第3話
前回のあらすじ
怪獣とロボットの戦いから一夜開けた新学年の始業式。光と花音、縁のクラスに一人の転校生がやって来る。
その放課後に光と花音が部室で過ごしていると、縁が転校生の久遠を連れて入部しにやって来た。
縁からの申し出を聞き、光と花音の二人は何を言ってるのか解らないと言わんばかりにその動きをピタリと止める。
それに対して白部は不敵な笑みを浮かべ、縁の言った言葉を復唱した。
「ほう……我が常磐ジャーナリスト部に入部したい……そう言ったのだな?」
「勿論、その通りだ」
白部の言葉に間違いはないと頷く縁、それを見て復活した光と花音は慌てて縁に詰め寄った。
「お、お前!?正気か!?よりにもよってジャナ部に入るのか!?」
「そ、そうよ有沢君!もう一度考え直して!こんな場所より全うな部活はあるのよ!?」
「随分な物言いだなお前達……!」
縁に詰め寄ってジャナ部に入ることを考え直させようとあれこれ言う光と花音、そんな二人の後ろで額に青筋を浮かべて怒る白部とカオスな空間が形成されて縁は思わず苦笑いをする。
そんな空気をぶち壊す様に今まで会話に混ざらず縁の後ろで控えていた久遠が口を開いた。
「そもそも、ここは一体何の活動をしているんだ?」
久遠の活動内容に対する問い掛け、それによって縁に詰め寄っていた二人とその二人に拳骨を落とさんと接近していた白部が止まる。
油が切れたような動きで光が久遠を見て、再び縁の方へと顔を向けると信じたくないものを見るような目で縁を見て問い掛ける。
「な、なあ……もしかして彼女も入るのか……?」
「?さっき僕達もって言ったじゃないか、勿論彼女もだよ……っと」
縁の言葉を聞くや、光と花音は縁を突き飛ばして白部の方へと押し付けると、久遠の肩を掴んで力強く説得しようと試みる。
「転校生!悪いことは言わん!ここだけはやめておけ!」
「そうよ!ジャナ部以外にもちゃんとした新聞部はあるんだから!」
久遠の肩を二人で掴んで、彼女の体をぐわんぐわん揺らしながらそう叫んで説得する。するとその説得内容に違和感を感じたのか、白部がおもむろに手を挙げて聞いてきた。
「待った、他に新聞部があったのか?」
「ちょ!?知らなかったんですか!?」
「いやだって存在感が無かったからなぁ……」
「うちがキテレツ過ぎて向こうの分も食っちまったんですよ!」
「そうなのか!なら我らのインパクトに勝てない奴等が悪いな!」
まさかの部長が競合他社を知らないという事実に愕然とした二人は、ここぞと言わんばかりに白部のことを批難するが白部は却って開き直って食われる様な記事しか書けない新聞部が悪いと宣う。
そんな白部の言い分に花音からブチリと何かが切れる音が聞こえ、今までに聞いたことのない声量で白部を怒鳴り付けた。
「そもそもあんたにトンチキさで勝てる連中なんて居ないでしょうが──っ!!」
部長と部員としての間にあった立場の差すら投げ捨てて怒鳴りあげる花音に、光だけではなく図太さを持っていた白部すら姿勢を正しくして説教を受ける。
自分が圧倒される事などあり得ないと言わんばかりの混乱した表情で冷や汗をかきながら第二波に対して白部が身構えていると、場の空気をぶち壊すように縁が爆笑しはじめた。
「はっはっはっ…………あ──っ!!はっはっはっはっはっはっ!!」
「あ、有沢……?」
「はっはっはっ……ひーっ……ひーっ……」
何事かと光が声をかけるが、縁は笑い声をあげたまま床に踞ってお腹を抑える。
その光景に姿勢を正していた白部だけでなく、ぶち切れていた花音までもポカンとして笑い転げる縁を見ていた。
「はぁ……はぁ……失礼、噂に違わない破天荒振りだね……」
しばらくして起き上がった縁は目尻に浮かんだ涙を拭いながらそう言うと、光達三人を見て頷く。
「そんな破天荒振りだから入ろうと思ったんだよ」
改めて縁がジャナ部に入ると聞いて光と花音はこいつマジか……と言いたげな表情をする中、白部は縁に近付くと試すような笑みを浮かべて問い掛ける。
「うちは見ての通り全うな記事は書かんぞ?」
「望むところだ」
白部の問い掛けに対して縁も口にニヤリとした笑みを浮かべてそう答えると、白部はより一層笑みを深めて縁の手を取った。
「よろしく!!新入部員!!」
「こちらこそ!」
そう二人が握手を交わすのを、ポカンとした様子で眺める光と花音。そんな二人を他所に白部は縁の手を離すと今度は久遠の元へと向かう。
「それで!君も入部でいいんだな!?」
「問題ない」
「よし!ようこそ常磐ジャーナリスト部へ!!」
久遠から入部の意思を聞くと、白部は満面の笑みで彼女の手を掴んで上下に激しく振る。ようやく正気に戻った二人は解放された縁に近寄って小声で話し掛けた。
「……なあ、本当にいいのか?」
「ん?」
「ここの悪名は貴方だって聞いてるでしょ?なのに何で転校生をここに連れてくるのよ……」
「うーん…………強いて言うなら都合がよかったから……かな」
「「……へ?」」
縁から告げられた都合がよかったという理由、それを聞いて首を傾げる二人の元に、活力漲る白部が机を叩いて注目を集めて口を開く。
「さて諸君!新入部員が増えて早々新学年の初仕事だ!!記事のテーマは『高坂と有沢、遂に手を結ぶ!!』だ!!」
「いやいやちょっと待て!!」
白部が発表したネタを聞いて慌てて光が間に入る。それに白部は機嫌を悪くしながらも、光に発言を許可する。
「一体どうしたと言うんだ高坂部員?」
「いやいや、そのテーマは一体何!?」
「何って、次の学校新聞のテーマに決まっているだろう?」
「いや、何をそんな当たり前のことをみたいに返さないでくださいよ!!発行した新聞なくしたんでしょ!?」
机を叩いて光が白部に詰め寄って尋問する。縁の登場や突然の入部宣言で色々と吹っ飛んでいたが、光は白部が一日掛けて作り上げた新聞を紛失したことを覚えていた。
「ああそれか、それは号外という形で出そうと思う。見つからないものは仕方無いからな」
「それはまあ、確かに……っていやいや、それが何で俺と有沢の記事になるんですか」
「それは……」
「それは……?」
白部が机に肘を立てて寄り掛かり両手を口元に持ってくる……所謂ゲン◯ウポーズの姿勢で言葉を溜め、その重圧感に光も思わず固唾を呑む。
「賭けの結果が出たなら早く張り出さないと後が怖いんだ……」
重圧的な雰囲気から繰り出された情けない言葉に光は膝から崩れ落ちるが、白部の言葉に引っ掛かるものを感じて問い掛ける。
「も、もしや……一部で流行っている俺と有沢に対する賭けは……!?」
「…………ふはははは!!そうだとも、俺が胴元だぁ!!」
光の問いに白部は高笑いをしながら答えると、すぐさま席を立って廊下の外へと走り出す。
「………………待てやごらあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
残された光からブチリと何かが切れる音が聞こえると、光は鬼の形相で白部の後を追いかけて走り出す。そして廊下から様々な物が倒れる音を耳にして、花音は大きく溜め息をついて頭を抱えた。
「ああもう!!部長も部長だけど高坂まで……!ごめんなさい!私も出るわ!あ、黒板横の棚に入っているお茶とお菓子は好きにしていいから!」
縁と久遠に向かってそう告げると、花音も二人の後を追って部室から出ていく。残された縁と久遠は顔を見合わせると、久遠は再びお腹を抱えて笑いだした。
「あっはっはっはっはっ!!……やっぱり愉快だな、あの三人は!!」
「はぁ……それよりも縁、聞きたいことがある」
爆笑する縁に対し久遠は溜め息をつくと、冷たい視線を縁に向けて問い掛け、視線を向けられた縁はしばらく笑い続けた後、咳払いをして久遠へと向き合う。
「済まない……一体何のことだ?」
「本当に、彼がそうなのか?」
「勿論」
久遠が三人が出ていった扉へと目をやりながらそう聞くと、縁は確信を持って頷く。しかし久遠は、縁のその確信が何処から来ているのか分からずに首を傾げる。
「確かに目を見張るものはあるかもしれないが、重要なのは素養だろう?」
「分かってるさ、だから今度確かめるのさ」
「今度?……っ!お前まさか!?」
「そのまさかさ」
机に手を叩きつけて目を見開く久遠に対し、縁は席を立つとグラウンド側の窓へと向かって窓を開く。
「捕まえたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「待ちたまえ高坂部員!!関節はそっちには曲がらな……ア゛────ッ゛!!」
「二人共止めなさい!!……あ!!先生!!こっちです!!」
グラウンドでは白部に追い付いた光が白部の腕を捉え、関節を全力で極めて白部が汚い悲鳴をあげており、そんな二人に追い付いた花音が近くの教師に助力を願っている。
「……………………フン」
そんな三人を見て縁は再び笑いだすと部室から出ていき、一人残ってグラウンドを見ていた久遠は三人の様子を一瞥すると、鼻を鳴らして縁が去っていった後を追って部室を出ていった。
どことも知れない薄暗い一室──クロノイド制圧軍作戦指令部にて、シュタインがタブレットを手にして作業を行う。
そんな彼の元に重厚な足音が近付いてきて、指令部にジェネルが入って来た。
「ドクトル・シュタイン、次の進行作戦の日程が決まったぞ」
「む?そうなのか?」
突然の報告にシュタインは訝しげな表情を浮かべるが、ジェネルはそれに頷く。
「ああ、クロノーア皇帝陛下からの命令だ」
「皇帝陛下からの、じゃと?」
皇帝からの命令と聞いてシュタインは目を丸くする。そんな彼を他所にジェネルは脇に抱えた書類を捲る。
「お前が担当していた時空転移ゲート……クロノギアス転送に伴う不具合の解決の目処が立ったと耳にしたらしく、一週間後に再進行を行うことが陛下によって決められた」
「っ!待て!一週間後じゃと!?」
告げられた作戦の日程を聞いてシュタインが目を見開いてジェネルに詰め寄る。その反応にジェネルは訝しげな表情を浮かべた。
「どうしたドクトル・シュタイン、何か問題があるとでも?」
「問題も何も!まだ時空転送ゲートの改修は済んでおらんわ!」
「何だと!?どういうことだ!」
時空転送ゲートの改修が済んでいないという報告に、ジェネルはシュタインに怒鳴り散らすが、シュタインも対格差などお構いなしにジェネルに向かって怒鳴り返す。
「確かに問題点の洗い出しも終わり、どうすればクロノギアスを百パーセントの性能で送り出せるかの目処も立った!じゃがそれには時空転移ゲート全体の改修が必要で、それは一朝一夕で出来るものではないわい!」
「だが、陛下の元にはそのように届いておるぞ!」
「ええい!一体誰が虚偽の報告を……!」
シュタインは嘘の報告をクロノーア皇帝にした人物に対して怒りを露にし、ジェネルはシュタインの珍しい激昂に身を引くが、書類を手にして淡々と告げる。
「しかし、これは陛下直々の命令だ。どの様な理由があろうと拒否は出来んぞ」
「むう…………仕方無い……代理プランで行くか……」
「代理プランだと?」
皇帝直々の命令とあってシュタインに拒否権はなく、仕方無いと言いたげに他のプランの存在を口にし、それにジェネルが反応する。
「うむ、元は時空転移ゲート改修プラン中に用意していた繋ぎのプランじゃよ。改修作業中に陛下直々の進行作戦が行われる際での緊急用のプランじゃったが、まさかこんな早くに切ることななろうとわな……」
「そんな事はどうでもいい!次の作戦に間に合うのか、どうか!それを答えろ!」
「間に合うとも。だが、少し頼みがある」
次の進行作戦に間に合うと聞かされ、軍事部として安堵するジェネルな対してシュタインがそう申し出て、ジェネルはそれに頷く。
「虚偽の報告のせいで無茶をやらすことになったのだ、多少は聞こう」
「次の進行作戦には、クロノドローン一個小隊を出撃させてもらえんか」
「クロノドローンをだと?」
シュタインの申し出は、次の作戦における進行戦力の増強だった。軍事部の人間ではないシュタインの申し出に、ジェネルは額に青筋を浮かべて表情を浮かべて問い掛ける。
「まさか貴様、我がクロノギアスだけでは不足だと言うのか!!」
「違うわい!!じゃが、必要なことなのじゃ……理解してくれ」
「…………判った、陛下に今回の作戦にクロノドローン一個小隊の編入を申し上げる」
「うむ、頼んだわい」
そう言うやジェネルはシュタインの申し出を叶えるため──もといクロノーア皇帝の元に虚偽の報告が為されていたことを伝えるために指令部を出て行く。
残されたシュタインはタブレットに目を落とすと、何かあったのか眉を寄せるとタブレットを脇へと挟んで指令部を出て行き、二人が去っていった指令部を床下のモニターが怪しく照らし上げる。
「…………」
すると先程まで居た二人からは死角になる位置にあった柱から、一人の人影が現れた。
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