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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第1節・光子の化身
4/150

第4話

前回のあらすじ


縁と久遠の二人が入り活気が溢れるジャナ部だが、二人は何か思惑があるように隠し事をする。

その裏でクロノイド制圧軍では、次の地球進行の決行日が決められた。


「………………………………」

「た、高坂……大丈夫……?」


新年度が始まってから一週間が過ぎた常磐高校の放課後、ジャナ部の部室で光がどんよりとした空気を纏って机に俯せに横たわり、顔をひきつらせた花音が光の体を揺らす。


「完敗、だったな」

「ふぐうっ!」

「ちょ、ちょっと滝音ちゃん!止め刺さないで!」


そんな二人の様子を見て呆れたように呟く久遠の台詞を聞き、光は体をビクンと跳ね上がらせ動かなくなってしまい、花音が慌てて久遠に注意する。


「事実だろ」

「確かに……完膚なきまでの敗北だな」

「ふごおっ!」

「もう!部長まで!」

「はははっ」


注意されるまでも無いと切り捨てる久遠に白部が同意すると、再び光の体が跳ねて花音が白部へと注意の矛先を向け、そんな四人の様子を見て縁が笑い声をあげた。


「『高坂と有沢、二人の戦績に迫る!』という見出しだったが……ここまであからさまな結果になるとはなぁ……」


白部が丸めた画用紙を広げ、黒板にマグネットで留めるとそこに書かれていた内容を見てそう呟く。

画用紙には縁がジャナ部に入部した際に二人の戦績を記事にしようと考えた白部によって、部長命令で無理矢理行われた『高坂VS有沢、因縁の十本勝負』の結果が記されており、その全ての種目で光は縁に敗北していた。


「ここまで完膚なきまでに倒せたんだ、君としても鼻が高いのではないのかね?」

「ははは……そうとは限らないさ、現に勝負の結果は殆ど紙一重じゃないか」

「む……確かに」


勝者である縁からコメントを聞こうとした白部は、縁からの答えを聞いて再び画用紙へと目を向ける。

百メートル走や千五百メートル走、ハードル走では一秒未満の差しかなく、バスケットボールのフリースロー、野球のホームランダービー、サッカーのPK勝負ではどちらも最後の一本に光がミスした以外は全て互角となっていた。

他にも走り幅跳びや砲丸投げでは光は縁とは三センチ未満しか差がなく、シャトルランでは僅差で間に合わず一本分負け、跳び箱では光が着地の際によろけてしまい、そのまま転げて着地失敗扱いとなって敗れるなど、縁の言うとおり僅差の記録で敗れている。


「これは……最早差は殆ど無いと見ていいのかね?」

「ああ、きっと高坂が今以上に腕を上げれば負けるだろうね」

「!!」


顔をニヤつかせて白部が縁にそう問い掛けると縁ははっきりと断言して光の勝機を言い、それを聞いた光が勢いよく顔をあげる。ただそれに水を差すように白部が再び口を開いた。


「ほう……けれどお前もそう易々と抜かさせる気はないんだろう?」

「当然。高坂が時間を掛けて自分を鍛えるなら、僕も体を鍛えてるだろうね」

「となると勝負は、お互いに鍛えた者同士になるという訳か」

「そうなったらその時の練度の違いだろうね」

「違いない!」


そう笑顔で言うとはっはっはっと二人が笑い合い、光は再び机に俯せになる。

花音は再び机に伏せた光の様子を見ると怒った様子で二人の元へと向かっていき、そんな四人を見て久遠は溜め息をつきながら出されたお茶に口をつけると、縁と笑い合っていた白部が急に真面目な顔をして口を開いた。


「はっはっは……さて、茶番はここまでだ。ほら、高坂部員!早く立ち直るんだ!」


そう言うと白部は手を叩いて注目を集め、未だに項垂れている光に復活を促す。


「茶番って……この後一体何する気なんすか……?」

「よく聞いてくれた!あ、先のネタは此方で済ますから気にするな」


よろよろと力なく顔をあげた光の問いに、白部は笑みを浮かべると黒板に張り付けていた画用紙を外して丸め黒板下に置く。


「高坂部員や水代部員、君達二人は既に聞いている筈だ。怪獣やロボット騒ぎに有沢部員と、色々あったが俺は元々あるネタを伝えていたからな」

「へ?俺達?……水代、何かあったか?」

「ええっと…………何かの企業について調べようとしてたのは覚えてるのよね……」


突然話を振られた二人は、インパクトの強すぎた一週間前の記憶を掘り返して何を言われていたかを思い出そうとするが、決定的な部分を思い出せずに首を傾げる。

そんな彼等を見て望む答えが出ないと見た白部は部員達の元へと向かい──一人離れた位置に座っている久遠の前に立つと彼女に向かって指を指した。


「滝音部員!君に聞きたいことがある!」

「…………は?」


ビシッ!っと音が鳴りそうな程の勢いで指差してそう叫んだ白部に、久遠は何を言ってるんだと言いたげな視線を向ける。


「滝音?…………滝音…………あ!そうだ!滝音コーポレーション!」

「っ!そうだった!確か滝音コーポレーションについて調べるって言ってたわよね!?」

「間違いねぇ!」


何故先週のネタで久遠が関わるのか頭を捻っていた二人は、久遠の姓を聞いて白部が先週ネタにしようとしていたものを思い出し、間違いがないのかを二人で確認し合う。

そんな彼等の様子を見て満足気に頷く白部とは対照的に、久遠は白部に冷ややかな目を向けていた。


「一学校が取り扱う内容にしては、些か規模が大き過ぎるのではないか?」

「怪獣やロボット騒ぎをネタにしようとしている時点で今更だ……さて、俺の質問に答えてくれるかな?滝音(・・)部員?」


白部は久遠の正論なぞ何のそのと言った様子で、あえて名字を強調して問い掛ける。

久遠の姓は、白部が記事にしようとしていた滝音コーポレーションの滝音なのだから。


「ただの偶然の一致だ、私は「関係ないとは言わせないぞ?」……」


あくまで偶然の一致だと言う久遠を封殺するように白部が言葉を被せ、懐から地図を取り出す。

四人にも見えるように机の上に広げられた地図には、常磐高校から滝音コーポレーションまで、複雑な軌跡を描いた赤い線が複数本引かれていた。


「これは……」

「君の姓が滝音と知って以来、君の帰宅経路を追跡したものだ。日によって変わってはいるが、どれも最終的には滝音コーポレーションに辿り着いている。これは無関係とは言い切れないだろう?」


地図を出された際に僅かに目尻が上がった久遠を見て、白部は僅かに口角を上げて問い詰める。

そんな二人を他所に、光と花音は白部の所行に揃って頬をひきつらせた。


「ぶ、部長……」

「ストーカーですよ、それ……」

「へぇ…………」


白部の所行にドン引きする二人と他の四人に気付かれず、含みのある表情をして小さな声をあげる縁、そんな彼等を気にも止めずに白部は久遠に向かって指を突き付ける。


「俺の予想では恐らくだか、君はそこの社長令嬢なのだろう!是非ともジャーナリズムのために、滝音コーポレーションのことを教えてほしい!」

「部長……それ、人にもの頼む態度じゃないです……」


指を突き付けて尊大な態度で聞く白部に、げんなりとして光が突っ込みを入れて花音がその通りだと言わんばかりに何度も頷く。

それでも態度を改めない白部を見て、白部はこういう人間なんだと認識すると呆れて溜め息をつき、諦めたように口を開いた。


「……確かに、私は戸籍上滝音コーポレーションの社長の娘という事になってる」

「戸籍上……となると、君は養子か何かか?」

「養子で合っている。と言っても物心つく頃から世話になってるから、体感的には実の両親と変わらないな」

「成る程……」


白状して自身の身の上を久遠が話し始めると、白部は何処からともなく取り出したメモ帳にメモを取り出す。

そして身の上話のメモを取り終わると、今までの経験則から聞き出すなら今だと直感して白部は久遠へと問い掛ける。


「改めて一つ聞かせてほしい。何故あれだけの大企業になったのにも関わらず、滝音コーポレーションは本社を湖の上より移さないのか」

「……本当にそんな事なのか?」

「…………は?」

「いや、本当にそんな事でいいのかと聞いているんだが……」


何を聞かれるのか身構えていた久遠は、白部からの問い掛けを聞いて怪訝な表情を浮かべるとそう聞き返す。さして重要なものではないと言わんばかりの態度に、問い掛けた白部も思わず困惑の表情を浮かべた。


「あ、あれ……?そんな事って……?」

「別に大したことではないからな……一体何を想像していたんだ?」

「い、いや~……てっきり離れた所で極秘の研究をしているものかと……」


久遠の口より大した理由ではないと告げられ、逆にどの様なことを想像して問い掛けたのか聞き返されて白部は若干調子を崩しながら答え、そんな珍しい姿に光と花音は目を丸くするも、光はすぐに白部の体をつついて意識を自分に向けさせる。


「……部長、これ部長の思ってるようなことは何一つ無い感じですよ。どうするんですか」

「……ええい、待て!今考えるから……!」


光にジト目を向けられて突っ込まれ、白部はそれに叫び返すと何か別の質問を捻り出そうと考え込む。そんな彼を見て花音と久遠の二人は揃って溜め息をつき、縁は一人のおかしそうに笑いながら部室のお菓子に手をつけていた。





平時であれば薄暗い室内を足元のモニターの明かりが照らすクロノイド制圧軍作戦指令部、しかし今は部屋全体が青白い光によって照らされており、そこにはシュタインとジェネル、そしてリーリスの三人が立っていた。


「……ではこれより第二次地球進行作戦を実施する!時空転移ゲート、起動!」

『了解。時空転移ゲート、起動します』


ジェネルの号令にナビゲーターがそう答えると、モニターに映された格納庫、その奥にあるシャッターが開いてカタパルトが露になるとその先端部にあった正六角形状の機械──時空転移ゲートから稼働音が鳴り、紫の光のラインが浮かび上がる。

すると正六角形の中心部に紫電のスパークが迸り始め、やがて一つの暗雲を作り上げて徐々に大きくなっていき、時空転移ゲートと同等の大きさになるとその大きさで停止した。


『時空転移ゲート、開通完了』

『出撃準備、完了です』

「ならばクロノドローン部隊、発進!」

『了解。クロノドローン部隊、発進します』


ナビゲーターのアナウンスと共に、格納庫から半円状のプレート七つを組み合わせて人型にした様な何か──クロノドローンがカタパルト上に整列していく。

すると先頭のクロノドローンが機体に集約された直線部からスラスターを吹かし、宙に浮かぶと時空転移ゲートに向かって飛んでいき、残る機体も続いて時空転移ゲートを超えて地球へと向かう。


『クロノドローン部隊、全機出撃完了しました』

「よし!これよりクロノギアスの転送を行うぞ!」

『了解。クロノギアス・アンファの転送を行います』


ジェネルの号令を受けて今度はクロノギアスの転送に取り掛かり始め、カタパルト前の足場が下がっていく。

しばらくすると、下がった足場上にクロノギアスを格納しているであろう四角いコンテナを載せて上がって来て、足場が完全にせり上がるとコンテナがロックされる。しかし、その光景を見て作戦を指揮するジェネルは訝しげな表情を浮かべた。


「む……?おい、何だあのコンテナは!」

『いえ……ドクトル・シュタインの指示です』

「現状ではあれが必要なのじゃよ、文句は言わせぬぞ」


クロノギアス本体ではなくコンテナごとせり上がってきた事をジェネルがナビゲーターに問い掛けると、シュタインの指示だと返されてそちらを向くと、目を細めたシュタインがそう返す。


「むう……俺としてはカタパルトより飛び立つ雄々しきクロノギアスの姿を見たかったのだが……」

「それを前回やった結果があれじゃったじゃろうが……技術部!トランスファービームの調整はどうなっておる!」

『はっ!稼働テストも既に行っており、転送の成功率は九十九パーセントです!』


思っていたのとは違う出撃の方法にジェネルが顔をしかめて呟くも、先の転送がその状態での失敗だったことを改めて言って黙らせる。

ジェネルが言い返せずに黙ったのを見てシュタインが技術部に問い合わせると、想定通りの返しが返ってきたことにシュタインは満足気に頷く。


「よし……トランスファービーム、照射準備!」

『了解。トランスファービーム、照射準備開始。クロノギアス・アンファの量子変換、開始します』


シュタインの号令と同時にコンテナから何かの稼働音が鳴り始め、時空転移ゲートと同じ様に紫の光のラインが表面に走り、時空転移ゲート側の側面が可動して、トランスファービームの照射口が現れ、光のラインが全てそこに集約される。

するとコンテナを走る光のラインが流動し始め照射口に集まっていき、照射口に刻一刻と光が集まっていった。

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