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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第2節・戦う理由
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第5話

前回のあらすじ


フォトンガードナーへのスカウトに悩む光。

そんな彼を他所にクロノドローンが襲来するが、光は縁より戦わなくていいと告げられる。

縁と久遠の活躍によってクロノドローンは掃討されたが、光の心にモヤモヤを残すこととなった。

夜中にクロノドローンによる襲来があった翌日、光は重い足取りで常磐高校へと登校して行く。

そして光が教室に入った瞬間、席に着いていた久遠が立ち上がると光の手を掴み、教室の外へと連れ出そうとして来た。


「ついてこい」

「……あ、ああ、あれか」


久遠が光の手を取って何処かへと連れて行こうとする姿にクラスがざわめくのを他所に、久遠は光に聞こえる程度の声でそう小さく呟き、光は久遠が何の目的で連れ出そうとしたのかに気付き、頷くと彼女に手を引かれるまま教室から離れて行く。

そのまま久遠は光の手を引いて、第二校舎の屋上前踊場まで連れて行った。


「ここ数日の調査の結果、この辺りはほとんど人通りが無い。ここならある程度の事も話せるだろう……昨日の電話、一体どの様な用件だ?」


久遠はそう言って握っていた光の手を離すと、彼の方へと向き直って携帯を懐から取り出して着信履歴を光に見せつけて問い掛ける。

着信時の時刻からこの電話が着信前に襲撃してきていたクロノドローン関係のものだと気付いたのだろう。

久遠の言う通り屋上の踊場付近は余り人通りが無く、週に一、二回見回りの教師が来る位だと知っている光は、念のため踊場下の廊下や階段に人が居ないのを確認すると、改めて久遠へと向き直って話し始めた。


「……昨日の夜、クロノドローン達の襲撃があったよな?」

「ああ、お前には縁が連絡を入れていたな」

「その時の話なんだが……お前は違和感を感じなかったか?」

「違和感、だと?」


光が違和感があったと口にすると久遠の眉間が寄り、光に対して疑いの眼差しを向けられる。

光は疑惑を払拭せんと、昨日の夜中の事を思い出しながら違和感について説明し始めた。


「今回の連中、時空転移ゲートを囲うように陣形を取るとそれ以降その場から動こうとしなかっただろ?」

「……確かにな」

「そいつらはその場に陣取って、何をやってたのかって話なんだよ」

「む……」

「クロノギアスの転送を待ってた?いや、クロノギアス転送の際に発せられるバリアがある以上、時空転移ゲート周りに陣取る必要はねぇ。むしろ、離れた位置で時空転移ゲートに近付けない方が一番賢明だ。それなのにあいつらはそこを離れようとしなかったって事は……」

「時空転移ゲートから別の何かを待っていた、と?」


光が何を言わんとしていたか気付いた久遠に、光は頷くと更に説明を続ける。


「または、既に何かを送っていたかだけどな……どっちにしろ、何かしらをやっていたのは確かだろうよ」

「……確かにクロノドローン以外に何も転送せずに時空転移ゲートを閉じたのは明らかに不自然だ。ただの突発的な襲撃と見るより、何かしらの企みがあったと見るべきか……」


光の話を聞いて腕を組み、何が起きていたのかを考える久遠。そんな彼女と光の耳に、朝礼開始五分前の予鈴が鳴り響く。


「っと、もう朝礼か」

「……この話は空いた時間に本部に話す。それでいいな?」

「ああ、そのために伝えたんだからよ」


フォトンガードナーに話すことを久遠が告げると光はそれに頷き、一足先に教室へと戻って行く。残された久遠はフォトンガードナー活動用の携帯を手で探りながら、ふと気になった事を呟いた。


「……そういえばあいつ、縁には伝えなかったのか?」


彼女の脳裏に、今朝方一般性活用の携帯の電源を起こした際に入っていた着信履歴に光の名前があった事を縁に問い掛けた事が思い浮かぶ。

その事に対して縁は驚いた様子をしていた事を鑑みるに、電話を掛けたのは自分だけだったと気が付き、本当だったら今の話の間にその事についても聞くつもりだったが、予鈴が鳴って中断させられたのだ。


「……いや、今はそれはいい」


そこまで考えて久遠は頭を振り、光の後を追って教室へと戻って行く。

彼女が教室へとついて朝礼が始まる頃には、その話は大したことではないとすっかり頭から離れていた。






四限目の体育の時間、クラスで半々に別れて野球を行うこととなって、キャプテンに任命された二人が互いに顔を寄せ合い話し合いをする。話し合いの内容は、どちらのチームに縁を入れ、もう一方に光を入れるかという内容だった。


「だーかーらー!うちのメンバーは自力が弱いから此方に有沢を入れろって!」

「馬鹿言うんじゃねぇよ!お前のチーム元野球部何人居ると思ってんだ!誤魔化せる訳ねぇだろ!」

「はぁ!?言い掛かりも甚だしいんだけど!?根拠は何だよ!」

「そちらの何人か投球フォームが経験者のものだったんだよ!実力者が居るなら此方に有沢を回せって!」


最早怒鳴り合いと化している話し合いに、一緒になって有沢の獲得に尽力するメンバーが混ざりヒートアップしていき、それ以外の同級生はコート外のテントの中からそんな様を呆れた目で見つめている。


「あはは……」


渦中の人物である縁はテントの下で彼等のやり取りを見て苦笑いを浮かべ、どう介入しようかを考えている。それに対し、もう一人の渦中の人物である光はというと──


「…………はぁ…………」

「高坂?どうしたの座り込んで……」


地面に腰を下ろして溜め息をつく彼の横に、心配そうな表情を浮かべた花音が横に腰を下ろす。

光は朝に教室に戻って以降、何度も溜め息をついて明らかに気が遠くへと向いており、今もなおこうしてらしくもない溜め息をついている。


「っと、それよりも……有沢君が間に入ってじゃんけんで決めることになったみたい。高坂もどっちになるか見に行ったら?」


そう言って花音は光の手を取って立ち上がらせ、じゃんけんがヒートアップしている話し合いの場へと連れて行く。

そして二人が彼等の元にたどり着くと、丁度決着が着いたのか歓声と慟哭が響き渡り二人は思わず顔をしかめた。


「──っしゃあ!!有沢が此方に入った!!これで勝ったも同然だ!!」

「──くそったれぇ!!おい高坂!!勝つぞ絶対!!」


歓声をあげるキャプテンの元に苦笑いしながら縁が向かい、慟哭していたキャプテンは血涙を流さん程の表情で光の元へと詰め寄ると、肩を掴んで何度も体を揺さぶってそう言う。


「お……おう……!」


揺さぶられる光は目を回しつつも小さく頷くと、キャプテンは手を離して自分チームのベンチへと向かって行き、光は勢いのまま後ろに倒れて尻餅をつく。


「全く……せめて肩を貸す位しなさいよ……ほら高坂、立てる?」

「あ……すまん……」


花音はベンチへと向かうキャプテンの背を見てそう呟くと、横に倒れている光へと差し伸べる。

光は花音の手を借りて立ち上がり、未だにふらつく頭を振って意識を戻そうとすると、二人に近付いてくる足音が聞こえてきた。


「やあ高坂、どちらも頑張って行こうじゃないか」


縁がそう言って光に向かって握手を求める。光は一瞬目を縁の手へと向けると、おもむろにその手を握り返す。


「ああ、そうだな……」


光はそう力無く握手をすると気が抜けた様な返しをし、手を離して何処か上の空の様子で自分のチームの元へと歩いて行く。

そんな何処か覇気の抜けた彼の様子に握手をした縁は目を丸くし、花音を始めとした他のクラスメイトも何事かと困惑しながらも野球の試合の準備が始まった。


「高坂!ピッチャーは頼んだ!水代、キャッチャーは頼めるか?」

「え!?私が!?」


後攻の光のチームが守備に就く中、キャプテンが光と花音に向かってそう告げ、花音は驚きの声をあげるが光は上の空でそれを聞く。


「お前が一番高坂をコントロール出来るんだから、頼んだぞ!」

「あ!ちょっと!……もう!勝手なんだから……高坂、行きましょ」


勝手にポジションを決められた事に花音は憤るも、キャプテンはそそくさと自分のポジションに向かって行き残された花音は溜め息をつくと光にそう言ってキャッチャーボックスへと向かう。

光も覇気の抜けた様子でマウンドへと立つと、バッターが打席に立ち審判係が試合開始の笛を鳴らす。


「…………シッ!」

「ストライク!」


試合が始まると覇気の無かった光に僅かながら活力が戻り、投げられた球が花音の構えたミットに吸い込まれる様に収まれ、審判からのストライク宣言にチームが沸き見逃したバッターに焦りが浮かぶ。

焦りのせいで力んだのか立て続けに投げられた直球にはバットを振るが掠りもせず、一番バッターは三振でアウトとなり、続く二番、三番バッターもそれぞれセカンドゴロ、内野フライに打ち取られ一回表は無失点に終わった。


「高坂!お疲れ様……って、高坂?」


光がマウンドを降りてベンチに向かうと、キャッチャーボックスから戻って来た花音に労いの言葉を掛けられるが、光はそれに反応する事無く自分の掌を見つめる。


「…………」

「高坂?どうかしたの?」

「うおあっ!?」

「きゃあっ!?」


掌を見つめる光に花音が再度呼び掛けると、光は驚きの声をあげて後ろに転げ、花音も突然の叫びに驚いて尻餅をついた。


「っと、水代か。すまん、大丈夫か?」

「う、うん……」


花音の驚きの声にはっとなった光が、慌てて花音の手を取って立ち上がらせる。

光によって立ち上がらされた花音は体育服に付いた土を払うと何処か心配した様子で光を見て、おもむろに声を掛けようとするが──


「……ねえ高さ「アウト!スリーアウト、チェンジ!」かってもう!?」


余りにも早い審判からの攻守交代の宣言に花音は目を向いてグラウンドに目を向ける。

そこには三者凡退で打ち取られたバッターと、最後に捕ったであろうレフトからボールを投げ返される縁の姿があった。


「ほら高坂、早くマウンドに立って!」

「お、おう……」


光も余りの早さにポカンとしつつも花音の言う通りマウンドへと向かう。

そこで光がボールの感触を確かめていると、四番打者が打席に立ち相手チームから歓声があがる。光がそこに視線を向けると緊張を解す様に深呼吸する縁の姿があった。


「さあ高坂、来い!」

「……………………はっ!」


縁はそう言うとバットを構えて表情を鋭くする。光もグローブで隠した右手で球を強く握り締め、花音がミットを構えた外角低めに球を投げる。


「ストライク!」


一球目を縁は見逃しストライクカウントが増える。花音から投げ返された球をキャッチした光はちらりと縁へと目線を向けると、縁は球が通り過ぎた場所を見て何かを測る様な表情をし再び光へと向き直った。


「…………っ!」


再び投げられる光の一投、それは花音が構えた内角高めに向かって飛びそれを見るや縁は僅かに左足を浮かせ腰を捻る。


「っ!」


捻りを戻す様に振るわれたスイングは球の僅か下を過ぎ、バットに当たらなかった球は花音のミットに吸い込まれた。


「ストライク、ツー!」


それによって刻まれた二つ目のストライクカウントに、それぞれのベンチの緊張感が高まる。その緊張感に光はボールを握る手に更に力が籠り、じっと縁へと視線を向ける。

対する縁は表情を変える事無く光を見つめ、何時球が来てもいい様に身構え光が投げるのを待つ。


「……………………」

「……………………」


緊張が両者を包む中、沈黙を破る様に光が投球モーションへと移って行き、バットを握る縁の手に力が籠る。


「はあっ!」


光のかけ声と共に放たれた一球は今までのものとは明らかに違うストレートに、ミットを構える花音も目を見開く。

その球を見るや縁は目を見開き、左足を大きくあげて体をより一層捻って力を溜めた。


「せえいっ!!」


縁の気合いの込められた咆哮と共にバットが勢いよく振り抜かれる。振り抜かれたバットは中心に向かって投げられられたボールを捉え、甲高い音を鳴らして白球は空へと舞う。


「…………」


歓声と悲鳴があがる中、光はボールの飛んでいった方へと目を向ける。広い校庭の一角に用意された野球のグラウンドにはスタンドという気の聞いたものはなく、ボールは地面に落ちると更に遠くに転がって行きそれを外野手が急いで取りに向かっているが、誰がどう見てもホームランと言える一発だった。


「高坂、ドンマイ!でもこれ以降は抑えようよ!」

「お、おう……」


立ち尽くす光の元にキャッチャーボックスからやって来た花音が声をかけ、光もはっとなって頷き返すが何処か覇気が抜けている。


「…………」


そんな覇気が抜けた様子の光を、縁がダイヤモンドを走りながら何処か物足りなさそうな様子で見つめていた。

その後続く二打者を光は空振りに抑え、自分達の攻撃とすると縁の投球から光が一本ヒットをもぎ取る。

しかし後続か続かず得点は得られず再び縁の打席が回るまで無得点が続き、縁が再びホームランを打った事で二点目を取られその瞬間体育教師から終了の声が掛かる。

それぞれのチームの勝負の結果は、縁が打ったホームランの二点で縁が入ったチームの勝利となった。

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