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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第11節・落光
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第3話

前回のあらすじ


極秘工場にて修理を受けるタキオルドを前に、シュタインはフォトンファイターとタキオルドの不調の関係性について考えていた。

「──と言う訳で、今日のホームルーム終わりだ。日直!」

「姿勢!礼!」

『ありがとうございました!』


六時限目の授業を終え、ホームルームを終えて担任が教室より出て行き、それに合わせて教室内が騒がしくなる。

そんな中一人光は、溜め息をつきながら特に何もする事無く椅子に座っていた。


「光……」

「高坂、滝音さん、ちょっといい?」


溜め息をつく光を背後から心配そうな視線で見つめる久遠だが、そんな二人に割り込む様に花音が近寄って声をかけてくる。


「水代、何だ?」

「いや、今日はちゃんと部活に顔を出すのかなーって思ってさ。出る出ないは別にして、一応部長に報告はしておきたいし」


花音が二人へ問いかけてきたのは、ここ数日まともに顔を出していなかったジャナ部への出欠確認だった。ここ数日はフォトンガードナーの仕事が忙しく、先んじて携帯に部室へと来れない旨を伝えていたのだが、今日は昨日色々ありすぎて忘れておりそれでメッセージが無かったからこそ確認しに来たのだろう。


「すまないが、今日は──」


久遠が花音に頭を下げながら断りの返事を入れようとする。その瞬間、三人に近い所で固まっていた女子グループの会話が三人の耳に入ってきた。


「それにしても、ゼシア君もう転校しちゃうなんて……」

「留学生だから仕方無いと思うよ?この辺り今は物騒だもの」

「あーっ!こんな事ならジャナ部だからってビビらないで、もっと距離詰めてればよかったーっ!」


クラスメイトの一人の後悔の叫びを聞き、周りのクラスメイト達もゲラゲラと笑う。

それは年頃の少年少女の通う学校ではよくある話、意中の人に対するアプローチに対する反省会。しかし、光達にとって今はそれが──挙げられた名前が地雷だった。


「…………」(ピクリ)

「あ……」


ゼシアの名前が出た瞬間、光の眉が僅かに跳ねてそれを久遠は目にする。そのまま光は徐に立ち上がると、机横に掛けてあった鞄を手にして教室を出ようとした。


「すまん水代、俺今日はパス……」

「あ、ちょ、高坂!」


花音が呼び止めようとするも、光は意に介さず教室を出て行き廊下から遠退く足音が聞こえ始め、教室には呼び止めようとして中途半端に腕を伸ばした花音と、何処か不安げな表情を浮かべた久遠だけが残される。


「……済まない、私も今日は顔を出せない……」

「え、ちょ、滝音さんも!?」


去り行く光から距離が離れない内に早々と久遠は花音へと頭を下げ、鞄を手にして教室を出て行く。今度こそ一人教室に残された花音は、ポカンとしたまま動く事が出来なかった。


「確かこっちに行った筈だ……」


教室を出た際に光が階段を降りて行くのを目にした久遠は、急いで光の後を追いかけるが放課後というだけあって人混みが多く、中々距離を縮められない。

そうして四苦八苦しながら光を追いかけていたが、その道中で彼は靴箱とは違う方面へと進み始めた。


「は?……っと」


突然の方向転換に久遠は一瞬戸惑い、人の波に揉まれて光より遠ざかってしまう。流れに逆らわず出口──靴箱へとたどり着き光が向かった方向へと目を向けると、第二校舎の非常階段を上っているのを目にする。

光の後を追いかけ久遠は非常階段を各階を覗きながら駆け上がるが、校舎に入った様子も無く最上階へとたどり着く。


「最上階……居ないか……」


最上階の扉から校舎を覗くも人影は見えず、てっきり何処かで既に校舎へと入ったのかと思い引き返そうとすると、鉄柵で仕切られた屋上へと続く階段を見つけた。


「……ここだな」


久遠はその鉄柵を目にして、光がこの先に居るのだと確信する。鉄柵の高さはおよそ二メートル五十センチ程あり、手摺にして乗り越えられる様な作りにはなっておらず、一般人なら越えられそうもないものだが、光の身体能力なら軽々と乗り越えられるのが想像出来る。

久遠は深呼吸をして辺りに人が居らず、遠目から見ても自分の姿が見られていない事を確かめると、跳躍して鉄柵の最上部に手を引っかけてそのまま乗り越える。普段は隠しているが、三人の中でP因子を最も多く持つ久遠も常人離れした身体能力を有しており、光の後に続き屋上の階段を上って行く。


「っ、見つけた」


非常階段を上り終えて屋上へとたどり着くと、鞄を枕にして寝そべり空を見上げている光を見つける。久遠はそのまま光の元へと行き、顔の覗き込んで声をかけた。


「どうしたんだ、こんな所で」

「久遠……」


光は突然久遠が顔を覗き込んできた事に目を見開くと、久遠が顔を下げると同時に上体を起こして座り込む。


「帰ると言った割には、全く違う所に行ってたのでな。ついてきた」

「ずいぶんと勝手だな?」


てっきり先んじてフォトンガードナー基地へと行くとと思った光は、わざわざ自分についてきた事に呆れた様な表情を浮かべるが、逆に久遠からも呆れた表情を向けられる。


「勝手とは何だ、お前の方が今一番勝手にやってるじゃないか」

「それは……そうだな……」


一人勝手に基地に向かう事を拒絶して屋上で時間を潰そうとしていた光は、久遠の言葉に目を背ける。何処か迷っている様子を思わせる光の態度に久遠は小さく息を吐くと、彼が迷っているであろう原因を口にした。


「ゼシアの事を、考えていたのか?」

「っ!」


ゼシアの名前を出した途端目を見開く光を見て、やっぱりなと言いたげに久遠は頷くと光と目を合わせる。久遠と目を合わせていた光だったが、しばらくすると目を背けて滝音市の市街地の方へと顔を向けて口を開く。


「あいつ……敵だったんだなぁ……」

「……ああ、そうだな……」


思い返されるのは昨日の記憶、タキオルドのコックピットハッチを光子剣が切り裂いた瞬間の光景。ハッチの断面から覗いたコックピットに座っていたのは、間違い無く光達のクラスメイトのゼシア・タキオライトだった。


「……少なくとも、可能性はあったんだ。だからこそ監視という名目で交流していたのだろう?」

「監視……そうだったな、監視だったな……」

「お前……忘れてたのか?」


まるで監視で交流していた事を忘れていた様に返事をする光を見て、呆れた声を久遠は出す。そんな久遠からばつの悪そうに視線を逸らすと、後頭部を掻きながら光は口を開く。


「だってさぁ……あいつ、普通に学校生活楽しんでいただろ?」

「……そうだな」

「そんなあいつが敵だったなんて……ちょっとショックでさ……」


光と共に学食にした包みを打ち、体育の授業では縁と共に競い合い、部活では白部の大袈裟なリアクションに揃って苦笑いを浮かべたり、ゼシアとの学校生活を思い浮かべる光は思わず力無く笑う。


「可笑しいよな、最初っから監視目的だったのに、いつの間にかここまで入れ込んでるんだからよ」

「光……」


自嘲する光を見て久遠は何も言う事が出来ない。主だった監視は光が勤めていたとはいえ、久遠や縁もまたゼシアの監視を勤めていたのだが、彼女達から見てもゼシアは心から学生生活を楽しんでいた。


「あーもう!あいつにとって地球は敵なんだろ!?なのに何であんなに心から交流を持てるんだよ!」


自らのごちゃ混ぜの感情を吐き出す様に、頭を掻きむしりながら光が叫ぶ。もしゼシアが地球人と一戦を引いた関係を維持していたのなら、ここまで引き摺る事は無く、敵だったんだの一言で終わったのだろう。

しかし、ゼシアと交流のあった二人はあのやり取りが全て心からのやり取りだと感じ取れてしまった。心から繋いだ友愛が、光のゼシアに対する対応を大きく狂わせてしまっていた。

取り乱す光を目にしながら、久遠は何を言うべきか考える。フォトンガードナーの一員として割り切れと言えば、間違い無く光は拗れる。だが、何も言わずとも自問自答でどんどん深みへと嵌まっていってしまう。彼女自身もどう言葉をかければいいのか解らずにドツボにはまる。

立場や建前、あらゆるものがごちゃ混ぜになり頭が回らなくなっていった久遠は、無意識に一言呟いていた。


「だったら、聞けばいい」

「は……?」


久遠からかけられた言葉にさっきまでの取り乱しようが嘘の様に収まり、目を丸くして光は久遠を見つめる。久遠も自分が何を言ってしまったのか理解出来ていない様子であったが、不思議とスラスラと言葉が出てくる。


「考えたら私達はクロノイド制圧軍が、何故地球に侵攻して来ているのかその理由を知らない。もしかしたら、嫌々させられていて本心では和解したいと思っているのかも知れない」


それは、立場や建前等が無い久遠個人の考えだった。クロノイドである彼女は、何故クロノイドが何を目的に侵攻してくるのかずっと考えており、その願望が思わず口から零れ出たのが先の発言の切っ掛けだった。


「本当に、聞けると思うのか?俺達は敵同士だぞ?」


久遠が突拍子の無い事を言った結果か、ある程度落ち着きを取り戻した光がそう久遠に問いかける。敵味方に分かれている時点で困難な対話が、幾度も侵攻を阻んだ後の今に出来るとは到底考えられない。

そんな光の考えを否定するように久遠は首を振ると、その根拠を口にした。


「お前が自分で口にしたじゃないか、あいつは心から学生生活を楽しんでいたって」


光の隣に腰掛けながらそう言う久遠に、光は何とも言えない表情を浮かべる。地球での生活に心からの笑顔を浮かべていたからといって、それが話し合いに持ち込める要因であるかと言われれば首を傾げざるを得ない。


「それに、もし侵攻の理由を聞けて、その解決策を見つける事が出来れば……この戦いを終わらせられるかも知れない」

「っ!」


戦いを終わらせられる。その言葉を聞いた光は目を見開いて久遠へと顔を向ける。

久遠の言った言葉は、侵攻してくるクロノイド制圧軍を迎撃するだけの戦いに、一石を投じるものだった。


「それを成し遂げられたら、お前は胸を張って縁に勝ったって言えるんじゃないか?」

「……ずりぃぞ、その言い方……」


縁にも出来ない事を成し遂げる、それを久遠に言われてばつの悪そうに光は顔を逸らす。縁への対抗意識で戦う光にとって、縁ですら成し得ない事を成すという言葉は、奮い立たせるのに十分な力を発揮した。


「当然、そのつもりで言ったからな」

「……性格悪っ!」


狙って光を煽るように言ったと久遠が自白し、それに光が苦笑いを浮かべるとムッとした表情をした久遠に小突かれる。

その様なやり取りである程度調子を取り戻すと、光は鞄から携帯電話を取り出して電話帳を調べ始めた。


「ゼシアに電話をかけるのか」

「繋がるかは分からねぇけどな」


突然携帯を取り出した光を見て、彼が誰に電話を掛けようとしているのか気付いた久遠は確認を取り、それに頷いた光は電話帳に登録されたゼシアの携帯番号をタップして電話をかける。

数回に渡るコール音が鳴り響くと、鳴り止んだと同時にシステム音声が流れ始めた。


『おかけになった番号は、お出になりません』

「……やっぱり出なかったか」

「まあ、万が一繋がればオッケー程度だったし気にしてはいねぇよ……やっぱり地球には居ねぇか……」


繋がらなかった携帯を見て、そう呟きながら光は携帯を鞄へとしまう。口では気にしてないと言いつつも、表情にはしっかりと落胆の色が浮かんでいるのを久遠は見逃さない。


「そう気を落とすな……っと言っても、携帯が繋がらないとなると後は偶然の出会いに期待するしか無いな」

「無茶言うんじゃねぇよ、あいつがあの後何処行ったか分かってんのか?」

「むぅ……」


偶然の再会に期待するしか無いと久遠が言うが、光はそれに呆れた視線を向ける。タキオルドが時空転移ゲートへと消えた事を鑑みるに既にゼシアはクロノシアスへと帰っており、次に出会うとしたそれは戦場でしかない。

先程の電話は、万が一地球に居るかどうかの確認も兼ねてのものだった。


「けれど、再会が遠のくのが今は一番だな……」


光には悪いと思いながらも久遠がそう呟くと、光も小さくそれに頷く。現状縁が倒れ、戦闘チームはガタガタといってもいい。そんな状態でクロノイド制圧軍が侵攻してくるなら、一方的な不利を強いられる。


「でも、こういう時に限って出てきたりするんだよな」

「っ!馬鹿!昨日の縁の事を忘れ──」


不用意な発言をした光をたしなめんと久遠が口を開いた瞬間、二人の耳に晴天に似つかわしくない雷鳴が聞こえてくる。

反射的に顔をあげた二人は、今まさに開かんとしている時空転移ゲートを目にして目を見開いた。


「──っ!!しゃがめ!!」


時空転移ゲートが開きかけた瞬間光達は咄嗟に地面にうつ伏せになり、 時空転移ゲート開通と同時に起きた地震の振動に耐える。

揺れが収まるまでうつ伏せでいた二人が立ち上がり、時空転移ゲートが開いた場所の真下へと目を向けると、そこには一番最初に地球へと侵攻してきたクロノギアスが暴れ始めていた。


「ああもう!!今のはお前の発言のせいだからな!!」

「説教は後で聞くから!!今は急いで基地に向かうぞ!!」


光の不用意な発言がフラグとなって出てきたとしか思えないクロノギアスの出現に久遠が怒鳴ると、光はばつの悪そうな表情を浮かべて校舎内へと続く階段へと向かい、基地へと繋がる第三倉庫に向かって走り出した。


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