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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第4節・野々原白部は暴きたい
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第9話

前回のあらすじ


光平によって光達がフォトングラストのパイロットだと明かされた白部と花音。

戦場では進化したクロノギアスに合体したフォトングラストが挑み掛かる。

体を覆っていたノイズが消えたクロノギアスは、接近するフォトングラストを視認すると此方も迎え撃たんばかりの咆哮をあげて同じ様に向かって来る。

全体的に一回り大きくなった体は頭の先から尻尾の先まで装甲で覆われ、両腕には胴体の半分は庇える程の大楯が左右合わせて二つ取り付けられており、それらを支える下半身──特に足腰は一際太く力強くなり、それ故に大事なのか他の部位より厚い装甲によって守られていた。


「見るからに堅そうだが行けるのか!?」

「やってみなきゃ解んないよ!!」


光の疑問を他所に縁は一気に距離を詰め、胴体目掛けてフォトングラストの拳を叩き込もうとし、クロノギアスもそれに向かい合う様に右腕の大楯を突き出し、シールドバッシュを繰り出そうとする。

二機の巨体が真正面からぶつかり合い、周囲に轟音が鳴り響く。一瞬の膠着の後、フォトングラストの機体が大きく後ろへと吹き飛ばされた。


「「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」」

「ぐううっ……!!」


衝撃に機体が揺れ悲鳴をあげる三人だが、ギリギリ意識を失わず持ちこたえるとすぐに立て直すためにスラスターを吹かして地面へと両足で着地する。

そんな彼等を他所に対面では、クロノギアスがフォトングラストに殴られた所を気にする素振りを見せず、フォトングラストに押し勝った事に対して咆哮をあげていた。


「くそっ!無傷かよ!?」

「近距離での戦いは不利だ。遠距離からの攻撃で対処しろ」

「了解!フォトンライフル!!」


光がダメージを与えられていない事に頭を抱え、久遠は近距離では分が悪いと分析して遠距離戦を縁へと提案し、それを聞いた縁は頷き右腰部からフォトンライフルを抜き放つと、銃口をクロノギアスへと向けて引き金を引く。

けれど放たれたビームはクロノギアスの装甲に着弾しても、拳と同じ様に傷一つ負わせる事が出来なかった。


「射撃も聞いてねぇのかよ!?」

「だが、近付けば殴り負けるだけだ!!」

「どうにかして解決策を見出ださないと……」


攻撃を受けても傷一つつかない装甲を身に纏ったクロノギアスを相手に三人は冷や汗をかくが、そんな彼等の都合などしったこっちゃないとクロノギアスは咆哮をあげてフォトングラストへと向かって行く。

三人はまともにダメージを与える手段の無いまま、眼前のクロノギアスの相手を否応無しにせざるを得なくなった。






フォトンガードナー基地司令部では、フォトングラストとクロノギアスとの戦闘がモニターに映し出されているが、オペレーター達の顔色は誰も彼も悪い。

それもその筈、今司令部のモニターに映っているのは自分達の希望であるフォトングラストが、一切の攻め手を封じられてやけくそ気味にクロノギアス相手にフォトンライフルを撃っている光景であり、連射の嵐に晒されてもクロノギアスは傷一つ負う事無くフォトングラストへと向かって行く悪夢の様な光景だったからだ。


「これだけ撃ってんのに全く効かねぇ!!」

「っ!!縁!!下がれ!!」

「くうっ!!」


モニター横のスピーカーからはフォトングラストとクロノギアスの戦闘音と、パイロットである三人の声をが聞こえて来る。

三人はどれだけフォトンライフルを撃っても動きを止める所か歩みを止めないクロノギアスに遠距離戦を仕掛けるが、どれも傷一つ残す事が出来ずに苛立ちが募って行った。


「──っ!!まずい!!近付かれ──っ!?」


苛立ちの余りに引き際を見誤ったフォトングラストの前に、接近して来たクロノギアスがその両腕の大楯を突き出して来る。

大質量の突撃に思わず体が硬直した縁とは裏腹に、フォトングラストが彼の手を離れて勝手に動き出した。


「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


叫び声をあげた光は縁から咄嗟にフォトングラストの脚部のコントロールを奪い取り、眼前まで迫って来る大楯に向かって跳躍して両足を構え、突き出された大楯に合わせて繰り出されたドロップキックがぶつかり合い、空中に浮いていたフォトングラストは大きく吹き飛ばされる。


(──ん?)

「ぐうぅぅぅぅっ!!縁ぃ!!」

「ううぅぅぅぅっ!!」


ドロップキックと大楯がぶつかり合った音に違和感を感じた白部を他所に、吹き飛ばされながら光は縁に呼び掛けると硬直が解けた縁が素早く体勢を立て直して地面へと着地させる。地面にぶつかるギリギリで取れた着地に、縁は息を荒げて光へと口を開いた。


「ありがとう、光……君のお陰で助かった……」

「ぜぇ……ぜぇ……今度は……気を付けろよ……」


縁から感謝の言葉が告げられた光は、同じ様に息を荒げながら頷き返す。光が脚部のコントロールを奪い空中へと浮かばなければ、クロノギアスのシールドバッシュを諸に受けて勢いを殺すことも出来ずに大ダメージを負っていただろう。

オペレーター達も最悪の事態を避けれた事に安堵の息を零すが、最悪な状況であることに変わり無くカメラ越しにクロノギアスの分析を行い打開策を調べ上げる。

光平は険しい表情を浮かべ、花音は恐れる様な表情を浮かべて三人の戦いを見守る中、一人白部だけが顔を俯かせて口に手を宛てぼそぼそと呟いていた。


「…………っ!まさか!!」

「なっ!?野々原君!?」


突如として大声をあげた白部がオペレーターの席へと直行し、突然の事に驚いた光平が呼び止めようとする。

しかし白部はそれに聞く耳を持たずにオペレーター席まで行くと、そこで解析作業を行っていたオペレーターからインカムを奪い取り、三人へと通信を繋いだ。






「三人共!!一ついいか!?」

「「「っ!?」」」


突然繋がった通信──しかも聞こえて来るのはオペレーターではなく白部の声に三人は思わず目を見開くと、咄嗟に白部の奇行に慣れていた光がそれに返事を返す。


「ぶ、部長!?どうしたんですか!?」

「もう一度何発か物理攻撃を頼む!!」

「はあっ!?」


白部からの突然の要望に光は思わず声をあげる。あの重装甲は戦闘の映像を観ているであろう白部も判っている筈なのに、聞かない物理攻撃をさせようとする意図が解らなかった。


「ただ数発殴るだけでいい!!その後はビームを撃って下がってくれ!!」

「いや、そもそも何で部長が通信してんの!?」


格闘戦だけでなく下がり方まで指示してくる白部に光が疑問を口にすると、通信越しに白部を取り押さえようとする職員達の声が聞こえて来る。

そんな中、白部のある一言が縁の耳に入って来た。


「ええい!!俺の仮説を確かめるにはそれしか無いんだ!!」


通信越しでも判る程に暴れる白部を想像して、光は顔をひきつらせて久遠は大きくため息をつく。そんな二人を他所に縁は表情を引き締めると、フォトンライフルを腰へと懸架させクロノギアスに向かって走らせていった。


「な!?おい縁!?」

「何やってんだお前!?」


クロノギアスに向かって行くのに気付いた二人が縁を止めようとするも、縁はそれを無視してクロノギアスへと接近する。

クロノギアスもフォトングラストの接近を迎え撃とうと右腕の大楯を振りかぶり突き出して来るが、縁はそれをかわすと胸部に向かって右フックを叩き込む。

しかしそれは装甲によって阻まれて傷一つつけることが出来ず、思わず光は叫ぶ。


「まさか部長の言う通りに戦ってんのか!?」

「今はそれしかない!!」


光の言葉に縁はそう返すと、反撃とばかりに繰り出された左の大楯による薙ぎ払いをしゃがんで避け脚部に足払いを仕掛けるが、重厚な脚部は揺るぎもしない。

むしろクロノギアスがしゃがんだフォトングラストを潰さんと盾を合わせて振り下ろして来て、縁は舌打ちしならスラスターを吹かして後ろへと飛ぶ。

地面に叩き付けられた大楯がアスファルトの欠片を吹き飛ばす中、縁は腰のフォトンライフルを再び抜き放つと立て続けに撃つ。しかし装甲に命中するも効いておらず、再び縁が接近する前の状態に戻される。すると再び白部の声が響き渡った。


「解ったぞ!!奴の防御力の訳が!!」

『っ!?』


白部がクロノギアスの防御力の理由が解ったと言い、フォトングラストに乗る三人だけでなく司令部の面々も息を呑む。そんな彼等を他所に白部は言葉を続ける。


「奴の装甲は物理攻撃の衝撃を装甲全体に分散させる事で、一点に掛かる力を大幅に減らしているんだ!!だから奴に物理攻撃はほとんど意味を成さない!!」


白部の口から語られたのは、クロノギアスの高い防御力の仕組みだった。点で受ける衝撃を面に分散させる事で物体の破損を防ぐという、ごくありふれた仕組みだが強靭な装甲でそれが成されており、高い防御力を誇っていたのだ。


「けど、ビームの様な熱エネルギーの一点集中に対しては分散している様子はない!!より強力なビームを使えば装甲を貫ける筈だ!!」


そしてそれに対抗策として白部が出したのは熱エネルギーを有する武器による装甲の貫通だった。物理攻撃は衝撃が分散されるが、熱エネルギーは分散されずに一点に集中すると見越した策なのだろう。

けれどその策に対して、光は白部に向かって問い掛けた。


「そもそも、どうやって気付いたんですかそんな事!?」

「攻撃の着弾音だ!!」


光の問いに対する白部の答えに、それを聞いた面々が息を呑む。白部はクロノギアスに繰り出された打撃の音とビームの着弾音から、それ等の性質を見出だしたというのだから優れた聴覚と言わざるを得ない。


「だけど突破方法が解った以上、後はやるだけだ!!」

「待て縁!!フォトンライフル以上にエネルギーを収束させる武器は無いぞ!!」


それはともかく勝機を見出だした縁は今度こそ倒さんと決意を込めてクロノギアスへと顔を向けるが、それに水を差す様に久遠が待ったをかける。

久遠の言う通りフォトンライフル以上に光子エネルギーを収束させる武器はフォトングラストには存在しない。光子エネルギーの出力で言えば光子剣はフォトンライフルを凌駕するが、光子エネルギーの刃が剣状に形成される都合上一点に集中せずに広がっているため、装甲を貫通する程の熱エネルギーの集中は期待出来ない。

よしんば押し当てて装甲を融解させようものなら、それまで刀身を押し付けておかねばならずその隙に攻撃されているのが目に見えていた。


「だったら……!」


久遠の言葉を聞いた光はコンソールを弄り一つのデータを表示させ、それを二人へと送ると見た二人は目を見開く。


「高坂、これは……!」

「試した事はねぇけど、やれる筈だ!!」

「ああ……光子剣抜刀!!」


光が二人に見せたデータ。それを見た縁は頷くと光子剣を抜刀しクロノギアスへと向き直り、今までとは違い霞の構えを取ると一直線にクロノギアスへと向かって行く。

クロノギアスも迎撃せんと右の大楯を振りかぶりフォトングラストに向かって突き出すと、縁はそれを素早く避けて叫び声をあげた。


「光子剣、変光(へんこう)!!」


縁の叫びと同時に光子剣に変化が起きる。ブロードソードを思わせる刀身は徐々に小さくなっていき、やがて一本の線と言っていい程に細くなり、 最早標的を切る剣ではなく突き貫く事に特化した刺突剣を思わせる姿になった光子剣を、縁はクロノギアスの胸部中心を目掛けて突き出す。

刀身の形状を変化させエネルギーを一点に絞った光子剣は、クロノギアスの装甲に僅かばかりの抵抗を返しつつもその胸元へと刀身を沈める。


「光子剣、フォトン・ピアーズ!!!!」


鍔が胸部に触れるまで刀身を埋め込み、背後に貫通させた瞬間に縁が叫ぶ。それに合わせて一瞬光子剣の光が消えるが、膨大な光子エネルギーが貫通した穴を通じてクロノギアスの内部へと解き放たれた。

内側より荒れ狂うエネルギーがクロノギアスの内部を蹂躙し、刀身を消した光子剣を手にしながらフォトングラストが後ろに飛び退く。

その瞬間、クロノギアスは内部より大爆発を引き起こし、その光景を観ていた司令部の面々は歓声をあげた。






「君のお陰で助かった。ありがとう、野々原白部君」

「此方こそ、こんなとんでもない体験をさせてもらって感謝しかありませんよ」


三人が基地へと帰投した後の応接室。そこでは光平が今回の立役者である白部に対しては握手と礼を行い、白部もとんでもない経験をさせてもらった事に感謝の言葉を述べている。


「それはよかった…………それはそれとして、君って確か新聞部みたいな部活の部長だったよね……?」

「そうですが……」

「出来れば……この事は内密にお願いできないかな……?」


そう白部に対して困った様な表情を浮かべながら頼み込む光平の姿を見て、光達ははっとなって白部の方を見る。これ程までに美味しいネタを、彼が新聞に使わないとは到底思えず先んじて光平が釘を刺そうとしているのだろう。

それを聞くと白部は、光が今まで見たことの無い苦笑いを浮かべて答えた。


「流石にこの件は俺も自重しますよ。到底信じられない様な事ばかりでしたしね」


そう言った白部に光平は小さく頷き、光達は安堵の息を零す。そんな三人の様子がおかしかったのか、白部は三人の方を向いて笑い出した。


「な、何ですか部長……」

「そこまで心配するなら、もう少しセキュリティはしっかりしといた方がいいぞ?俺達は第三倉庫のオートロックの扉を弄ってここに来たんだからな?」

「へ?………………あ──────っ!!」


白部の言った事に光は僅かに首を傾げ、話の内容を理解すると尋常ではない叫びをあげる。そして彼が大声で叫んだ事で、縁と久遠は気が付き、縁は苦笑いを浮かべ久遠は光にジト目を向ける。

今日第三倉庫のエレベーターを使ったのは光しか居ないから、彼が入った後に二人が入って来たのだと気付いたのだから。


「おい……お前のせいでバレたのではないか……!」

「あ──っ!!くそっ!!何で気付かない……っはっ!?まさか今までの不気味な無関心は油断を誘うための──っ!?」

「はっはっはっ!!」


光の問い掛けに白部はただ笑い声をあげるだけだった。けれど光にはその時点でその通りだと言っている風にしか見えなかった。


「~~~~っ!!こんの馬鹿部長が────っ!!」

「はっはっはっ!!それでは失礼させてもらいます!!」


激情の余りに光が白部へと飛び掛かるが、白部はそれをひらりとかわすと応接室に居る全員にそう一礼して部屋を出て行く。


「待てやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「はっはっはっはっはっ!!は──っはっはっはっはっはっ!!」


飛び掛かるのを避けられた光も、すぐに反転すると白部の後を追い掛けて応接室を出て行った。

この話にて第4節は完結となり、次回より第5節が始まります。


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