第9話
今回、ようやく待望のアレが出ます。
前回のあらすじ
進化したクロノギアスとクロノドローンの増援に苦戦する光達。
クロノギアス相手に縁が絶対絶命の窮地に陥ると、増援のクロノドローンを倒してきた光達の救援が駆けつけて来た。
「久遠……高坂……!」
「っ!?おいふらついてるが大丈夫か!?」
モニター越しに返事を返してくる縁の体のぐらつきに気付いた光が声を掛けると、縁は小さく笑みを浮かべると頷く。
「少しばかり休めばどうってことないさ……!」
「けどよ……」
見るからに強がりだと解る縁の態度に光は眉根を寄せる。そんな光に発破を掛けるよう久遠が口を挟む。
「……少しだけだが時間を稼ぐ、その間に持ち直せ」
「了解……!」
「……高坂、行くぞ」
「あ、おう……!」
光と共に縁が回復するまでの時間稼ぎを名乗り出た久遠に、縁は仕方無いといった風に頷く。
久遠もそれを見ると光に一声掛けた後クロノギアスの元へと向かっていき、巻き込まれた光も片膝を着くフォトンファイターを一瞥すると、久遠の後を追い掛けていった。
「先程は不意打ちで当てられたから怯みはしたが……」
「俺達の攻撃は全く通じねぇんだよなぁ……っと!!」
クロノギアスは自身に向かって来る二機に対して威嚇の咆哮をあげると、地面を走って来るフォトンランダー目掛けて尻尾の斧を振り下ろす。
光はそれを紙一重でかわして牽制としてパーティクルショットをクロノギアスに放つが、全て装甲に弾かれてダメージを与えられずに舌打ちを打つ。
「……極力奴に防御姿勢を取らせろ、装甲の無い箇所にパーティクルキャノンを撃つ」
「了解!!此方のは効いたら万々歳で撃ち続ける!!」
久遠も装甲に覆われていない場所を攻め所と見たのか光に注意を惹くよう指示し、光もそれに頷いてクロノギアス相手にパーティクルショットを撃ち続ける。
装甲で防げるとも攻撃に晒されている事に変わり無いクロノギアスは、足を止めるとフォトンランダーを破壊せんと尾をやたらめったらに振り回す。
「おおぉぉぉぉっ!!」
斧が掠りそうになるのを何度も避け、とにかくパーティクルショットを打ち続け久遠が認識から離れるように妨害する。
その甲斐あってかフォトングライダーはクロノギアスの後ろを取り、狙える装甲の無い箇所を探して飛んでいた。
「背中は尾から頭部まで装甲が続いている……四肢は付け根付近でパーティクルキャノンでは当たらん、だとすると……側腹部か」
久遠が背後からクロノギアスの様子を観察し、何処なら装甲が無いかを見るとパーティクルキャノンで撃ち抜けそうな場所を探して狙いをつける。
それと同時に偶然か意図的かフォトンランダーが久遠とは間反対の方へと逃げ始め、それを追うようにクロノギアスが追従すした。
(どちらでもいい……これなら……!)
久遠はそれを格好の好機と認識して機体を反転させて追いかけさせ、時折前屈みになって爪をフォトンランダーに突き刺そうとするクロノギアスの動きを観察し、どのタイミングなら二門とも当てられるかタイミングを図りながらレティクルを合わせる。
(…………………………っ!!今!!)
左右のパーティクルキャノンのレティクルがクロノギアスの側腹部を捉えた瞬間、クロノギアスは再び爪を振り下ろそうと腕を高くあげて、その瞬間逃さずに久遠はトリガーを引きクロノギアスの側腹部目掛けてパーティクルキャノンが放たれる。
クロノギアスがフォトンランダー目掛けて爪を振り落とそうとする瞬間、二つのビームが装甲に覆われていない側腹部に着弾し爆発を起こした。
「命中……!!」
「やったか!?」
着弾して起きた爆発にダメージを受けたであろうと見て、光と久遠は合流してクロノギアスの方へと振り向く。
そして爆煙の中より現れたクロノギアスを見て、光は頬をひきつらせ、久遠は小さく舌打ちを打つ。
「な、なあ……むしろ怒ってねぇか……?」
「中途半端なダメージが却って逆上させたか……!」
側腹部に受けたパーティクルキャノンのダメージにクロノギアスが咆哮をあげると、二機に向かって火炎放射を放つ。
二機は散開してそれを避けるがクロノギアスはそこで足を止めて火炎放射で攻撃し始め、接近して隙を作らす事が出来なくなり攻めあぐねる。
「くっそ!!炎が邪魔で行けねぇ!!」
「確実に私達を捉えている……遠距離から回ることも出来ないか……!」
フォトンランダーが行く地面は先の火炎放射で炎が立ち込め、僅かな隙間を縫おうにも尻尾を縦横無尽に振り回して近付けない。
フォトングライダーで空から向かおうにも、先の一撃を食らった警戒心からかクロノギアスはフォトングライダーから目を離さずに火炎放射を放って攻撃してくる。
攻め手に欠けて街の被害だけが拡大していく事に二人が歯噛みをし、どう戦えばいいのかを考える。その瞬間──
「だったら、僕がやる」
「「っ!!」」
二人の通信に縁が割り込み、二人がフォトンファイターが居た場所へと目を向けると既にそこにはフォトンファイターの影は無く、いつの間に現れたのかフォトンファイターは太陽を背にしてクロノギアスの元まで飛び上がると、火炎放射を吐いている顎目掛けて蹴りを放つ。
蹴りによって口を閉ざされたクロノギアスは自身に蹴りを見舞った下手人に向かって爪を振るうも、フォトンファイターはそれを宙返りしながら後ろに避け、フォトンランダーとフォトングライダーが止まっている所まで下がって来た。
「君達が時間を稼いでくれたお陰で、僕もこうして復活できた。二人のお陰だよ、ありがとう」
「縁……」
「……で、復活したはいいけどよ、どうするんだよ?お前も決定打無いのは一緒だろ?」
復活するまで時間を稼いでくれた二人に頭を下げる縁を見て安堵の息を吐く久遠とは対照的に、光はどうすれば倒せるのかを縁に聞く。
縁がそれに笑みを浮かべて口を開こうとした所で、三人以外の第三者が通信に割り込んできた。
「合体するのだ!!」
「な、何だ!?」
「今こそ三機の真の力を解放するために、合体するのだ!!」
「「了解!!」」
突然割り込んできた壮年の男性の声に光が驚きの声をあげるも、男は意に介せず言葉を続ける。
縁と久遠の二人は男の話を最後まで聞くと敬礼し、光を置いてけぼりに通信が終了すると二人は敬礼を止めて操縦へと戻ろうとして、光はそれに慌てて待ったを掛けた。
「待て待て待て!!え!?今の人誰!?それに合体って!?」
「ええい!!うるさい!!静かにしろ!!」
突然の事態に混乱して光が二人に問い掛けるも久遠の怒号で一蹴され、それに身を竦めると苦笑を浮かべた縁が説明する。
「元々フォトンシリーズは、合体を前提に作られてるんだ。合体すればあのクロノギアスであろうと倒せる!!」
「そ、そうなのか!!」
「ああ、そのために今から僕が合体のキーワードを叫ぶ、それと同時にコックピット左右のボタンを同時に押すんだ!!暴発しないために固めになってるから、力強く!!」
「横のボタン……これか!?」
「ああ、それだ……行くぞ!!」
光が合体の際に押すボタンを見つけたのを確認すると縁は頷き、集合した三機の元へと向かって来るクロノギアスを睨み付ける。そして息を深く吸うと、ありったけを絞り出してキーワードを叫んだ。
「超光合体!!!!」
縁の叫び声に合わせて久遠と光が腕を交差させ、各々のコックピット横にあるボタンを拳で叩き付ける様に押す。
ボタンが押されるとフォトンファイターのカメラアイが光を放ち、フォトンランダーの機首から光の道が形成されてその上を走り出した。
「うおぉぉぉぉっ!?」
突然動き出したフォトンランダーに光が驚きハンドルやアクセルを操作しようとするも、自動操縦になっており操作を受け付けない。その間にもフォトンランダーは光の道を走り抜き、その横をフォトンファイターが並走する。
「~~~~っ!?ジャンプ!?」
勝手に動くフォトンランダーに翻弄される光は途中で道が途切れているのに気が付くと、フォトンランダーはそのまま道から飛び出して宙を舞う。そして変化は起き始めた。
機首が九十度上を向き足となり、車体がコックピット前まで中心で左右に別れる。
左右に別れた車体がコックピット回りから伸び外に出ていた部分は下腿部、新たに出現した場所は大腿部となり、下腿部と足の間が伸びて足首となる。
コックピット横のウイングが変形してフロントスカートとなって、足から地面に着地するのに合わせてコックピットが地面と水平になり、フォトンランダーは巨大な下半身となった。
フォトンランダーの変形した下半身の着地と入れ替わるようにフォトンファイターが宙に跳び、大腿部が下腿部に格納される。
そしてフォトンランダーに向かっていき、車体後部がフォトンファイターの下半身を受け入れる様に接続ポイントを露にするとそこにフォトンファイターが納まった。
フォトンランダーが変形した脚でフォトンファイターが走り出すと、それにフォトグライダーが追従していき二機は揃って宙を飛ぶ。
宙を飛ぶフォトンファイターと重なるようにフォトングライダーがパーティクルキャノンの砲身を推進機に格納しながら移動し、背部のスラスターと重なる位置に来るとフォトンファイターは両腕を肩と水平に伸ばし、手が腕に収納されて腕も肩に収納される。
するとそれを待っていたかのようにフォトングライダーはスラスターへと近付き、機体下部とスラスターがドッキングされる。
合体と同時に両翼に取り付けられていた推進機が翼より離れ、再びパーティクルキャノンの砲身が延びるとフォトンファイターの肩と接続され、推進機より拳が出現して腕となる。
そして両翼がスラスターと接続されるとアームでフォトングライダーの中心部が持ち上がり、前に倒れ込むように中心部をフォトンファイターの胸元まで移動させる。
その際に分離した尾翼部は左右に割れると二本角を抱いた兜となり、フォトンファイターの頭部と合体する。
「超光機人!!」
三機のフォトンと名の付くメカが合体し、クロノギアスにも負けぬ大きさとなってシルエットが丸々と変わったそれは、眼前で拳を握ると迸るエネルギーを放出する様に腕を払う。
それに合わせて縁は今ここに現れた戦士を誇るように高らかとその名を叫んだ。
「フォトングラスト!!!!」
縁が名乗り終えると同時にそれ──フォトングラストは自らの存在を誇示する様に土煙をあげて地面へと降り立つ。
今ここに、人類を脅かすもの達より世界を守る巨人が誕生した。
「ほ……本当に合体した……!」
「フォトンリアクター、最大出力……縁!!」
「ああ……行くぞ、二人共!!」
縁の掛け声と共にフォトングラストが一歩踏み出し、一歩、また一歩とクロノギアスに近付いて行く。
クロノギアスはそれを見て火炎放射を放ち、フォトングラストはそれに直撃するも意に返さずに炎の中を進んで行く。
「すげぇ……さっきまでは食らったら終わりだったのに……!」
先程までとは比べ物にならない程の機体性能の向上に光が感嘆の声をあげると、フォトングラストは歩きから徐々に加速していき走りとなる。
放たれる炎をその身に受けても止まることは無く、クロノギアス眼前に迫ったフォトングラストは腕を振りかぶると全身を使ってクロノギアスの顔面に拳を叩き込む。
強化されて以来殆ど傷を付けることが敵わなかったクロノギアスに叩き込まれた一撃は、頭部を覆う装甲を歪ませてクロノギアスの巨体を吹き飛ばした。
「攻撃も通じている……これなら!!」
拳の一撃で吹き飛ばされるクロノギアスを目にして、縁はフォトングラストの拳を見つめ勝機を見出だすと倒れたクロノギアスに向かってフォトングラストを走らせる。
駆け寄って来るフォトングラストに気付きクロノギアスも起き上がると両爪を振るって迎撃してくるも、縁はそれを腕を抑え込んで食い止めるとがら空きの胴を蹴り飛ばす。
「フォトンライフル!!」
縁のコールと共に右のリアスカートからパーティクルショットが出現し、砲身が伸び持ち手が新たに展開されてフォトングラストが手に持つとそれは携行用の銃器──フォトンライフルとなる。
縁はモニターに表示されたレティクルにクロノギアスの右腕を捉えるとトリガーを引き、パーティクルキャノン以上の出力でビームが放たれクロノギアスの右腕部装甲を爪ごと破壊し、立て続けに撃った二発目で左腕部装甲と爪を破壊した。
両腕の装甲と武器を失い戦力が大幅に減少するクロノギアス、けれどその進撃を止めることはなくフォトンファイターに大打撃を与えた尾を振り回しながら接近し、フォトングラスト目掛けて凪ぎ払う。
数多の建物を巻き込んで襲い掛かって来た尻尾はフォトングラストの胴体に直撃するが、フォトングラストはそれにびくともせずに逆に尻尾を掴み取ってクロノギアスの動きを封じる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
縁は尾を持ち上げてフォトングラストを回転させようとすると、クロノギアスが抵抗して来るもフォトングラストのパワーはそれを凌駕してクロノギアスを引き摺り、回転の勢いが増していくにつれてクロノギアスの身体を浮き上がらせ、地面と水平になる程に回転すると勢いよく放り投げた。
投げられたクロノギアスは地面と勢いよく激突し、今までのダメージが効いてきたのか体の各所からスパークが迸り始め、立ち上がるもその動きは精彩を欠いている。
「今ならやれる!!光子剣、抜刀!!」
それを好機と見た縁がそう叫ぶとフォトングラスト胸部の翼を模したレリーフが外れ、持ち手が現れるやフォトングラストはそれを掴み取る。
刀身の無い剣を天へと掲げると青白い光で形成された両刃の刀身が現れ、クロノギアスへと跳躍すると上段に振りかぶった。
「光子剣、フォトン・ストライク!!!!」
縁の叫びと共に光子剣がクロノギアスへと振り下ろされ、一瞬の閃光と共にフォトングラストはクロノギアスの背後に着地する。
背後に着地したにも関わらずクロノギアスは振り向かずその場に立ち尽くし、中心線から一筋の光が走るとクロノギアスは左右に切り裂かれて爆発を起こした。
フォトングラストは光子剣を血振りするように振るうと刀身が消失し、柄だけになった光子剣を手にして爆発したクロノギアスへと振り返る。
「倒せたか……」
眼前に破壊されて動かなくなったクロノギアスを見てコックピット内で縁は安堵の息を吐くが、それに対して呆れた様子で久遠が縁に水を差す。
「全く……危なっかしいぞ。お前も、あいつも……」
「あはは……でも、光のお陰で色々と助かった所はあるからね」
「む……」
水を差してきた久遠に光の判断のお陰で助かったものもあると言われ、今苦しんでいる人達とフォトンファイターを秤に掛けて判断が遅れそうになったのを思い出し表情を歪める。
「…………ええい!お前も何か……」
「スー…………スー…………」
八つ当たり気味に久遠が会話に混じらない光に対して文句を言おうとして通信を繋ぐと、そこにあった光景に声が小さくなる。フォトンランダーのコックピットでは、疲弊したのかシートに身体を預けて眠りにつく光の姿があった。
「こいつ……」
「初運転初戦闘初合体と、色々と立て続けに起こったんだから疲れてるんだよ。今は寝かせておいて」
「…………フン」
眠る光に鼻を鳴らすと久遠は通信を切って縁との通信も切り、残された縁は微笑を浮かべながら操縦桿を握り締めるとフォトングラストが宙に飛ぶ。
そのまま沈み行く太陽を背にしてフォトングラストは星空へと消えていった。
「あり得ん!!我がクロノギアスが破壊されるなどとは!!」
「観測班!!映像は取れておるんじゃろうな!?今後のために確実に取っておくのじゃぞ!!」
作戦司令部にジェネルの怒号が響き渡り、シュタインが苛立ち混じりに自らの部下へと指示を飛ばす。
二人はロボットを圧倒していたクロノギアス・アンファの勝利を確信していただけに、それが撃破されるなど予想だしていなかったのだ。
「ええい……!!今回の作戦は皇帝陛下直々の命令なのだぞ……!それを失敗したのだと、何とおっしゃればいいか……!」
「……ふむ、映像は取れておるのじゃな。なら、今から儂も向かう」
作戦の失敗をクロノーア皇帝にどう報告すればいいのかを頭を抱えながら作戦司令部を出ていき、その後に続いて観測班が記録した映像をシュタインが受け取りに出て行く。
残されたリーリスは一人モニターを前にして佇み、最後に送られて来た振り返るロボの映像を見つめる。
「……随分と面白い事になりそうじゃないか……!」
そう口にしたリーリスの顔は、新しい玩具を見つけたようにしたなめずりをした笑みを浮かべていた。
合体バンクを描写するのが一番カロリー使った……。
一応この話で一節は終わりとなり、次の節に移ります。
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