第3話 王都のサロンと執事
秋深まる王都の朝は、澄み切った薄青の空から柔らかで繊細な陽光が降り注いでいた。
ヴァルボート公爵邸の二階にある仕立て室には、一着のドレスを囲んで、甘やかな溜息と張り詰めた静気が同時に漂っていた。
「……まぁ、なんて綺麗なドレス……!」
大きな姿見の前に立つエルネは、自身の姿に目を細め、胸の前で小さな手をギュッと握り締めた。
身に纏っているのは、アルディスの瞳の青、深海を思わせる、深みのあるサファイアブルーのシルクタフタドレスだ。
動きに合わせて繊細な光沢を放ち、胸元や裾にあしらわれた白銀のレースは、まるで夜に舞う雪を想起させる。アルディスの嫉妬心を表現したかのような美しいドレスだった。
普段は動きやすい調合衣と革のポーチが定番のエルネ。
未だ慣れない貴族の集まりや、これほどまで豪華な装いは気恥ずかしくもあり、同時に胸を躍らせるものでもあった。
「当然です、私のお嬢様」
耳元で静かに溶けるような、低く滑らかな声音が響いた。
エルネの背後で膝をつき、ドレスの裾のドレープを指先ひとつでミリ単位の狂いもなく整えているのは、専属執事のジュリアンだ。
艶やかな漆黒の髪を後ろに流し、ミルクチョコレート色の肌には一切の隙がない。
漆黒の燕尾服を完璧に着こなした彼の美しい指先が、白手袋越しにエルネのドレスの裾を滑る。
「先日、難攻不落と称された『碧硝子の月光花』を見事に採集し、王立病院の幼き患者をお救いになられた『特級万能鑑定調合官』エルネ様。本日、王都最高峰の社交場『ローズ・エピス』にお招きされるに相応しい、気品と可憐さを最大限に引き立てるよう仕立てさせました。……実にお見事な美しさでございます。私の心など、とうに奪われておりますよ」
ジュリアンは顔を上げ、深く澄んだ赤い瞳でエルネをじっと見つめた。
その瞳の奥に宿るのは、一切の不純物を削ぎ落とした純粋で甘い熱量だ。
彼は優雅に手を伸ばし、エルネの手の甲へ吐息が触れるほどの至近距離で、恭しく唇を寄せようとする。
「待つんだジュリアン!!」
ドゴォン!
爆裂音がしそうなほどの冷気が部屋に立ち込め、仕立て室の重厚な扉が叩きつけられるように開いた。
そこに立っていたのは、あまりの美貌に「氷の彫刻」と称される青年アルディスであった。
王国最強の氷結魔法の使い手であり、絶対的な冷徹さで恐れられる彼は、今や見る影もないほど眉をひそめ、青色の瞳に猛烈なメラメラとした嫉妬の火を宿していた。
「私以外の男が、エルネの手の甲に口づけするなど絶対に許可しない! 離れろ、ジュリアン!」
「これはこれは、アルディス様」
ジュリアンは微動だにせず、滑らかな動作で立ち上がると、完璧な角度でお辞儀をしてみせた。
「ご安心ください。私はお嬢様の専属執事として、本日のサロンでの立ち振る舞い、およびエスコートの『事前の所作指導』を行っていたに過ぎません。……まさか、お嬢様の婚約者であられるアルディス様が、このような当然の給仕にまでお心を乱されるとは。いささか器の小ささが心配になりますね」
「貴様……! 執事の分際で、いい度胸だ」
アルディスの額にピキリと青筋が浮かぶ。
彼は足早にエルネに歩み寄ると、ジュリアンを強引に脇へ押しやり、エルネの腰にそっと手を回して自らの胸元へと引き寄せた。
「エルネ、今日の君は本当に美しい。まるで夜空に咲く一輪の奇跡のようだ。……だからこそ、こんな不躾な男に気安く触れさせてはならない」
「あ、アルディス様……! ありがとうございます。でも、ジュリアンさんは私のドレスを整えてくれていただけですから……っ」
両側から迫る、王国屈指の美青年ふたりの圧倒的なプレッシャー。
エルネはあわあわと視線を行き来させながら、頬を真っ赤に染めた。
「アルディス様」
ジュリアンは薄い唇に涼やかな笑みを浮かべ、ポケットから白銀の懐中時計を取り出した。
「お戯れはそれくらいになさってください。サロンへの馬車の手配、および本日出席される主要貴族の家系図、交友関係、さらには好みの会話のテーマに至るまで、全て完璧に頭へ叩き込んでございます。……本日のサロンでのエスコート、このジュリアンに全てお任せいただけますね?」
「断る」
アルディスは一歩も引かず、エルネの手を優しく、しかし固く握り締めた。
「私の婚約者をエスコートするのは私だ。貴様は馬車の御者と、荷物持ちでもしていればいい」
「お言葉ですが、アルディス様。本日は陛下の護衛として王宮の会議に出席する予定があると、執事長からキツく言われております。また今回初参加となるサロン『ローズ・エピス』は、洗練された会話の裏で激しい派閥争いとマウンティングが繰り広げられる社交界の魔窟。アルディス様の氷結魔法だけでは防ぎきれない、粘つくような嫌味や罠が溢れております。……お嬢様の可憐な笑顔に陰りを落とさせないためには、私のような裏事情の機微に通じた者が真横に控えるのが最善かと」
「ふん……まるで自分が裏社会の泥水をすすってきたかのような口ぶりだな」
アルディスが鋭い視線でジュリアンを射抜く。
ジュリアンは一瞬だけ赤い瞳の奥に、深く冷たい影を過らせたが、次の瞬間にはただの苦労人でございますよと言わんばかりの、完璧な執事の笑みへ塗り替えて見せた。
(……どれほど強力な魔法を操ろうと、貴族社会の陰湿な毒牙は真っ直ぐな力では防ぎきれん。俺がお嬢様の側に立ち、不快な雑魚を全て叩き潰して見せる……。そうすれば、お嬢様は俺の完璧さだけを頼りにしてくれるはずだ)
ジュリアンの胸の奥で、静かな計算と、一筋の熱い執着が渦巻いていた。
二人の男によるバチバチとした火花が散る中、エルネはため息をつきつつも、自分をこれほどまでに大切に想ってくれる二人の温もりに、どこか胸を温かくするのだった。
「お二人とも! 今日はスケジュールが大変だと言われているのに! しっかりしてください!」
◇◇◇
王都の中心街、最も格式高い貴族街の一角に佇むサロン『ローズ・エピス』。
豪華絢爛なクリスタルのシャンデリアが天井で眩い光を放ち、会場には王立学院、調合院などの学界関係者、高位貴族、実業家たちが一堂に会していた。
最高級のワインと甘やかな香水の香りが混ざり合い、弦楽四重奏の優美な音色が館内に響き渡っている。
「――見てごらん、あれが噂の『特級万能鑑定調合官』かい?」
「まあ……なんてお若いお嬢さんでしょう」
「『碧硝子の月光花』をひとりで採集したという話だが……所詮は運が良かっただけではないのか?」
エルネが会場に足を踏み入れた瞬間、無数の視線とヒソヒソ話が押し寄せてきた。
讃嘆、好奇、そして若くして最高峰の称号を得た彼女に対する剥き出しの嫉妬と懐疑。
(大丈夫……! 今日はアルディス様に心配をかけないように、私も『特級調合官』としてちゃんとしなきゃ……っ)
緊張で身を硬くし、ドレスの裾をギュッと握り締めそうになったその時――。
「大丈夫です。お嬢様」
左隣を歩くジュリアンが、凛とした佇まいで周囲の視線を牽制する。
「お嬢様、背筋を伸ばし、堂々とあられると宜しいかと。貴女の美しさと偉業は、このような有象無象の言葉で揺らぐものではございません」
ジュリアンが、すっと手袋を嵌めた手でエルネの背中を優しく支えるように添えた。
「はい……! ありがとうございます」
エルネは胸を張って凛とした笑みを浮かべた。
しかし、その平穏は長くは続かなかった。
「――おやおや、これはこれは! 今をときめく『特級調合官』、エルネ様ではありませんか!」
人混みをかき分けるようにして現れたのは、ギラギラとした金糸の刺繍が施された絹の服を着た、肥満体の男。
胸元にはいくつもの派手な勲章が揺れている。悪徳貴族として名高い、バルトロ子爵だ。
「バルトロ子爵……」
エルネは足を止め、身構えた。
「いやはや、本日はヴァルボート公爵閣下の姿が見えませんが……もしや、若すぎる調合官殿は早くも愛想を尽かされたのですかな?」
バルトロは下品な笑みを浮かべ、ねっとりとした視線をエルネに向けた。
「巷では貴女の『超絶鑑定眼』なる能力が持て囃されているようだが……公爵家の後ろ盾がない今、本当に本物の実力をお持ちなのか、この場で少し試させていただいても宜しいかな?」
周囲の貴族たちが面白がり、取り囲むように集まってくる。
公爵不在の今、エルネを羞恥に晒して嘲笑おうという悪意が会場を支配しつつあった。
バルトロが合図を送ると、従者が恭しく銀のトレーを捧げ持ってきた。
そこには、妖しい紫色の光を放つ鉱石の結晶が載せられていた。
「これは、我がバルトロメウス家が南方の未開地より命懸けで持ち帰った伝説の霊石『紫の涙』でございます。……どうです、特級調合官殿? この石の成分と価値を、今ここで完璧に鑑定してみせては?」
(……紫の涙……?)
エルネは静かに集中し、自身の『超絶鑑定眼』を発動させた。
エルネにはその石の方が見えた。【紫水晶の涙(偽物)】系統:人工着色加工鉱物。構造:安価な蛍石に、『毒蛇の体液』と『紫染草』の抽出液を煮詰め、高圧で染み込ませたもの。強烈な魔力を放つように見えるが、本質は有毒なガスを微量に放出する危険な粗悪品。
(やっぱり……! これ、偽物だわ! しかも有毒なガスを出す加工がされてる……!)
エルネがその事実を指摘しようと口を開かけた、まさにその瞬間だった。
「――フッ、ハハハハ!」
静まり返ったサロンに、低く洗練された、しかし強烈な嘲笑を含んだ笑い声が響き渡った。
声の主は、エルネのすぐ後ろに佇んでいた漆黒の執事、ジュリアンだった。
「な……何だ貴様は!? 従者の分際で、この私を発言している場において笑うとは何事だ!!」
バルトロメウス子爵が顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
ジュリアンは静かに歩み出ると、エルネを遮るようにその前に立ち、完璧な所作でお辞儀をしてみせた。
「大変失礼いたしました、バルトロ子爵。あまりにも貴方様の『お戯れ』が滑稽でございましたので、つい執事としての分を忘れ、笑みを漏らしてしまいました」
「な……滑稽だと!?」
「ええ、滑稽でございます」
ジュリアンは赤い瞳を細め、ミルクチョコレート色の美貌に、冷徹なまでの完璧な笑みを浮かべた。
「安価な蛍石に、南方産の危険な『毒蛇の体液』と『紫染草』を煮詰め、表面を滑らかに加工しただけの毒性粗悪品。それを『伝説の至宝』と称して我が主・エルネお嬢様に差し出すとは……無知を晒すにも程というものがございますよ」
「〜〜〜ッ!? な、何を出たらめを!!」
バルトロの顔から一瞬で血の気が引き、動揺が走り抜ける。
「出たらめ、でございますか?」
ジュリアンは一歩、バルトロメウスへと歩み寄った。その足取りには一切の足音がなく、まるで暗闇から滑り出す影のようだ。
「では、バルトロ子爵。そちらの鉱石の右下にある極小の気泡……それこそが、南方闇市で暗躍する偽造業者『砂漠の蜘蛛』の手による人工加工の証でございます。……貴方様は3ヶ月前、東方の密輸船からその偽物を金貨五十枚で購入され、自社の帳簿には古代遺物の購入費として金貨百枚と計上し、差額を私腹に肥やされた……違いますか?」
「ひっ……!? な、なぜそれを……!?」
バルトロはガタガタと膝を震わせ、後ずさった。
会場にどよめきが広がる。
ジュリアンが口にした内容は、単なる鉱石の鑑定を超えたバルトロ家の裏の財務状況と密輸ルートの完全な暴露だった。
(……ジュリアンさん、すごい……! 私が鑑定眼で見るより前に、裏の事情まで全部知ってるなんて……!)
エルネは目を丸くして感嘆の息を漏らした。
ジュリアンは至って涼しい顔で、さらに追い打ちをかけるように甘く冷ややかな声を響かせた。
「さらにもう一つ、バルトロ子爵。貴方様が最近、王立病院への薬品納入で水増し請求を行っておられる件……まさに今、王立騎士団の監察官が貴方様の邸宅へ伺う手はずとなっております。……どうぞ、最後の高級ワインを心ゆくまでお楽しみくださいね?」
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
バルトロは悲鳴のような声をあげると、白目を剥いてその場に倒れ込んだ。従者たちが大慌てで彼を運び出していく。
静まり返ったサロンに、ジュリアンは優雅にパンと手を打ってみせた。
「……お騒がせいたしました、皆様。我が主・エルネ様は、このような下品な偽物などに惑わされる方ではございません。……どうぞ、宴をお続けください」
公爵という圧力がなくとも、目の前の執事一人によって一瞬で悪徳貴族が社会的に抹殺されたのだ。
会場にいた貴族たちは、若き特級調合官エルネの威厳と、彼女を影から完璧に護る漆黒の執事の圧倒的な手腕に恐怖し、一斉に恭順の意を示すように深々と頭を下げたのだった。
サロンでの快勝を収め、公爵邸へと戻る豪華な馬車の車内。
街灯の柔らかな光が窓から差し込み、二人きりの空間を静かに照らしていた。
「ジュリアンさん! 本当に凄かったです!」
エルネはシートの上で身を乗り出し、対面に座るジュリアンに向かって目を輝かせた。
「アルディス様がいないからすごく緊張していたんですけど、ジュリアンさんがいてくれて本当によかった……! あの子爵さんの嘘を一瞬で見抜いて撃退しちゃうなんて、まるで魔法みたいでした!」
「お褒めいただき光栄です、お嬢様」
ジュリアンは膝の上に手袋を嵌めた手を置き、赤い瞳を甘く細めた。
「私はお嬢様の専属執事。お嬢様の可憐な笑顔を曇らせる不快な雑音は、全てこの手で排除するのが当然の務めにございます。……少し、お疲れになられたのでは?」
ジュリアンはすっと立ち上がると、エルネの隣のシートへ腰掛けた。
タオルケットを広げ、エルネの華奢な肩を包み込むようにしてかける。その距離の近さに、エルネの胸がドキリと跳ね上がった。
ほのかに漂うシトラスとハーブの香りが、彼女の鼻腔をくすぐる。
「ジュリアンさん……あんなに裏の事情に詳しいなんてすごい! たくさん調べたのですか……?」
エルネの素朴な疑問に、ジュリアンは一瞬だけ表情を陰らせ、寂しげに自嘲的な微笑みを浮かべて見せた。
「……お恥ずかしい話でございます、お嬢様」
ジュリアンは伏し目がちに自らの手袋を見つめた。
「私は幼少の頃より過酷な環境で泥をすすり、生き延びるためにあらゆる裏の知識と泥臭い術を身につけざるを得なかった……ただの苦労人に過ぎません。他人を信用せず、ただ己の腕だけを頼りに生きてまいりました」
ジュリアンは顔を上げ、エルネに向かってどこまでも真っ直ぐで、切ないほどの情熱を込めた視線を向けた。
「ですが……そんな私も今では温かな居場所、他ならぬエルネお嬢様の専属執事なのです。だからこそ、過去の泥臭い知識も術も……全てはお嬢様の笑顔を守るための盾して捧げる所存にございます」
「ジュリアンさん……」
エルネの胸が、キュッと締め付けられた。
誰にも頼れず、過酷な世界を一人で生き抜いてきたという彼の孤独な過去。
そして、そんな彼が自分に全幅の信頼と深い情熱を注いでくれているという事実。
(ジュリアンさん……そんなに大変な思いをして生きてきたんだ……。なのに、私のためにあんなに一生懸命尽くしてくれて……)
エルネは小さな手を伸ばし、ジュリアンの手の上にそっと重ねた。
「ジュリアンさん、過去のことを話してくれてありがとうございます。……私は、ジュリアンさんがどんな過去を持っていても関係ありません。私のために頑張ってくれたジュリアンさんは、世界で一番誇らしい私の執事さんです!」
「……お嬢様……」
重ねられた小さな手の温もりが、ジュリアンの手袋を通して肌へと染み込んでくる。
ジュリアンの胸の奥で、またしてもあの甘くて痛い熱が激しく脈打った。
(ああ……くそ……)
単にお嬢様の信頼を得て、己の存在を不可欠なものにするための立ち回りであったはずだ。
なのに、この少女は純粋な優しさで、彼の存在も過去も、すべてを包み込んで肯定してしまう。
ジュリアンは深く頭を下げ、真っ赤に染まった耳と、酷く崩れた感動の表情を隠すのが精一杯だった。
◇◇◇
馬車がヴァルハイト公爵邸の正面玄関へ到着し、扉が開いた瞬間――。
「エルネ!!」
猛烈な勢いで駆け寄ってきた人影が、馬車から降りたばかりのエルネを強く抱きしめた。
公務を最速で終わらせ、玄関前で今か今かと待ち構えていたらしい。
「アルディス様……!? お仕事、もう終わったんですか?」
「ああ、急いで終わらせて戻ってきた! 怪我はないか!? 不快な思いはしなかったか!? 私がついていられなくて、本当に申し訳ない……!」
アルディスはエルネの肩を掴み、無事を確認するようにじっくりと見つめ回すと、心底安心したように彼女を自らの胸元へと引き寄せた。
そんな過保護すぎる当主の姿を、ジュリアンは馬車の脇で優雅にお辞儀をしながら見つめていた。
その口元には、隠しきれない優越感に満ちた微笑みが浮かんでいる。
「アルディス様、ご安心ください。お嬢様は私の完璧なエスコートのもと、不快な虫を一匹も寄せ付けず、終始ご機嫌でサロンをお楽しみになられましたよ」
「……ジュリアン、貴様……!」
アルディスが瞳を険しくし、猛烈な冷気を漂わせる。
「私のいない隙を突いて、エルネの手など握っていたのではないだろうな!?」
「まさか。給仕として当然のサポートをしたまでにございます。……まあ、お嬢様からは『世界で一番誇らしい執事さん』という、勿体なさすぎるお言葉を頂戴いたしましたけれど」
「〜〜〜〜ッ!! 貴様、調子に乗るなよ!!」
本気で激怒し、魔法を発動させそうなアルディスと、涼しい顔でマウントをとるジュリアン。
二人のバチバチとした火花に挟まれながら、エルネはクスッと可愛らしく微笑んだ。
「ふたりとも、ありがとうございます。……私、とっても幸せです」
月光の下、過保護な婚約者と、完璧で激重な専属執事。
二人からの溢れんばかりの愛に包まれながら、エルネの賑やかで温かな一日は静かに暮れていくのだった。




