表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第5節・明かされた秘密
42/150

第6話

前回のあらすじ


縁が海底より発見した痕跡から海中から何かをクロノドローンが運び出していたと解析された光平は、国連に討伐指令を打診しに行く。

その日の夜に白部によって叩き起こされた光は気分転換に散歩していると、見た事の無い少女と出会った。

海中から飛び出した少女が巻き起こした水飛沫が全て海へと還り、少女の姿を月明かりが照らし上げる。

夜空を映し出す夜の海に照され輝くシアンブルーの長髪、その隙間から見える整った顔立ちの中でも一際輝くエメラルドグリーンの瞳、瞳の色と合わせたかの様な同色のチューブトップの水着を身に纏った少女は、景色と相まって幻想的な美しさを醸し出していた。


「……………………」


ここにはフォトンガードナー関係の人達と白部と花音しか居ない筈なのに全く見覚えの無い少女に対する不信感より、少女の美しさに光は魅入られて言葉を失う。

少女の美しさに惹かれ花に募る蝶の如くフラフラと光は少女に向かって引き寄せられるが、その際に掴んでいた釣り場の手摺が軋みをあげた。


「っ!?誰だ!!」

「な!?どわあっ!?」


光が立てた音にはっとなった少女が音の出所──光の居る釣り場に向かって声をあげる。突然の出来事に同様に正気に戻った光だが、突然声を掛けられた驚きが勝って手摺を掴んでいた手を離し、足を釣り場から滑らせて海へと落ちてしまう。


「もがががが……!?」


突然のアクシデントと着水してすぐに水を吸って重くなった衣服が体に纏わり付き、海面へと出ようとする彼の動きを阻害する。


「も……がっが──っ!?」


想定外の連続で普段通りに動く事が出来ない光は、がむしゃらに動いた反動で右足をつってしまいもがく体が固まる。そのまま溺れそうになってしまった所を、先程まで遠くに離れていた筈の少女が光の元に来て、彼の体を抱えて海面へと上場していった。


「ぷはっ……大丈夫か!?」

「ぶはっ……ぜぇ……ぜぇ……し、死ぬかと思った……」


少女に抱えられたまま光はパニックで荒くなっていた呼吸を整えながら、つった右足の感覚を確かめる。

そして泳げるまで調子が戻って来ると、光は少女から離れて自分の足で泳ぎ出す。


「ごめん、ありが……と……」


光は自分を助けてくれた少女に対して礼を言おうと改めて少女の方へと目を向けるが、礼を言う口は少女の顔を見るや感謝の言葉を途中で止め、少女も顔がバレた事に慌てて光から離れようとする。


「ま!待て!!」


けれど光は離れようとする少女の腕を掴んで強引に引き留め、彼女とほとんど同じ顔を持つ少女の名前を口にした。


「滝音……なのか……?」


光がその名を告げると、少女は抵抗するのをピタリと止める。その行動が眼前に居るのが久遠だと確信付けた光を他所に久遠はゆっくりと光へと振り返る。

その後何とも言えない沈黙が二人の間に流れたが、やがて少女──久遠が口を開く。


「……何時までも泳ぎ続けるのはきつい……向こうで話そう」

「お、おう……」


話の場所を変えようとする久遠に光がそう頷くと、久遠は光の手を引いて浜辺に向かって泳ぎ出した。






「あ゛ー……後でもう一度着替えねぇと……」


久遠に手を引かれて浜辺へとたどり着いた光は、陸へと歩きながら嫌そうな表情で服を絞る。

絞る度にボタボタと服から海水が溢れ出て、何度か絞ると埒が明かないと言いたげに溜め息をつき、先に浜辺で座り込んでいた久遠の元へと行く。

座り込んで海を眺める久遠の隣に光も腰を下ろし、二人の間に何とも言えない沈黙が漂い始めると光は慌てて話題を切り出した。


「なあ滝音、その髪って……いや、髪だけじゃなくて目もだけど……」


勢いに任せて光は聞きたいと思っていた事に踏み込み、それに久遠が沈黙する。そんな久遠の反応を見てまた話題の選択を間違えたのか光が内心で頭を抱えていると、ポツリと久遠が口を開いた。


「……これが、私の素なんだ。普段は髪は染めて、目はカラーコンタクトを入れて誤魔化してる」

「あー……プールの授業全部見学だったのはそういう……」


髪を染めていたと聞かされて、光の脳裏にプールの授業が思い返される。プールの授業を今のところ行われた授業全部見学している事に、そんな理由があったのかと光は検討違いな納得をする。


「っていや待て、それが地毛って……それじゃあまるで……」


そして久遠の発言から今の髪こそが地毛で瞳も今が素だと知り、地球上では自然にはあり得ない髪色に目を見開く。

地球上では自然に生まれる様なものではない髪色や瞳の色をした種族を知る光には、今の久遠の姿はまるで──


「そうだ……私は、クロノイドなんだ」

「────」


久遠からのカミングアウトに光は口を開いたまま呆ける。そんな光の反応に久遠が珍しく小さく笑うと、再び海に浮かぶ月を見つめる。


「少し、昔話をしようか」

「昔……話……?」

「今から十五年前、この島にまだ名前がついていなかった時の話だ。この島の上空に突然隕石が落下して来た」


隕石落下という突拍子の無い話から始まった昔話に、始まりのインパクトに突っ込みを入れそうになるもそれを堪えて久遠の話へと耳を傾ける。


「まるで何処からともなく現れたその隕石に国は対応に遅れて、結果隕石はこの島に落ちた。けれど、ある反応を元にこの島へと向かっていた集団が一つあったんだ。

突然現れたの当然だ、その隕石は時空を越えて現れたのだから。けれど、時空転移ゲートの反応を観測する技術を持った人達……フォトンガードナーの原点と言える地球人と亡命して来たクロノイド達の集まりが、時空転移ゲートを越えてやって来た漂流物の確保に来たんだ。

当初は亡命して来たクロノイドと思い保護しに来たつもりだったのだろうけど、そこにあったのは当時の……いや、今の地球人の手には余る代物だったんだ……大気摩擦で燃え上がっていたのにも関わらず表面が煤けただけに留まり、何のクッションも無く自由落下で地表に落下したにも関わらず傷一つ負っていなかった機動兵器が墜落してたんだからな」

「クロノシアスからの、機動兵器……」


久遠の口から語られた光来島に落下して来たという漂流物の正体を告げると、光は思わず固唾を呑む。

フォトンガードナーの前身となる組織によって確保されたとはいえ、それがもし他の国に運ばれていたと考えると、ろくな未来が見えなかった。


「彼等はその機動兵器を回収し、秘密基地にてコックピットの解放を行った。そこには……まだ一歳を過ぎたばかりの一人の子供がスリープカプセルに入れられて乗せられていたんだ」

「っ!?」


機動兵器の中に乗っていたという子供の話を聞いて、光の頭に電流が走る。十五年前に来訪した一歳の子供、もしその子が生きて齢を重ねていっていたら、今は光達と同い年になっている。

そして光の眼前には、その条件に合致する人が居る──!


「まさか、お前は……」

「……そう、私がその機動兵器に乗っていた子供なんだ」


光が思い至った通り、久遠はクロノシアスから機動兵器に乗せられて送り込まれた子供だった。その事を告げた久遠は光の視線から逃げる様に体を捩らすと再び月を見ながら話し始める。


「その時に私は総司令……父さんに拾われて、久遠という名前を貰い、ここまで生きてこれた……」

「滝音……」

「クロノイドである私が戦うのは、父さんへの恩返しなんだ。父さんは、私には戦ってほしく無かったみたいだけど、私がそれを選んだんだ」

「…………」


久遠の戦う理由を聞いて光は言葉を失い、ただただ久遠を見つめることしか出来ない。そんな中、光はやっとの思いで一つの言葉を捻り出した。


「お前は……それでよかったのか?」

「いいさ、クロノシアスでの事なんて何一つ覚えていない……実の両親の顔さえもだ。それに……私が守りたいと思うのは、父さんが生きるこの地球なんだから」


久遠の戦いに対する覚悟を聞き、今度こそ光は言葉を失う。そんな光を見て、久遠は小さく笑うと砂浜から立ち上がった。


「……少し、話し過ぎたか。そろそろ戻らないと明日に響くぞ」

「あ……さ、最後に一つ!」


そう言うと久遠は光から離れて、自らのコテージへと戻ろうとする。そんな久遠を光は咄嗟に呼び止め、呼び止められた久遠は歩みを止める。


「お前のその事については……どれだけの人間が知ってるんだ?」

「そうだな……少なくともフォトンガードナー設立初期の人達は確実に知ってるな。けれど、それ以外に知ってる人は居ない……縁だって知らないんだ」

「そ、そうなのか……」


縁すら知らない秘密を突発的な事故で知る事となった光。その内心には何処か縁に対して勝ち誇った何かがあった。


「……念のために釘を刺しておくが……言うんじゃないぞ?」

「わ、判ってるって!」

「それならいい……お休み、高坂」

「ああ。お休み、滝音」


最後にそう告げて小さく久遠が微笑むと彼女は今度こそコテージに向かって歩き出す。光はその背を見送り、彼女の姿が見えなくなった瞬間再び海へと向き直って頭を掻く。


「とんでもねぇ秘密知っちまったなぁ……」


博士から味方のクロノイドが居ると前もって説明されていたとはいえ、共に戦っている仲間に敵対しているクロノイドが居た事は光に大きな衝撃を与えた。

それでも嫌悪感が出るかと言えばそうではなく、何とも言えない想いが光の心に渦巻き始める。


「…………あーもう!俺も寝よう!」


自分の心すら訳も分からなくなりそうになった光は頭を振って混乱を追い払うと、浜辺から立ち上がり久遠と同じ様に自分のコテージに向かって歩き出した。






(結局一睡も出来なかった……)


翌朝、目の下に隈をこさえた光がゲッソリとした様子で朝食の場に向かって歩いて行く。そんな見るからに不調そうな彼の様子に白部がおずおずと声を掛ける。


「た、高坂部員……大丈夫か?」

「何ですか部長……」

「いや……見るからに寝不足だから何かあったのかと……」


光の様子を心配してくる態度は、平時であったら喜ばしいものだっただろう。けれど、光にとってはどうしても溜め息しか出て来ない。


「俺が寝不足なの、部長の寝相の悪さで起こされたから何ですけど……!」

「っ!?そ、そうだったのか!?それは済まない事をした……!」


苛立ち混じりの声でそう言うと、白部は顔を青くしてすぐに頭を下げる。半ば苛立ち混じりの八つ当たりである事を自覚していた光は、それを見ると溜め息をついて歩く速度をあげる。

白部がその後を慌ててついて来て食堂へとたどり着くと、昨日の二の舞にならない様に先んじて朝食を皿に乗せ、食べる場所を探して歩き回っていると、縁と花音、そして久遠の三人が同じ席に就いて朝食を食べているのが目に入った。


「っ……」

「?どうした高坂部員、急に立ち止まって……」


久遠を目に入れた瞬間、昨夜の事を思い出した光は思わず足を止め、唐突な急停止に訝しげな表情を浮かべて白部が顔を覗き込んで来る。

三人の方でも花音が近くに居た二人の事を見つけ、席に招く様に手を振って呼び寄せた。


「二人共、そこで立ち止まってないで此方に来たら!」


花音の呼び掛けを聞いて久遠も二人に気が付き、一旦顔を向けるもすぐに食事に戻って行く。呼び止められた以上向かわない選択肢が無くなった光は腹を括り、何故光が立ち止まったのか解らずも呼ばれたから向かった白部に続いて花音達の居る席へと就く。

白部が縁の横に、光が久遠の横へと腰掛けて朝食を食べ始めると、光の顔の変化に気付いた花音が声を掛けた。


「どうしたの高坂、そんな隈を浮かべて」

「気にすんな、ただの寝不足」

「ただの寝不足って……そんなんでそこまで隈が浮かぶわけ無いでしょ」


光は顔の隈を寝不足で出来たものと言い張るが、明らかに寝不足では説明が付かない濃さらしく花音は更に言及して来る。

どうしたものかと寝不足で回らない頭を必死に回しながら解決策を考えていると、白部が花音に頭を下げた。


「済まん……俺が寝相の悪さで眠るのを徹底的に邪魔していたらしい……」

「え……?……本当?」


白部の告白を聞いて目をぱちくりとさせた花音は、彼の言っている事が本当なのかを光に聞く。ひょんな所からアシストが来た光は内心で安堵しつつも表情に出さない様にし、頷いてどの様な事で起こされたのかを説明し出した。


「そりゃあ、何度も頭を足で蹴られたら起きるだろ……」

「う、うわぁ……」

「いや……本当に済まない……」


光が蹴られた所を擦りながらジト目で白部を睨み付けると、花音も呆れた様な声をあげて白部を見る。

その圧で白部が更に頭を下げると花音は小さく溜め息をつき、改めて光へと向き直った。


「ごめんね、ちょっと疑って」

「誤解解けたならいいわ、それよりも飯食おうぜ飯」


花音が疑った事に対して謝ると、光はそれを受け入れて朝食を再開する様に促す。

それに花音と白部が頷き食べるのを再開すると、光の隣に座る久遠が光の服の袖を引く。光の意識が久遠の方へと向くと彼女は口元を食パンで隠しながら、光にだけ聞こえる声量で話し掛けた。


「決してバラしては駄目だからな」


若干の脅しが入った忠告に光は冷や汗を浮かべ、前の三人に気付かれない程度に頷き答える。

横目にそれを見ていた久遠はその事に小さく頷くと食事を再開し始め、ほっと一息ついた光も朝食へと手をつけ始めた。

面白いと思った方は、評価、感想、ブックマークをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ