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第4話

前回のあらすじ


光達が取材に行った幼稚園、そこの園長は縁と既知の人間だった。

取材を終えた光と久遠が集合場所に向かっている最中、二人の会話を盗み聞いて縁の家庭事情を知る事となった。

有岡幼稚園での取材を終え、その場で解散となったジャナ部の面々。白部は学校に報告の書類を提出しに行くと言って学校に戻り、花音とゼシアの二人は家の事情と言って一足早く戻って行き、光と縁、久遠の三人だけが残される。


「…………」

「…………」

「えーっと…………」


普段であれば何かしらの話をする三人であったが、縁と有岡の会話を盗み聞きしていた光と久遠が何も言わずに発する気まずい空気に支配され、縁は頬を掻きながら何も話を振れずにいた。


「お疲れ様……って、何だこの空気は」

「ちょっと僕にも分からないです……」


一言も発する事無く迎えの車の元へとたどり着くと、運転手も三人を包む空気の異様さに気付き何事かと問いかけてくるが、縁は分からないと首を振る。

二人がそんな話をしている間に光と久遠は先に車に乗り込み、首を傾げた二人も車に乗ってコインパーキングを出発する。

車内も光と久遠から発せられる気まずい空気に包まれ空気が重くなって行き、普段であれば色々と話を振って退屈な時間を盛り上げようとする運転手すらも喋らない状況に限界が来たのか、縁が意を決して二人へと話しかけた。


「二人共、何でそんな風に気まずい空気出してるの!?」

「いや、その……」

「むぅ……」


縁の問いかけに二人は言葉を濁して視線をさ迷わせるが、それが却って縁の苛立ちを増長させ、より深く問い詰める力を与える。


「取材に行く前までは何も無かったよね、取材先で何かあった?」

「「…………」」


取材先──有岡幼稚園での事を問い詰めると二人は揃って目を逸らし、そこで何かあったのだと確信した縁は更に問い詰めんと光に顔を寄せる。


「光……僕達はチームだ。チームである以上不和が見られるなら僕はそれを正さななゃいけないと思うんだ」

「……それ、前の戦闘で先走ったお前が言っていい事じゃねぇと思うけどな」

「いいや、僕だからこそ言えるんだ。あの時の僕みたいな窮地に陥ってほしくないからこそ、君達の不和を解決したい」


先の戦闘で二人との不和を残したまま一人先んじて出撃し、その結果無茶をして危うくやられそうになった縁からの心配の言葉に光は思わず折れそうになった。


「……すまん、久遠……こいつ梃子でも動きそうにねぇ……」

「……そうだな……」


思わず口から零れ出た久遠に対する謝罪の言葉、それを聞いて久遠も溜め息をつきながら頷き返す。これ以上誤魔化しは効かないと判断したのか、久遠も諦めの表情を浮かべている。


「それじゃあ、何があったのか教えてくれるかな?」


何が起きたのか話してくれると表情を緩めた縁は光から顔を離すと、光は言ってもいいのか悪いのか視線をさ迷わせているが、少しして意を決して縁へと目を向き合わせると何があったのかを縁へと伝えた。


「すまん、縁……お前と有岡さんの話、盗み聞きしてた……」

「え……?」

「……」


光の口から語られた、縁と有岡の会話の盗み聞き。縁は目を丸くして久遠へと目を向けると久遠も気まずそうに目を背け、彼の言った事が真実だと確信させられる。


「……何処から聞いてた?」

「……お前に両親が居ない所から」

「最初の方じゃないか、全く……」


光に何処から盗み聞きしていたのか聞くと、話の始め辺りの会話が出て来て縁は苦虫を噛み潰した表情で後頭部を掻く。

しばらく気まずい沈黙が三人の間を包み込むが、白状した様に縁が口を開いた。


「そうだよ、僕は孤児院の出なんだ。有岡先生は、その時の院の先生だったんだよ」

「それで旧知だった訳か……」

「うん、お父さんとお母さんが死んで、一人塞ぎ込んでた僕に、臆せず話しかけてきてくれたのが、有岡先生だったんだ」

「恩人との懐かしの再会ってやつか……どうだった?久し振りに会った感想は」

「……夢を叶えたんだなぁ……って思ったよ。昔に、将来の夢に関して話す事があってね、その時に自分の幼稚園を持ちたいって言ってたからね……」


縁が自分から語りだした事で、話を盗み聞いていた事に対する罪悪感が多少軽減されたのか、光や久遠は縁へと問いかけて行く。

それに縁が過去を懐かしむ様な表情で答えて行き、先程までの空気が嘘の様に軽くなるのを感じていた瞬間、車内から突然アラートが鳴り出す。


「な、何だ!?故障か!?」

「いや、このアラートは……!」

「お前達!!しっかり掴まってろ!!」

「え!?あ!?」


光が突如鳴り出したアラートに困惑する中、久遠はアラートの正体に感付き答えようとした瞬間険しい声で運転手が怒鳴る。

久遠と縁の二人は咄嗟に座席へと掴まり、理解の追いつかない光がワンテンポ遅れて座席を掴んだ瞬間、地面が揺れて車体が跳ね上がった。


「~~~~っ!!今の揺れ……まさか!?」


突然の揺れに目を回すもすぐに原因に思い至った光が窓を開けて空を見上げると、そこにはクロノイド制圧軍によって開かれた時空転移ゲートが開かれており、その真下には巨大な何か──クロノギアスであろう何かか鎮座していた。


「さっきのアラートは、時空転移ゲートが開く予兆を検知した音……!」


久遠も光の開けた窓へと顔を近付けて先程のアラートの正体を説明すると、光は固唾を呑んでクロノギアスへと目を向ける。


「急いで向かうぞ!!光、窓を閉めろ!!」

「は、はい!!」


運転手の指示を受けて光はすぐさま窓を閉めると、運転手はアクセルをベタ踏みして車を一気に加速させる。背後で今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出すクロノギアスを背に光達は滝音コーポレーションへと向かって行った。







「超光機人!!フォトングラスト!!!!」


滝音コーポレーションへとたどり着き、そのままフォトンシリーズに乗り込んだ三人は出撃と同時に合体してクロノギアスの前へと降り立つ。

周囲はクロノギアスが地面に着地した際の衝撃で破壊された建物以外目立った損害は無く、クロノギアスも初めて降り立った位置から動いておらず、その姿も相まって不気味さを感じる。


「何だ、あのクロノギアスは……」

「車輪……?」


眼前に鎮座するクロノギアスは、縦に短い円柱を横に倒した様な姿で、縁が呟いた様に一見すると巨大な車輪にしか見えない。

中心に境目が見える所から、二つの車輪を一つにくっつけた様にも見える形状にどうしたものかと攻めあぐねていると、突然車輪が境目から左右に広がり、車輪を繋ぐ軸に下半身が埋め込まれた人型クロノギアスの上半身が現れ、広域通信で聞いた事のある声が聞こえてきた。


「待っていたぞ!!フォトングラスト!!」

「お前は、ソルト!!」

「死んではいないと思っていたが、とうとう来たか……!」


広域通信で話しかけてきたソルトに縁達は前回のソルトとの戦闘で繋がったチャンネルに合わせて通信を繋ぐと、ソルトは僅かに言葉に詰まる様な反応をした後に広域通信を切り縁達の通信回線で宣言する。


「この前は不覚を取ったが今回はそうはいかん!!このクロノギアス・チャリオスティアの車輪に潰れるがいい!!」


そう叫ぶとソルトは人型の上半身を車輪に挟み込み、車輪が左右回転し始める。地面を抉って突撃してきたクロノギアスを縁は咄嗟に横に飛んで避けると、クロノギアスの進んだ場所が尽く車輪で潰されていった。


「く……っ!!フォトンライフル!!」


動くだけで被害をもたらすクロノギアスに縁が舌打ちすると、フォトンライフルを抜いてクロノギアス目掛けて撃つ。

しかし放たれたビームは回転する車輪に弾かれ霧散してしまい、再びクロノギアスが襲いかかってきた。


「正面からの攻撃は弾くか……珍妙な成りをしている割には、奴が豪語するだけの性能はあるという事か……!!」

「前が効かねぇなら横だ!!避けた瞬間か方向転換の際に撃て!!」

「解ってる!!」


正面からビームを弾かれるなら側面から当てればいいと光は言い、縁もそれを敢行せんとクロノギアスの突撃を避け、側面に目掛けてフォトンライフルの引き金を引く。

しかし放たれたビームは正面から当てた時と同じ様に弾かれてしまい、むしろ攻撃を当てた衝撃で車輪の前後が傾き、逆に車輪で殴り飛ばされる事となった。


「ぐあ……っ!!くそっ!!横も駄目か!!」

「直撃の際にスキャンを掛けた。側面の装甲は前に戦った防御力重視のクロノギアスの盾と同一素材だ」

「それじゃあビームも弾かれる訳だ……」


光達の脳裏に巨大な盾を装備した重装甲のクロノギアスの姿が思い出され、その盾の堅牢さを思い出して歯に力が入るが、同時に打開策も思い出す。


「だったらまた一点集中で突き破れば……!」

「いや、今回はそうはいかない……あんな高速回転する側面に突き刺すんだ、こっちが逆に持っていかれる……っ!!」


打開策として光が挙げた光子剣の一点集中も、高速回転するクロノギアスにはむしろ悪手だと否定しながら縁は突撃を回避し続ける。

一回一回回避する毎に街が破壊されてゆき、焦りが募る中どうにか打開策を捻り出そうと意識を向けていたせいか、無意識に回避動作が僅かに疎かになってしまった。


「そこだ!!」

「──っ!?」


無人機であれば避けられたであろう僅かな差、しかしソルトにはその隙は見逃されず僅かに遅れた回避に合わしてクロノギアスの突進方向を変える。

高速機動での突撃故に余り左右に動く事は出来ないがフォトングラストを捉えるには十分に曲がり、突撃して来たクロノギアスにフォトングラストは撥ね飛ばされた。


「「ぐあぁぁぁぁぁっ!!」」

「ぐうぅぅぅぅぅっ!!」


機体を襲う衝撃に三人は悲鳴をあげ、フォトングラストは吹き飛ばされて地面を削りながら倒れ込む。


「はははははっ!!どうだ!!数多の反乱分子を薙ぎ倒してきたチャリオスティアの一撃は!!」

「く……っ!!」


三人の悲鳴を聞いたソルトが高笑いをしながら、自らの駆るクロノギアスの性能を誇る。

縁は歯を食いしばって機体を起き上がらせるが、機体状況を表すモニターからはひっきりなしにアラートが鳴り響いていた。


「避け損なっただけでこのダメージか……奴が自慢するだけはある……!」

「こんなの何発も食らってられねぇぞ!!避けるしかねぇ……!」

「っ……そうだ「……っ!?待て!!」っ!?」


機体のダメージの大きさに何度も食らうのは不味いと判断した光がとにかく避ける様に言い、 縁もそれに頷こうとした瞬間機体のダメージを知らせた久遠より待ったの声がかかる。


「く、久遠……?」

「この近くに避難所がある、下手に避けるとそこが潰される危険性がある!!」

「「っ!?」」


久遠から告げられた衝撃の事実に光と縁は息を呑む。今までは避難所から離れた場所での戦闘だったためにある程度好きに動けたが、下手に戦場を広げるとなると避難所に被害が行くとなるとそうはいかない。

そして、そんな三人の都合を聞いてくれる様な相手では無いというのも、三人は既に知っていた。


「動かないなら、こちらから行くぞ!!」


起き上がるも動こうとしないフォトングラストにソルトがクロノギアスを反転させると全速力で突撃して来る。避けようものなら避難所に被害が行く可能性がある縁は避けるという選択肢を消され、舌打ちすると共に操縦桿を勢いよく前へと押し込む。


「ええい!!」


迫り来るクロノギアスの車輪の前に立ったフォトングラストは、腰を落として重心を下げると突撃して来るクロノギアスに向かい両腕を突き出すと、轟音と共に二機がぶつかり合う。

真正面からフォトングラストを轢き潰さんとするクロノギアスを、フォトングラストは真正面から受け止めていた。


「ぐうぅぅぅぅぅぅっ!!」

「無茶をする!!」


操縦桿にかかる抵抗に必死で抗う縁を嘲笑うソルト。現にフォトングラストはスラスターを吹かしてもクロノギアスに押し負け、車輪を受け止める掌から火花をあげ、地面に轍を刻みながら後ろへと下がっている。

見るからにパワー不足、そんな状況でフォトングラストは耐え抜いていた。


「……っ!!久遠!!俺達もやるぞ!!」

「なっ!?」


一人操縦桿を握り立ち向かう縁の姿に歯噛みした光がそう言いコックピットから操縦桿を出すと、久遠は目を見開いて光を見る。


「私達側の操作をフォトングラストが加算値として受け取るかは解らないんだぞ!?」

「馬鹿野郎!!こういうのは気合いなんだよ!!」

「……ああもう!!」


久遠は自分達の行為がプラスに働くか解らないと光に向かって 言うも、光からは一蹴されて根性論を押し付けられる。唖然としている間にも光は操縦桿を握り締め、苛立ちを混じりに久遠も操縦桿を握り締めると、力を込めて前へと押し込んだ。


「ぬがっ!!っおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「ぐうぅぅぅぅぅぅっ!!」

「光……久遠……っ!!っはあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


押し込んだ瞬間操縦桿を介して突撃して来るクロノギアスの勢いを感じ、二人は手を離しそうになるも歯を食いしばって耐えて押し込むのを再開し、縁も二人が手伝わんとしているのを感じ取ると、小さく笑みを浮かべた後再び吠えて操縦桿を押し込み始める。

するとフォトングラストのカメラアイが光を放ったかと思うと背部スラスターから勢いよく光の粒子が吹き出され、フォトングラストが後ろへと下がる速度がどんどん遅くなって行く。


「なっ!?」


相対するソルトもその変化に気付きペダルを床まで踏み込み車輪を最大出力で動かすが一向に変化は無く、フォトングラストの後退が完全に停止すると今度はクロノギアスの車輪が徐々に減速し始めた。


「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」


三人が揃って声をあげて操縦桿を押し込み、掌で前方から抑え込んでいた車輪をやがて縁を掴む様に持つとより一層車輪の減速に拍車が掛かる。

車輪を掴む掌からあがるが火花がどんどん小さくなっていき、遂には完全に車輪を停止させた。


「──っふん!!」


車輪が完全に停止するや縁はフォトングラストの右手を縁から外し、抜き手の形を取るとクロノギアスに向かって突き出し車輪を貫通させると、左手も抜き手で車輪を貫く。

車輪を両手で貫かれたクロノギアスは車輪を動かして抜け出そうとするも、それよりも早く貫く両手に光が灯る。


「光子爆砕!!フォトン・バンカー、ダブル!!!!」


車輪を貫く両手から放たれたエネルギーがクロノギアスの内で荒れ狂い、車輪から光が漏れ出るや爆発を起こすと、車輪と独立した作りとなっていた影響かフォトン・バンカーによるエネルギーが流れ込まなかったクロノギアスの上半身が、爆炎の中より吹き飛ばされた。


「ぐうぅぅ……っ!」

「っ!!縁!!」

「そこ……だぁ!!」


吹き飛ばされる上半身のコックピット内でソルトが呻き声をあげ、光が吹き飛ばされたクロノギアスを目にして縁へと呼びかけるや再び光の灯った右手でクロノギアスの頭部を掴み取る。


「終わりだぁ!!」


縁が吠えた瞬間流れ込んだエネルギーが、先程の車輪の様に隙間から漏れ出て大爆発を引き起こす。爆発の中より脱出ポッドの反応が無い事を確認した縁は、突き出したままの右腕を下ろした。


「はぁ……はぁ……」

「脱出ポッドの反応も無し……終わったぞ、縁……縁?」

「はぁ……はぁ……」


戦闘を終えたのにも関わらず荒い息を吐く縁に、光と久遠は嫌な予感が浮かび冷や汗が浮かぶ。その予感通り、前の戦闘後と同じ様に縁がそのまま気を失ってしまう。


「っ!?マジかよ!?」

「光!!操縦権を渡す!!私は医療班を手配してもらうから!!」

「お、おう!!」


再び気を失った縁に光は目を見開き、二度目とあって焦りつつも対処を行う久遠に促されて光はフォトングラストを帰還用の通路に向かって飛ばして行く。

縁の復帰戦は、再び原因不明の気絶という後味の悪い終わり方となった。


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