ありません。みんなクラスの一員ですから」

「それは嬉しいです。ありがとうございます」


 話しかけられて、先ほどの貴族の生徒との賭け、というかケジメに対して咎められると思っていたセンは、拍子抜けしながらも委員長の人柄を知ることが出来て、ひとまず満足したという具合である。

 センが言い放ったお礼の丁寧さに、少し面喰いながらも、にこやかな笑みを浮かべながらお辞儀して、待機場まで戻っていった。

 そこで、委員長の親友であると言われている、エルザに茶化されているのを見て、少しいたたまれない気持ちになったが、それを放ってセンは試合場に向かった。


「怖気づかずに来たのだけは評価してやろう。平民」


 センが、クラス代表の一番として試合場に赴いた瞬間に、聞こえたのはその声。

 もっとも、聞こえたとはいえ、相手との初期位置は100メートルほど離れているので、耳障り程度のものなのだが。

 センは不快感を隠そうともせずに、初期位置に着いた。


「それでは、両者共に構え」


 それはある種の抵抗なのか、それともただ単にストレスから来てるものなのか。

 センは構えることをしなかった。

 いや、そう言うと語弊があるのかもしれない。見るものが見れば、しっかりとした、隙のない構えだ。

 しかし、残念ながら目の前にいる生徒は何もわからない。

 自分から恥をさらしていることにも気づかずに、高高に声を上げた。


「はっ! それが構えか。笑わせてくれる」


 センの構えに笑いをこらえながら、相手の生徒はそう言い放った。

 それに対してまたもや無視されたことが気に食わなかったのか、生徒はまたもや黒歴史を生産する。


「まぁいいぜ。この俺の剣でお前を切り倒してやろう」

「……」


 さすがのセンも、ここまで実力と自信が比例していない生徒は初めて見たのか、苦笑するように相手の生徒を見つめた。

 一方、学園長サイドでは――


「あの生徒、何もわかっていないのか。指揮官の私でもあれがどれほど異常か分かるのに」

「……自分の学園の生徒の質が酷評されているようで何とも言えませんが……」


 試合が始まる瞬間を逃すまいと、試合場を食い入るように見つめながら、学園長とルイズは口を開き始めた。

 ルイズは、百戦錬磨の知識を併用しながら。学園長は魔術師として、センの規格外さを正確に計っている。

 他の生徒はこのことがわかっているのかと嘆きながらも、またもや話し始めた。


「この学園はそもそも、騎士や魔術師の育成に力を入れているからな。当然人材は軍にも加わってくる。その時に使い物にならなかったら、それこそ意味がないのだぞ?」

「わかっております。しかし、やはり特進科制度が、どうしても弊害になってしまってですね」

「それは言い訳だ。単純に言ってしまえばそもそも教師の質が悪いのだ。実力で判断せずに、階級で決めつけるからよくない。その点、あのB組の担任はできているようだが」


 ――など、生徒の質の低下の話題から、学園の経営上の話題になったことに気づき、学園長は口を閉ざして、また試合場を見つめた。

 それに伴い、話し相手が居なくなって、興が冷めたと言わんばかりにルイズも学園長の視線の先の者を見つめなおすことにした。


 そして、その数瞬後。「始めっ!」の声と共に、戦いの幕が上がるのだった。



「うおおおおおお!」

「…………」


 試合開始の声が試合場や観客席まで響いて、その場が大きく沸き立った。

 センにとっては見世物的なこの試合に、何とも不快感が強まったのだが、負けるわけにはいかないと、すこしずつ距離を詰めてきている相手の生徒を見つめる。

 そして一瞬思考して、学園長程の実力はまずないと考え、魔道具は使わないことに決めた。

 その裏で、この学園のレベルを察したセンは、残念そうに溜息をつきながら、無防備に身をさらす。

 別に油断しているわけではない。相手は両手剣を使っているので、油断していると思わせて懐に飛び込ませるのが早いと思ったのだ。


「ふっ……隙だらけなんだよ!」


 そして自分から恥をさらしている相手の生徒に、何とも言えないもやもやとした気持ちを抱きながら、大きく振りかぶってくる剣を見つめて嘆息した。


 ギィィイイン!!


 その場に響いたのは、そんな金属と金属がぶつかって、火花でも出ているかのような独特の高い音が試合場に響き渡った。

 過度な音量に耳を痛めたのか、観客席にいる生徒の中には耳を抑えている生徒もいた。

 だが、当の生徒はそんなことは気にしていない。

 気にしているのは、センが何も武器を持って(・・・)いない(・・・)こと(・・)である。


「な、何!?」

「お、おい……あいつ、何も持ってないぞ」

「……」


 その光景に、ある者は畏怖し、あるのもは疑問の眼差しで見つめる。

 ある程度顔立ちの整っているのも付加効果として働いているのか、センの事を恍惚とした表情で見る者も出てきた。

 その様子を、男子生徒たちは嫉妬しながら見ている。

 単なる魔力付与による武装に、何故ここまで反応されるのか分からなかったセンは、少し目を見開きながらも、相手の事を注視する。


「な、何なんだ! それは!」

「……教える義理はないな」


 散々自分の事をバカにしてきた相手に、武装の秘密を堂々と聞かれたセンは、怒りをも通り越して呆れていた。

 もっとも、教える義理も必要性も感じないため、その後は無視し続けた。


 そして数分後。

 互角の戦いをしていたように見えていた両者だが、あきらかに貴族の生徒が押されているように周囲の生徒の目には映った。

 センは何もしていない。変化もなしにゆっくりと手刀で相手の生徒の剣をさばいていた。

 しかし、相手の生徒は体力が切れてきたようで、ぜえぜえと息を切らしながら剣を大振りしてくる。


「そろそろ降参したらどうだ? 体調不良でも訴えればお前の面目も保たれるだろう? もっとも、負けは負けだから俺のナイフは手に入らないな」

「……貴族の誇りを汚すわけにはいかない!」


 自分の席にあるナイフをチラリと一瞥しながら、相手の生徒に話しかける。

 それに対して、一丁前に誇りなどを語っているので、センはますます実力と言動が伴っていないと感じた。


「……じゃあ、つまらなくなったし、もうやめるか」


 これ以上の勝負は無意味と思ったのか、センは嘆息しながら残念そうに視線を空に向けた。

 しかし、一瞬だったそれを見たものは誰もいない。


 次の瞬間。

 刹那とも呼ぶべき短い時間を超えて。

 誰も瞬きなどしていなかったのに、センの対戦相手は試合場の地面に気絶しながら横たわっていた。



 2018.1.21 誤字修正しました。

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