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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第8節・新たなる戦い
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第9話

前回のあらすじ


フォトングラストへと合体を果たすも互角の戦いを繰り広げるソルトと光達だが、ソルトのある一言が光の逆鱗に触れ暴走した光によりソルトは押し込まれる。

その後光は縁達の手により正気に戻り改めてソルトの駆るクロノギアスを打ち倒すが、肝心のソルトには逃げおおせられてしまった。

「──そうか、逃したか……」


ソルトの駆るクロノギアスとの戦闘を終え、味方により帰還を妨害されたソルトの行方を探すも見つからずに帰還した光達の報告を聞いた光平は、僅かな落胆の色を込めて報告にそう返事をする。


「すみません……僕達が気を取られたばかりに……」

「いや、まさか味方を切り捨てる様な真似をするとは私達も思わなかった。君達に責務は無い」


自分達がソルトから目を離したのが逃がした原因だと言い縁が頭を下げるが、光平はそれを手で制すとモニターを操作している職員に目配りをしてモニターの映像を切り替えさせ、先程の戦闘が終わった後の映像を映し出す。

フォトングラストの視線がソルトの乗る脱出ポッドにビームを放った時空転移ゲートへと向けられている間、ビームを翼に受けて飛行不能となった脱出ポッドが滝音コーポレーションがある山岳部とは異なる山の方へとフラフラと飛んで行くと、空中でその姿が消え去り、光達は目を見開く。


「消えた……!?」

「空中で光学迷彩を展開して姿を消したんだ。進行方向に人員を派遣して総当たりしているが、見つかる可能性は低いだろう」


光学迷彩を用いて逃げたソルトの姿を見て、光は拳を握り締める。あの時確実に討てていたら驚異を野放しにしなかったのだと後悔していると、小さく息を吐いた光平が光の前に立ち、彼の頭をポンポンと撫でた。


「余り力まなくていいんだ。君達のサポートをするのが私達の役割だからね」

「司令……子供じゃないんですよ」


頭を撫でられ光は目を丸くするも、状況を認識するとムッとした表情で頭に乗せられた光平の手を払い、そんな彼の姿を見て光平と縁は小さく笑い声を零し、それを聞いた光が更にムッとした表情を浮かべる。

そんな三人の様子を見て、話が進まないと判断した久遠が咳払いをして注目を集めると、光平に対して口を開いた。


「コホン……司令、実は一つ報告をしたい事があるのですが……」

「おっと……何だい、久遠?」

「光が縁からフォトングラストのコントロールを奪い取って以降、フォトンリアクターの出力が平常時を凌駕していて、それでなおかつ安定していたのですが……」


久遠が光平へと問いかけたのは、ソルトとの戦闘中で起きた謎のパワーアップについてだった。最初は光が無茶に動かした事でフォトンリアクターがオーバーヒートを起こしたのかと久遠は思ったが縁に操縦権が戻ってもリアクターの出力は下がらず、むしろ以前よりも安定していた様に思えた。

それを聞いた光平は僅かに眉をひそめるとすぐに表情を戻し、口許に手を宛てて考える素振りをする。


「……そうだな、その事に関しては博士と調査しよう。君達はもう戻って大丈夫だ」


光平はそう言うと博士へと連絡を取るために携帯を取り出し、それを見た縁と久遠は敬礼すると司令部より去って行く。

ただ一人光だけが司令部に残っていると、博士と話そうとしていた光平が手を止めて光へと声を掛けた。


「光君、何か用があるのか?」

「……俺に、クロノイド制圧軍との戦いに巻き込まれた犠牲者のリストを見せてください」


僅かに目を伏せるもすぐに光平と目を合わせ、はっきりとした口調でそう言って来た光に光平の眉が跳ねる。何処か否定的な様子を見せるその仕草に気付いた上で、光は言葉を続ける。


「ソルト相手にあんな啖呵を切った俺が、実際に戦いや襲撃で死んだ人達の事を知らないなんて、余りにも身勝手だと思ったんです」

「……それは本心か?」

「はい」

「……君の心に傷を残す事になるかもしれないけど、それでいいのか?」

「……はい。命と心の傷なんて、比べるまでもない」


光平の問いかけに光は目を合わせたままはっきりと答え、自らが傷付く事に対しても僅かに逡巡しただけですぐに答えを出して頷く。

それを見た光平は光の決意が本気なのだと理解すると、懐から一枚のメモ用紙を取り出し胸ポッケからボールペンを取り出すと意味の分からない文字の羅列を書き出した。


「トレーニングルームの一画に置いてあるパソコンを使えば、フォトンガードナーが把握している分の被害者の情報が纏められたファイルにアクセスする事が出来る。パスワードはメモに書いておいた」

「っ!……ありがとうございます!」


光平からメモを受け取ると光は頭を下げて司令部を出て行く。そのままトレーニングルームへと向かい部屋の奥にあるパソコン前に座り操作するとロックの掛かったフォルダを見つけ、光平から受け取ったメモに書かれたパスワードを打ち込むと、フォルダのロックが外れて開ける様になる。


「…………」


ロックが外れたフォルダにカーソルを合わせ、光は固唾を呑むと意を決してファイルを開きその中にあった『犠牲者一覧』と名付けられたファイルを開く。

そこには初めてクロノイド制圧軍が地球に侵攻してきた時から、ソルトの襲撃以前の侵攻までの犠牲者が死者負傷者問わずにクロノイド制圧軍の襲撃してきた日付毎に纏められていた。


「…………っ!」


黒字で名前が記された犠牲者の横には襲撃の際にどの様な被害を被ったのかが記されているが、赤字で名前が記された犠牲者には記述が無い。

表を読み進めて行くにつれて赤字が襲撃によって死亡した人物だと理解した途端、光は喉元に不快な何かが込み上げて来るのを感じ、机横のゴミ箱前に踞った。


「げえ……っ!ぅえ……っ!」


データ上とはいえ自らの行動が関与した人の死を認識し、耐え切れなくなった光はゴミ箱の中へと嘔吐する。しばらくゴミ箱を抱えて肩を大きく上下させて吐き出し続けると、呼吸もだいぶ落ち着き始めゴミ箱を手放して口許を拭う。


「駄目だ……まだ終わっちゃいねぇ……」


今まで認識していなかった被害者の情報を見て嘔吐したが、光の目に絶望の色は無く責務の色が強く出て、再び犠牲者について頭に入れようとパソコンの前へと座り犠牲者一覧に目を通し始める。


「光…………」


必死に犠牲になった人達を受け入れようとする光の姿を、トレーニングルームの扉の前で久遠が切なそうに見つめていた。







滝音市から外れた位置にある山岳地帯、生い茂る木々の影に紛れて一人の人影が街から離れる様に逃げ去って行く。


「はぁ……はぁ……」


街より逃げ去って行く男──ソルトはジェネルからの攻撃を受けた後、墜落して行く脱出ポッドの光学迷彩を起動して滝音市から離れた山岳地帯に着利すると逃げる様にポッドから抜け出て、自分を捕らえようと展開されたフォトンガードナーの部隊を撒くために脱出ポッドを自爆させてまで逃げおおせたのだ。


「くそっ……!!あいつら……!!」


ある程度ポッドの着陸地点から離れた場所にある洞窟へと身を隠したソルトは、苛立ち混じりに洞窟の壁を殴り付ける。

反乱分子討伐にて武功をあげ、地球侵攻における初の有人クロノギアス侵攻に選ばれた自分がこんな無様を晒す羽目になった事に、原因であるフォトングラストのパイロット達への苛立ちがひしひしと沸き上がっていた。


「落ち着け……ジェネル将軍は何て仰ってた……」


壁を拳で殴り苛立ちを多少抑えたソルトは苛立ちに支配される頭を振り払い、攻撃してきた後にジェネルが口にしていた言葉を思い返す。


「地球に居る諜報部隊と合流しろ、だったか…………っ!?誰だ!!」


間際に聞いた命令を反芻し、どう合流せんと洞窟の壁面に寄り掛かりながら考えていると、外の木々が揺らめく音が聞こえソルトは咄嗟にホルスターより拳銃を抜き音の聞こえた方へと突き付ける。

すると音が銃を突き付けた場所以外からも聞こえ始め、ソルトは代わる代わるに銃を巡らして警戒をすると木々の中からソルトに向かって何かが投げ込まれ、ソルトはそれを咄嗟に撃ち抜く。


「はぁ……っ!はぁ……っ!……軍用レーション……?」


投げ込まれた何かを撃ち抜き、爆発物では無かったと確認するとソルトはそれが何なのかを遠目から確認するとそれはクロノイド制圧軍で兵士に支給される軍用レーションだった。

クロノイド制圧軍の軍用レーションの保持者、それが近くに居ると判断したソルトは銃を下ろすと、木々の中から暗闇に紛れる様な漆黒のカラーリングのボディアーマーに身を包み、目元を暗視ゴーグルで覆うクロノイド制圧軍の諜報部隊が姿を現した。


「ソルト・アーリー兵長だな?」


諜報部隊の兵士達の中から、頭一つ背が低い声も僅かに高い未成年と思われる兵士がソルトの前に現れ本人かの確認を取り、見るからに不自然な光景に困惑するもソルトは本人だと頷く。


「ああ……」

「ジェネル将軍の名により、貴殿の回収に参った」


そう言うと小柄の男は背後に立つ諜報部隊の兵士へと目配りをすると、ソルトの姿を隠すための布を彼へと被せる。

視界が一部閉ざされ僅かに不快感を示すも、隠密のためだと文句を口にしないソルトを見るや、小柄の男は森の中へと入って行く。


「ついてこい」


小柄の男に続いて諜報部隊も森の中へと消えて行き、ソルトもその後へと続き彼等の隠れ家へと向かって歩き出した。







「……なあ、本当にいいのか?」

「ああ、僕がそう決めたんだ」


ソルトの駆るクロノギアスとの戦闘の翌日、放課後の常磐高校を光が困惑した様子でゼシアに話しかけがら部室へと歩く中、ゼシアはそれに意見を曲げないという意思を込めた目で答え、手元のプリントを握り締める。


「何度も言うが本当にいいのか?お前の留学だって短期なんだろ?他に入れる所もあるだろうに……」

「僕の事を気遣ってくれるのはありがたいけど、流石に度が過ぎるよ高坂君。これは僕が決めた事なんだから」


ゼシアの手にしたプリントへと目配りをした光が何度も考え直さないか問いかけるも、ゼシアはそれを鬱陶しげな表情で払い除け、光もこれは変わらないと確信し、小さく溜め息をつく。

そんなやり取りを行いながら二人が歩いているとジャナ部の部室前へとたどり着き、入口前でゼシアが深呼吸するのを傍目に見ながら光は扉を開けて部室へと入る。


「お疲れ様です」

「お疲れ様高坂部員……む、タキオライト少年もか」

「どうも、失礼します」


部室へと入って来た光を白部が出迎えると、光と共について来たゼシアに気付き声をかけるとゼシアはそれに頷く。

三人のやり取りで光とゼシアが来た事に気付いた花音達が、二人の方へと視線を向けると、二人は白部の元へと歩いて行った。


「今日は一体どの様な用件で来たのだ?もしかして、昨日クロノギアスの襲撃で読み損ねたフォトンガードナーに関する記事でも読みに来たのか?」

「それもありますが、今回は別の用件です」


白部の推測に小さく首を振るとゼシアは手にしていたプリントを広げて白部へと差し出し、光はそれを見ながら溜め息をつく。


「俺は何度か考え直す様に言ったんですけどね……どうしてもって事みたいです」


後頭部を掻きながらそう言う光に疑問を抱いたのか花音達は首をかしげ、白部が目を通しているプリントが気になり席を立ち覗きに行く。

そんな三人の事など露知らず、白部はプリントに書かれている内容を読んで行く内に目が次第に見開かれ、最後まで読み終わった頃には肩をもワナワナと震わせると大きな音を立てて勢いよく立ち上がった。


「タキオライト少年!!これは本当か!?」

「うわっ!?」

「なあっ!?」

「ど、どうしたんですか部長!?急に立ち上がって!?」


プリントを覗く前に突然立ち上がった白部に縁と久遠は驚きの声をあげ、花音が何事かと問いかけると、白部はゼシアに向かって彼が手渡したプリントを突き出す。

そのプリントの上部には、大きな文字で『入部届』と書かれていた。


「はい。僕が常磐高校に在籍している間、お世話になろうとおもいまして」


手渡した入部届が冗談でもない本気のものだと告げられると、縁は苦笑いを浮かべ、久遠は呆れた様な溜め息をつき、花音はぎょっとした表情でゼシアを見る。


「ちょ、ちょっとゼシア君!?考え直さない!?こんな所で短い留学期間棒に振るより、全うな部活はあるのよ!?高坂もほら!止めてあげて!」

「何度も止めたっつーの……やっぱそうだよなぁ……ゼシア、今からでも遅くはないからやっぱり無しって言えって」

「随分な物言いだなお前達……!」

「あ、何かこのやり取り見覚えある」


ジャナ部への入部を考え直させようとする光と花音、そんな二人に青筋を浮かべる白部といった見覚えのある光景に縁は思わず吹き出す。


「これは変えられないよ、僕が入るって決めたのだから……それで、入部届は受理されましたか?」

「今から行こう!」


光と花音の入部取り消しの催促を切って捨て入部した事になるのかゼシアが問うと、入部届を学校側に受理させるために白部が職員室へと駆け出す。彼の後ろ姿を見てもう駄目だと言いたげな溜め息をつくと、光はゼシアへと問いかけた。


「なあ、本当によかったのか?」

「いい加減くどい、僕の選んだ事だから君はもう気にしなくていいんだ」

「そうは言ってもなぁ……」


後頭部を掻いてゼシアのジャナ部入部に否定的な態度を示す光にゼシアはムッとするも、それを振り払う様に首を振ると光に向かって右手を差し出してくる。


「それよりも、しばらく同じ部活の仲間になるんだ。よろしく、高坂君」

「…………」

「……高坂君?」


握手のために右手を差し出されたが、光は何処か眉間に皺を寄せて気難しい表情を浮かべ、その事に気付いたゼシアがどうしたのか首を傾げると光が小さく口を開く。


「前々から思ってたけどよ……君付けが慣れねぇな。普通に呼び捨てでいいわ」

「──っははっ!そうさせてもらうよ、高坂」

「……おう」


君付けされている事の無図痒さを光は告白し、先程までの気難しい表情がそれが原因だと知るとゼシアはキョトンとして、思わず吹き出す。

その後改めて呼び捨てと合わせて握手のために手を差し出されると、何処か戸惑いがちに光も右手を差し出し握手をした。


この話にて第8節は完結となり、次回より第9節が始まります。




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