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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第7節・一人じゃない
60/150

第6話

前回のあらすじ


前回の戦闘でオーバーホール中のフォトンランダーとグライダーを目にして余りの惨状に言葉を失う光達。

そんな彼等を今一番忙しい立場の筈の博士が司令部へと呼び出した。

「…………は?」


司令部に入った光達を出迎えた光平は、博士と共に何故三人を集めて話をしたかったのか、その理由を説明する。

それを聞いた三人は言葉を失い、ようやく零れ落ちた言葉は光の理解が出来ないといった様な声だった。


「済みません、もう一度説明してくれませんか……?」


おずおずと光が手をあげて二人に再度の説明を要求すると、光平はそれに小さく頷くと再び説明をし始める。


「君達が相対して来たクロノギアス……その進化態と思われる姿は、正しい意味では進化態と呼ばれるものでは無かったんだ」


そう光平が口にすると司令部のモニターに今まで光達が相手にして来たクロノギアスの映像が映し出される。

前回の戦いでも相手をした白兵戦に特化したクロノギアス、全身に重火器を装備した射撃戦特化のクロノギアス、四つの大型スラスターを装備した高機動型のクロノギアス、重装甲の防御力に特化したクロノギアス、水中戦特化や分離・合体等の変わり種はモニターに無く、時空転移ゲートからの光を浴びて進化したクロノギアスが映し出されていた。


「先の戦闘で戦ったクロノギアス……残骸から分析した結果、君達が最初に戦ったクロノギアスと同型である事が判明した」

「いや……見た目ほとんど一緒ならそうでしょうよ」

「そう、ほとんど同一なんだ……ならば進化前のあの姿は何だと思う?」


再び映像が切り替わり、クロノギアスの姿が進化する前──時空転移ゲートを越えて地球へと降り立った姿へと変更される。多少骨格に差異はあれど、どれも似通った姿をしている。


「何って……初めて地球へ来た時の姿でしょう?ここから戦闘してさっきの姿に進化する訳で……」

本当にそうなのかな(・・・・・・・・・)?」


光平から問われた事に光がそう答えると、光平はそれに疑問を抱く様な口振りで言う。

そんな光平の口振りに光も思わず眉を寄せ、光平へ何故そう思ったのか答える。


「本当に……って、そうとしか言えないでしょう?どいつもこいつもあの姿から進化して行ってるんですから……」

「じゃあ、これはどう説明するんだい?」


そう光平が口にすると再びモニターの映像が切り替わる。それは前々回に戦った分離・合体するクロノギアスの姿だった。


「こいつが一体何を?」

「このクロノギアスは三十二機の戦闘機となって時空転移ゲートを越えて来た。そして戦闘の際には合体し、進化態相当のパワーを発揮した……そうだよね?」


光平の確認に光達は頷く。ほとんど分離した状態から上半身だけを合体させて奇襲して来るといった戦闘スタイルだったが、最初の合体状態のパワーは進化態に引けを取らない程強力だった。


「それじゃあ聞くけど、何でこいつは戦闘機に分離してやって来たのだろうね?」

「……それがこいつの特徴だからでしょう?そうでなきゃあそこまで戦闘で分離・合体を駆使しませんって」


戦闘機に分離した状態で時空転移ゲートを越えて来た事を疑問視する光平に、光はそれがそのクロノギアスの特徴だからと答えるが、そこで今まで話を聞いているだけだった縁が口を挟む。


「……いや、分離・合体を駆使するならそれこそ初見での方が通用する。目の前で突然分離させられた方が驚きが強いからね」


そう顎に手を宛てながら、分離・合体能力を最大限に活かすならを縁は考えて言う。光も縁の話を聞いて、合体状態の姿で現れた後に戦闘中に分離され戦闘機に翻弄される姿を思い浮かべ、縁の言った通りだと納得するが、それと同時に一つの疑問が浮かび上がる。


「いや、だったら何でわざわざ分離した姿で出て来たんだ?」

「そう、そこが謎だった。博士もその事に疑問を抱き、今まで君達が戦って来たクロノギアスを再度分析してその結果、戦闘中のクロノギアスの変化は進化ではないと確信したのさ」


再び映像を進化態と呼ばれていたクロノギアスのものへと戻した光平がそう言い、まだどういう訳なのか理解出来ない光がおずおずと手をあげて問い掛ける。


「それじゃあ、今まで俺達が進化態って呼んでたあの姿……あれは一体何なんですか!?」

「進化態ではないのなら答えは一つ、あれこそが本来の姿なんだ」


今まで戦っているクロノギアスが進化したものだと思っていた姿が、あくまで本来の姿であると明かされて驚愕する光達三人。そんな三人を他所にモニターの映像を変化する前──全体的に貧弱な姿のクロノギアスへと切り替えながら光平は言葉を続けた。


「だとしたらこの姿は一体何なのか、変化した後の姿が本来の姿であると知ると一つの見方が出来る……これは、転送するために弱体化させたんだよ」

「転送するための……」

「弱体化……」

「そう、本来のクロノギアスから地球での侵攻を行える最低限の部分を抽出し、転送したのがこの姿さ」


そう光平が言うとモニターの映像が再び切り替わり、クロノギアスが地球へと出現した時の映像が映し出される。

上空に開いた時空転移ゲート、そこから放たれるビームが地上に当たると円錐状に広がって行き、その中で光がクロノギアスの姿を形作り実態を構築して行く。


「今まで私達が進化と思っていた現象は、転送する際に削ぎ落とした本来の機能を後追いで転送していたに過ぎなかったんだ」

「あのクロノギアスが分離した状態で地球へと転移して来た理由も、分離した状態なら時空転移ゲートで送れる一機分のキャパシティに収めるためじゃろう」


博士が前々回のクロノギアスがわざわざ分離状態で来た理由をそう推測し、光達もその推測に内心納得がいく。でなければ先程縁が述べた様な奇襲戦法を捨てて地球で合体する様な事はしないはずだ。

しかし、そこまで二人の話を聞いていた光がふとある事──先の戦闘ではいきなりフルスペックで転送されて来た事──を思い出して、二人に問い掛ける。


「じゃあ、前回の戦闘でいきなりフルスペックでクロノギアスが来たのは……」

「おそらくクロノイド制圧軍の保有する時空転移ゲートが強化されたのだろう。今後、クロノギアスはいきなりフルスペックで来るだろう……三人共、心して掛かってくれ」

「「了解!」」

「りょ、了解……!」


光平からの改めての指示に縁と久遠はすぐさま、光は僅かに遅れて了承の意を示す。それを見て光平と博士は小さく頷くと力が入っていた表情を緩め、手を叩いて口を開いた。


「それじゃあ、改修が終わるまでは光と久遠の二人はシミュレーターで改修後の二機に慣れててほしい。光は今の所ただ一人戦える人間だ、医務室で体の状態を確かめておくように!」

「「「了解!」」」


光平の指示に頷いた光達は敬礼すると司令部を出て、各々目的地へと向かって歩いて行く。


「それじゃあ、僕は此方だから」

「おう、検査終わったら後で合流な!」

「解った!」


道中でトレーニングルームと医務室へと別れ、一人医務室へと向かって行く縁にそう言って光が手を振り見送ると、縁も頷いて手を振り返す。


「それじゃ、俺達も行くか」

「ああ……」


廊下の奥へと消えて行く縁の背を見送り、光が久遠へ振り返りトレーニングルームに行くよう告げると久遠は何処か翳りを見せながらも頷く。

そんな彼女に僅かに違和感を覚えながらも光は彼女と共にトレーニングルームへと向かっていると、久遠が光の袖の裾を引っ張って来た。


「久遠?一体どうしたんだ?」

「……少し、話したい事があるんだ」


そう言うと久遠は光の手を引いて走り始め、光は彼女に手を引かれるまま何事かと問い掛ける。


「お、おい!何か話すんじゃなかったのか?」

「ここだと聞かれる可能性がある。誰にも聞かれそうの無い場所へと向かうんだ」


困惑する光に久遠はそう言うと走る速度を上げ、そのままトレーニングルームへと駆け込む。

そしてシュミレーターを操作してハッチを開けるとその中に光を放り込み、自分も入ってハッチを閉じた。


「……こういう所じゃなきゃ、言えねぇ話なのか?」


密閉されたシュミレーターの中、本来一人で使用する事前提の作りのシュミレーター内は狭く、光と久遠は密着した状態で中に入っている。

普通な思春期男子であればドギマギする様な状態だが、久遠の様子から光はそんな事を思う余地無く真剣な眼差しで久遠へと問い掛けると、久遠はそれに頷き口を開いた。


「フォトングラストのメインパイロットが、縁から変わる可能性がある」

「は?…………はあっ!?」


久遠より告げられた事に光は一瞬思考が停止し、再起動して改めて言葉を反芻した瞬間目を見開いて大声をあげる。

余りの大声に顔をしかめる久遠の事など気付かずに、光は混乱のまま口から言葉が流れ出る。


「は?パイロットの交代?フォトングラストの?しかもメインパイロットって……縁が!?」

「そうだ」


フォトングラストのメインパイロット──フォトンファイターのパイロットが縁から変わると聞いて混乱する光に、その事が事実であると頷く久遠。

その事が到底信じられない光は狭い空間ながらも久遠の両肩を掴み、詰め寄って問い掛ける。


「久遠、お前それを何処で聞いたんだ!?」

「昨日司令と博士の通話を偶然盗み聞きした」

「……本当、なんだな?」

「私はこんな冗談を言う様な質ではない」


久遠が自分でも言った様にこんな冗談を言う性格ではないと知る光は、彼女の言った事が事実だと受け入れる。しかし同時に一つの疑問も浮かび上がった。


「何で縁が交代するんだよ。こういうのってサブパイロットの俺達から外されるものだろ?」

「やはりお前もそう思うか」


光の疑問に久遠がそう呟く。彼女も同様の考えで、何故いきなりメインパイロットの縁が外されるのかをずっと考えていた。そしてつい先程一つの手掛かりになりそうなやり取りが行われていた事を思い出す。


「縁が受けている身体検査、あれが怪しい」

「身体検査って……今受けてるやつか?あれ、今あいつしか戦えないから体崩されちゃいけねぇからって名目のやつじゃ?」


光の言葉に久遠は頷くが、逆に光は首を傾げる。今縁が受けている身体検査は戦える人手が一人しか居ないが故に、何かあったら終わりだからこそ未然に防ぐためのものであると光平の話から光は思っている。


「名目上はな……けれど、それ以外に何かあると私は見ている」

「何かあるって……あいつが戦えなくなる様な何かがか……?」


光の疑問に久遠は頷くが、それを見て光は思わず目を伏せる。彼の戦おうとする理由は縁に勝ちたいという思い、縁に戦いを任して一人後ろに下がるのをよしとしない負けず嫌いが、光を戦いへと駆り立てていた。

それが縁の離脱という形で終わる事に光は何処と無く釈然とせず、そんな彼の心情を察したのか久遠は励ます様に頭を撫でる。


「縁が戦闘の負担で消耗しつつあるのなら、私達がより一層活躍する事で支えればいい。そうだろう?」

「……っ、頭撫でるんじゃねぇ」


気落ちしていた事がバレているだけでなく、子供を慰める様に撫でられた事に光は思わず眉をひそめ腕を払うも、久遠の言葉に反論はしない。彼も縁が交代する理由が戦闘に対する消耗なら、自分達が活躍してそれを抑えればいいと考えたからだ。


「それより、そろそろこの話は終えた方がいいんじゃねぇか?」

「……っと、そうだな。結構話し込んだし、縁が何時来てもおかしくはない」


微妙な空気になったのを払拭する様に光がそう告げると、久遠もその通りだと納得して密着した状態でハッチを開かせる。

空調は効いていたが二人分の体温で蒸れた空気が外へと放出され、若干汗ばんだ二人の体を冷えたトレーニングルームの空気が包み込み二人は揃って息を吐く。

その後久遠が先にシュミレーターから抜け出てトレーニングルーム内の更衣室へと入って行った瞬間、トレーニングルームの扉が開いて縁が中へと入って来た。


(────っ!!あっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!)


縁がトレーニングルームに入って来た瞬間、光の体からどっと冷や汗が流れ落ちる。もし縁がやって来るのが十秒程早ければ、ハッチが開いて汗ばんだ光と久遠が密着したまま姿を現している現場にかち合い、光が社会的に死ぬ所だった。


「光?そんなに汗かいてどうしたんだい?それに私服でシュミレーターに入ってるし」

「い、いや、何でもない!ちょっと私服でのシュミレーションをやってただけだ!」


私服でシュミレーターに入って汗を滝の様にかいている事を縁に突っ込まれた光は、慌ててそう言って誤魔化す。光の最初の出撃は常磐高校の制服での出撃だった事もあれば、何時でもパイロットスーツに着替えている余裕がある訳では無いと知る縁はその誤魔化しに僅かに首を傾げるもすんなりと受け入れる。


「そっか、それじゃあ着替えようか。此方に来る途中で博士から今日の分のシュミレーションのプログラムをもらって来たんだ」


そう言って縁は懐から一枚のメモリーカードを取り出す。話の流れからしてあれが博士の用意したシュミレーションプログラムだと気付いた光は、頷くと男性用の更衣室へと縁と共に入って行く。

その後着替え終わった久遠と共に三人はシュミレーターを起動させ、博士の用意したシュミレーションを全て終わらせるまでトレーニングを行った。


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