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狼になった。  作者: ケモナー@作者
二章『運命が変わる刻』
15/22

満月の夜

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僕は黒く染まった夜空に浮かぶ月を眺めていた。

今日は満月、電灯などない森の中の唯一の光源。

さらに獣の姿なので夜目が利く、そのお陰で真っ暗な暗闇の筈である背景がアニメの夜のように明るく見える。

夜行性の動物が見てる景色ってこんなのなのかな?どっちにろ確かめようが無いので僕は空を見上げて月を見る。

人間の時は月なんて全く見てこなかった


ぶっちゃけ正直、月なんか見てるより携帯やパソコンイジってた方が楽しかったしね。今見てるのは単に暇だからです。暇つぶし、それ以上でもそれ以下でもそれ以外の何物でもありません。


そんな感覚の持ち主の僕でも、この洞穴から月を眺めるというのも中々良いものだと感じた、子供の頃、横たわったドラム缶の中に入り込んで外を眺めた記憶に似ている。秘密基地にいるみたいで何だか楽しい。

眠たくなるまではこのまま丸っこい月を眺めていようかな


ちなみに僕の隣ではアサちゃんが「スー、スー」と寝息を立てて熟睡中です。何も無防備に寝なくても・・・でもなんか信頼されてるようでムズムズする、犬派の皆様やケモナーの皆様ならこの感覚がわかって頂けるでしょう!

それもここまで密着しなくても良い気が・・・はっ!まさかこれはアサちゃんに懐かれちゃった!?


キャッ!ヤダッ!


うんにゃそれは無いな、自意識過剰は止めておこう。


僕はアホらしい脳内劇を終了させてアサちゃんの寝顔を眺める、声が可愛いから人間だったらホント美少女だわ。

最近、僕は尻尾の動かし方がわかってきた。

僕は自在に操れるようになったモフモフの尻尾でアサちゃんの首もとをさする。

するとアサちゃんは「んっ・・・」とか「キャウン」とか小さく鳴いてくる。


どうしよう声優並の声が色っぽすぎるんだけどぉぉぉぉぉぉ!!!


やべぇどうしよう僕の脳内ケモナー化が・・・

人間に戻った時社会復帰できるか不安だ。

ま、いっか。


「お、父さん・・・」


僕が頭を抱えて唸っていると寝ているハズのアサちゃんの方からそんな声が聞こえた。

何だろう?と思った僕はアサちゃんをのぞき込むかのように見下(みお)ろす

アサちゃんは確かに眠っている、きっとお父さんが出た夢なのだろう。

でも何故か苦しそうだ、アサちゃんは鼻をピクピク動かしながらう~んと唸っている、目も力を入れてるように強く(つぶ)っている


試しに僕がモフモフの尻尾をアサちゃんの鼻先に置くと途端に唸り声を止めた。

すると鼻で匂いを嗅ぎ始めた、クンクンと鼻を動かす、そして


「っ!!」


次の瞬間あの時の痛覚を感じた。

大体この慣れない痛みの正体は把握しているのだ。

アサちゃんが僕の尻尾を甘噛みしていた。

本気の噛みじゃないのが救いだけど今寝相で噛んでるアサちゃんだ、小さな(はず)みで本気の噛みをしてくるかもしれない、どうしよう怖い


僕は尻尾を勢いよくアサちゃんの口から尻尾を外す

「ふぃ~、あぶねぇ」

そして尻尾の痛みから解放されて安心する

尻尾噛みはトラウマなんだよ・・・


「キュゥン・・・」


「・・・・。」


僕はまた尻尾をアサちゃんの鼻先に置く、するとすぐにハムハムしてくる。

「~♪」

「子供かいな・・・」

僕の口から呆れ声を出す、この甘えん坊が初対面あった時のあの好戦的な狼とは思えない

ていうか本当に寝てるよな?・・・寝てるよね?


「ふむ・・・数日でアサに懐かれるとはなぁ」

アサちゃんの可愛らしい寝言からは正反対の低いダンディな声が耳に入る

声のする方を見るとクマさんがノッシノッシと洞穴から歩いてきた

最初会った時の感じた恐怖は感じられない・・・老師というほのぼのとした雰囲気を醸し出していた


「こっ今晩わ・・・」

「うむ」


クマさんに挨拶をすると軽く返してきた、そして僕の真隣に座ってアサちゃんを愛おしそうに見守りはじめた。


クマさんは何しに来たんだろうか、わざわざアサちゃんを見るためにきたのだろうか?

いや、そしたら最初からここにいるハズ、奥から現れたクマさんはまるでアサちゃんが眠るのを待っていたかのようだ。

一体何のために?

もしかして僕と同じで月でも見に来たのかな?

何を考えているんだ・・・ 



いや、気にしない方向でいこう、今の問題なのは、僕の間隣にクマさんが座っていることだ。


正直言うと超怖いんですけど・・・

だって超デカいクマが座ってるんだよ?獣特有の臭いが鼻に入ってくるんだよ?メチャクチャ怖いよどこのホラー映画だよ


ていうかアサちゃんに尻尾で悪戯(イタズラ)しているのがバレてたまにこっちをメッチャ睨んでくるんだわ。殺されちゃうんじゃない?僕


クマさん自体は警戒心をといているが、まるで義父さんに会ってるかのような殺伐とした空気だ


この空気から脱出しようとこっちから話をかける事など出来ない、いや話しかけたら勇者だよ。

いやクマに話しかけるのもどうかと思うけど今は獣であって。


僕とクマさんはそのままお喋りすることなく、お互いが黙って綺麗な満月を眺める時間が過ぎていく、たまにアサの寝声が聞こえてくるけど


そうしているとクマさんがしびれを切らしたのか深いため息を吐くと僕にその顔を向けてきた。


「・・・お主、シロウと言ったか?」

「・・・え?あっはい。」

僕は若干戸惑いながらそれに応える。クマさんは話を続ける。

「アサから話は聞いたぞ、お主・・・アサと初対面で狂ったように叫び通した挙げ句下ネタを連呼したらしいな、確かGS(ゴールデンシャワー)とかなんとか」

・・・否定できません。確かに僕は初対面の女の子に向かってS Y O N B E Nと言いました。

それで怒られるのかな?どうしよう怖い


「恐らく、アサにとってお主の性格は苦手・・・いや嫌いな分類に入ると思う」


はい噛まれました、一晩中尻尾を噛まれました。

どうしよう絶対怒ってるよ、今から思うとデリカシー足りませんでしたよね。

謝るから許してぇ


「だがお主にアサは懐いているようにも見える・・・シロウ、お主は何をした?」


クマさんは満月を見ていた顔を僕に向ける

驚いて僕もクマさんを見つめ返した。

歳は確か30歳以上、獣としてはかなりのお年のハズ、だけど・・・衰えた様子は見えない

身体は衰弱していても目は偽りを許さない、意志の強い瞳。この森の主だと感じられた。


「怪我を、治療しただけですよ」

僕はありのままにそう言った。

その他に懐かれるような事はしてはいない、あえて言うなら食料を与えた事だろうか?

それで懐かれるなら野生動物はかなりチョロいだろう、たまたまアサちゃんがそうだったのか・・・


「お主はどこからきた?」

クマさんは質問を続ける

「・・・わかりません」

「そうか」

「一つ、教えてください。ここは一体どこですか?」

僕は出来るだけ真剣な表情を作った。

クマさんも僕の目を見たのかふざけることなく答えてくれた。


「青木ヶ原樹海・・・富士と呼ばれる山の北側に位置する広大な樹海だ。」


青木ヶ原樹海・・・別名富士の樹海。

富士山の北西の位置に存在する歴史約1200年のそこまで古くはない樹海だ。

生息する動物は沢山生息しており、「自殺の名所」と異名を持ちながらキャンプ場や遊歩道が存在し、以外にもピクニックとしての人気もある。

ただ遊歩道を外れて数百メートル離れれば深い森の中にさまよう羽目になる

地中の磁鉄鋼のせいで方位磁石が少しブレるらしい


「・・・嘘ぉん」

僕は目を見開いてただそう言った、自殺の名所ってことで僕そういうの苦手なんだよ

はっ!もしかして昨日の洞窟にあった動物の白骨死体の山もそれ系の関係!?

いやいやいやあれは確かデマだろ問題ないでも怖いぃぃぃぃぃ!!


僕がそうガクブル震えているとクマさんは僕をただ見つめていた


何かを見通すような黒く輝く瞳、一端目を閉じてクマさんはこう言った




「シロウ・・・お主人間だろう?」




バレた!?(・(ゑ)・;)

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