第4話
前回のあらすじ
白部の追求を振り切ろうと光は朝早くからフォトンガードナーの基地へと向かおうとするが、早朝から張っていた白部に車の後をつけられてしまう。
何とか撒いて基地へと来た光は縁や久遠と共に、白部の追求を乗り切ろうと考えるのだった。
休み明けの月曜日、ようやく朝早くに部活動を行う生徒達がポツポツと高校に登校して来る時間に、白部はよたよたとジャナ部の部室へとやって来た。
「や……やっと着いた……う……動くのもままならん……」
白部は一昨日に行った光の乗った車とのおいかけっこで体を酷使し、昨日は筋肉痛で丸一日動く事が出来ず今もなおその後遺症が身を蝕んでいる。
その様な状態で光とのおいかけっこを行うのは余りにも無謀だと判断した白部は、学校で待ち構える事にして一人先に学校に来ていた。
しかし、治りきっていない段階での登校は白部の体に大きな負担をかけ、最早息も絶え絶えな状態で部室の椅子に倒れ伏す。
「もういい……しばらく寝るか……」
体力が限界になった白部は、身を包む眠気に身を任せそのまま眠りにつく。
彼が眠りについてしばらくし生徒が徐々に学校に登校して来て、朝のホームルームのチャイムが鳴るが白部は起きることなく眠り続ける。
そんな彼を起こしたのは、学校中を襲った大地震だった。
「ぬがっ!?うごぉぉぉぉ……!」
揺れで椅子から転げ落ちた体を床に強打し悶え苦しむ白部を他所に校舎は大きく揺れ、やがて窓の外から大きな咆哮が聞こえて来て白部は痛む体に鞭打って立ち上がる。
「クロノギアスか……!」
滝音市市街地に現れたクロノギアス。その出現に合わせて学校中の人間が体育館へと避難して行く光景が白部の目の前に広がる。
白部も痛む体に鞭を打って自分も避難所へと向かおうとした所で、偶然の産物か痛みで動きが緩慢になってしまった埋め合わせか、白部はあるものを見つけた。
「あれは……有沢部員に滝音部員……それに高坂部員……?」
避難所である体育館から離れる様に。人目を避けて走る三人の見知った顔、それを見つけた白部は避難を止めてその後を上から追う。
そして彼等がプール裏にある開かずの第三倉庫まで来たのを見届けると、そこで行われた出来事に目を見開いた。
「な……っ!?」
光が開かずの第三倉庫前で何かをすると、七不思議になる程に開かなかった倉庫の扉が勝手に開き、三人がその中へと入って行く。
その後倉庫の扉が勝手に閉まる光景を目の当たりにし、白部は空いた口が塞がらない。
「有沢部員、滝音部員……高坂部員……君達は一体……?」
白部はそのまま部室内で立ち尽くし、白部が何処に居るのかを探して来た担任が部室まで探しに来るまで呆気に取られていた。
今までと同じ様に二足歩行の怪獣体型のクロノギアスが市街地で暴れまわり、ビルやアスファルトを破壊して行く。
一見すると自らの存在を誇示するかの様な行動を取るクロノギアスの上空に、一つの影が差すとその影は一気に大きくなっていき、クロノギアスに向かって突撃して行った。
「パーティクルキック!!」
上空から挨拶代わりにフォトンファイター繰り出した蹴りがクロノギアスの胴体を捉え、フォトンファイターの機体重量に重力による落下を加えた一撃は、クロノギアスの巨体を大きく吹き飛ばす。
そうして吹き飛ばされるクロノギアス目掛けて地面に着地したフォトンファイターの背後から大小二つのビームが四発放たれ、全てクロノギアスの体へと命中した。
「っしゃあ!!先制成功!!」
「クロノドローンがまだ出ていない、決して油断するな」
先制の一撃を決めれた事に光がフォトンランダーのコックピット内でガッツポーズを取る横で、フォトングライダーに乗った久遠から気を抜かない様に釘を刺される。
その言葉に光だけで無く縁も頷くと、三人はクロノギアスへと向き合って反撃に身構える。ビルに激突して止まったクロノギアスは、砂埃を気持ち他のクロノギアスより長い腕で払うと三機の存在を目にして威嚇の声をあげる。
それに真っ先に対応したのは、クロノギアスを相手にメインの戦闘を行うフォトンファイターのパイロットである縁だった。
「どうやら、まだまだやる気みたいだねっと!!」
フォトンファイターに向かって走って来たクロノギアスと真正面から組み合い、地面に轍を刻みながら後ろへと下がる。
しかし途中で足の踏ん張りをより強固にすると後退が止まり、クロノギアスと真正面から力比べを行い始めた。
「高坂!!」
「判ってるって!!」
光と久遠の二人は縁の戦闘の邪魔にならない様に二機から距離を取り始めるが、何時でも援護出来る様にクロノギアスを中心に円を描いて回り始める。
光と久遠が援護出来る位置取りに向かったのを確認した縁は小さく頷くと、組み合う手を離してクロノギアスの頭上を飛び越えて背後へと回った。
「二人共、今だ!!」
「パーティクルショット!!」「パーティクルキャノン……!!」
「「発射!!」」
フォトンファイターが力比べを拒否し、更に眼前から姿を消した事で勢い余って前へとつんのめったクロノギアスに向かってフォトンランダーとグライダーの二機から再びビームが放たれる。
放たれたビームは背中に直撃し、前へとバランスを崩していたクロノギアスを後ろから押して地面へと勢いよく叩き付けるが、地面に叩き付けられたクロノギアスもすぐに立ち上がり攻撃の飛んで来た背後へと振り返った。
「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
しかしそこには既にクロノギアスへと向かって来るフォトンファイターの姿があり、繰り出された拳を受け止める事を余儀なくされてしまう。
拳を受け止められた縁はすぐさま片方の腕で拳を受け止める腕を弾き、続けざまに蹴りを放って胴体にダメージを与える。
その後立て続けにフォトンファイターから繰り出されるラッシュを、クロノギアスは何発かは防いで行くも次第に命中して行く割合が大きくなり、反撃とばかりに尻尾を振るうがそれは後ろに飛んで避けられてしまう。
「光!!久遠!!」
「「了解!!」」
けれどフォトンファイターが距離を取ったからといって攻撃の手は止まることなく、縁の指示を受けた光と久遠がクロノギアスを相手にビームを放って攻撃する。
フォトンファイターを追い払って一段落し無防備になった所で襲って来たビームを胸部に受け、今まで受けたダメージの事もあってかクロノギアスがはっきりと解る悲鳴をあげた。
「効いてる……効いてるぞ!!」
「このまま行けば、進化体になる前に倒せる!!」
クロノギアスの悲鳴を聞いて、この調子で行けばクロノギアスを倒せると判断した光と縁は攻めの手を一気に強め、二人に同調する様に久遠も攻め手を強める。
しかしそんな彼等の希望を打ち砕く様に時空転移ゲートからバリアーがクロノギアスに向かって照射され、近接戦を挑み掛かっていたフォトンファイターは強引に後ろに下げられた。
「っ!!あのバリアーは……!」
「どっちだ!?」
「…………!」
縁はクロノギアスを囲うバリアーを見て表情を引き締め、光はそのバリアーがクロノギアスの回収か、それとも進化のためかどちらなのかを身構え、久遠も油断無くクロノギアスの周りを旋回する。
すると三人の眼前でクロノギアスが光に包まれ、粒子となって上空の時空転移ゲートへと吸い込まれて行き時空転移ゲートが閉じて行く。クロノギアスの回収用のバリアーだった様だ。
「逃がしたか……」
「クロノドローンも来なかったし、偵察だったのかねぇ?」
倒し切れなかった事に被害を出しただけに終わらせてしまった縁が舌打ちを打ち、光は今回の戦いがあくまで様子見だったのでは無いかと考える。
二人が今回の戦いについて考えていると、眉間に皺を寄せた久遠からの通信が入った。
「二人共、考察は後だ。今は帰投するぞ」
「ん、分かった」
「りょーかいっと」
縁はそう言うとフォトンファイターを飛び上がらせ、フォトングライダーと背部で合体しそのまま久遠によって連れて行かれる。
残った光も元来たトンネルへと向かうために来た道を引き返し、山岳地帯へと消えて行った。
フォトンガードナー基地内の作戦司令部にて、先程帰投したパイロットの三人が入室して来る。
「三人共お疲れ様。惜しかったな」
三人が入室すると、それを待ちわびていた様にモニターへと目線を向けていた光平が振り返って三人に労いの言葉を口にし、久遠は敬礼し光は頭を掻き、縁は小さく頭を下げる。
各々労いの言葉に反応している裏で博士が司令部へと入って来て、光平に対して何かのメモリーカードを手渡す。
「ほれ、頼まれていた物じゃ」
「ありがとうございます、博士……さて、君達に話しておきたい事があるんだ」
話しておきたい事があると言われ、光と縁、久遠の三人が首を傾げる。ちらりと光が久遠へと目を向けると自分も何も聞かされてないと小さく首を振り、二人のやり取りを見ていた縁は意を決した様に一歩前に歩み寄る。
「話しておきたい事……ですか?」
「ああ、君達に関わる事だからな……まずはこれを見てくれ」
縁が代表して問い掛けると光平は小さく頷き、近くにあったパソコンに博士から受け取ったメモリーカードを挿入する。すると大型モニターに先程の戦いで相手をしていたクロノギアスが映し出され、画面左端に何かしらの表が作られていた。
「先程の戦闘映像ですか……?」
「その割には、横の表は一体……」
「これは戦闘映像ではない、クロノギアスの戦闘パターンから算出された進化先の予想図じゃよ」
映像を見て横の表を訝しんだ光に対して、博士がそう言いながら表のところにカーソルを合わせると表が展開されて隠されていた項目が露になる。
更にその項目に博士がカーソルを合わせて決定を押すと、映像のクロノギアスにCGによる加工処理が入ってその姿が変わって行った。
「この前に現れた高機動型のクロノギアスの前身を相手にした際に、わざわざゼロからモデルを作り上げるよりかはこうした方が手間が掛からないかと思って作ったシミュレーターのアップデートプログラムじゃよ」
「シュミレーターのアップデート……」
「っていうか前のあれ全部手作りだったのかよ……」
縁が博士から説明されたメモリーカードの中身を聞いて感嘆の声をあげる横で、光は前に博士監修の元で行っていたシュミレーターを思い出して顔をひきつらせる。
素体だったクロノギアスの進化体を予測し、どの進化体にも対応出来る様に多くの仮想の進化体を相手にしていたが、それが全部手作りだとは思わなかった。
「ほっほっほっ、まあ確かにあの時はちと面倒じゃったが、そのお陰でこれが作れたんじゃから結果オーライじゃよ」
光が頬をひきつらせているのを見て博士がそう笑いながら言うと、モニターを落としてメモリーカードをパソコンから抜き取る。
そして司令部の外へと出ようとして扉の前に立つと、光達にの方を振り向いて口を開いた。
「ほれ、これからこのプログラムを使ったトレーニングじゃよ。お主等も来んか!」
「え!?マジですか!?」
いきなりトレーニングと言われて光が思わず声をあげると、博士は当然と言わんばかりに頷き光平へと視線を向ける。
光平も博士の視線に気付いた様で彼の方を一瞥すると、小さく頷き三人に向かって口を開いた。
「君達に話しておきたかった事はこの事だったんだ。トレーニングの質の向上は、クロノイドからの侵攻を防ぐだけじゃなく君達の生存率も上げるからな」
そう言った光平の言葉に縁と光は頷く。トレーニングでクロノギアスの相手に慣れれば、万が一を大きく減らす事が出来る様になる。
世界の平和を守る事も大事だが、まずはパイロット達が生きて戻らなければ意味が無い。
「ありがとうございます、司令!」
「それでは、これよりトレーニングに向かいます」
「博士!早く準備してくれ!」
「そう急かすな、先に行って軽く体を解しとくんじゃぞ」
三人は光平に敬礼すると、トレーニングルームに向かって走り出す。その様子を見ていいものを作ったもんだと笑いながら博士も後に続いて行った。
クロノギアスの襲来により急遽休校となった常磐高校、既に人気の無くなった校内を一人の男が歩いて行く。
その男は目的地──プール裏の第三倉庫へとたどり着くと、徐に扉周りを触り始めた。
「……駄目だ、一切開きもしない……」
扉を開けようと触っていた男──白部はどうやっても扉が開かない事に表情を歪め、この扉が空いた時の光景──光達がこの扉の前で何かをやっていたのを思い出し、再び扉へと目を向ける。
「……これは、何かしらの手を打てば行けるか……なら、まずは協力者を……」
脳裏に浮かんだ作戦を実行するために、白部は第三倉庫へと背を向けると独り言を呟きながら第三倉庫を去って行った。
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