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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第2節・戦う理由
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第4話

前回のあらすじ


フォトンガードナーからのスカウトを受けるかどうかに頭を悩ます光。

その一方クロノイド制圧軍では次の進行作戦にリーリスが加わる事となった。

ジャナ部での部活動を終えて帰宅し、夕飯を食べ終えて一人自分の部屋に籠る光。

彼の脳内では、昼休みに白部から語られた話が浮かび上がっていた。


「どうするかの目的……ね……」


フォトンガードナーからのスカウトを受け、混乱の中それを保留にしてどうするかを考える光にとって、それは何処か引っ掛かるものを感じ、今もこうして引き合いに出して悩んでいる。


「要は、俺が世界を守るって事をちゃんと目的と出来るかって事なんだよな……」


フォトンガードナーの司令部で説明された出来事は、一般人だった光にとってはスケールが違い過ぎて漠然としかイメージが出来なかった。

世界を守ってくれと言われても、自分が守れる世界のイメージが余り出来なかったのだ。


「……俺って、世界を守ることに向いてないのかねぇ……」


自分が世界を守る姿をイメージ出来ない事にそう自嘲気味に笑うと、突然落雷と共に地震が家を襲う。

ベッドから転げ落ちるも受け身を取って着地した光は、何処か既視感を感じる出来事に顔を青くすると窓を開けて外を見た。


「──っ!!マジかよ……っ!?」


夜空には赤紫色の暗雲──クロノイド制圧軍の時空転移ゲートが開いており、そこから滝音市に向かってクロノドローンが出現する。

現れたクロノドローン八機は時空転移ゲートを中心に八角形状に隊列を組むと、街に向かって攻撃を開始した。


「──っ!!野郎……っ!!」


クロノドローンが出現した市街地より距離があるとはいえ、空気を伝う爆風を感じて光は思わず歯噛みする。

そのまま感情のままに走り出そうとした処で突然携帯が鳴り、画面にはジャナ部の活動の都合という理由で連絡先を交換した縁の名前が映っていた。


「もしもし、高坂?」

「有沢か!?お前は今何を!?」

「出撃準備中だよ、今は合間に電話してる」


電話をかけてきた縁は、フォトンファイターでの出撃準備中にかけてきたと答える。それを聞いて光は自分の用件を口にする。


「俺も行く!!何処からならそこに向かえる!?」


暫定とはいえフォトンランダーのパイロットとされた以上、光にも戦う義務がある。そう言い聞かせて縁に問うと、通話越しに縁の首を振る音が聞こえた。


「駄目だ、君はこの戦いに来なくていい」

「んだと!?」


協力してくれと頼んできた組織の人間が口にしたとは思えない答えに光が驚きの声をあげると、縁は何故来なくていいのかを説明する。


「君が今は保留の立場にあるからさ。クロノギアスが出て来て居ない以上、今は民間人の君を前線に出す事は出来ないんだ」

「一昨日俺を前線に引っ張り出した奴の言う台詞かよ……!」

「その件は済まなかった、緊急事態だったんだ」


一昨日流れでフォトンランダーに乗せられた事に対して恨み言を言うと、縁は謝罪を返してくるが光の腹の虫は収まらない。

そんな間にも電話越しに縁側の慌ただしさが伝わってきて、光は思わず言葉に詰まる。


「……それじゃあそろそろ僕は前線に出るから、君は避難しておくんだよ!!」

「あ!!おい!?……くそっ!!」


縁はそう言うだけ言うと通話を切り、虚しい切断音が携帯から鳴り響く。

勝手に切られた事に光は憤り窓枠に拳を打ち付けると、せめて街がどうなっているのかを目にしようと市街地へと目を向ける。

現れたクロノドローンは前に現れた時の様に街中を破壊して回る様子は無く、その場に留まって破壊活動を行っている。

一見すると前に襲来して来た時と同じ様に思えるが、クロノドローンは陣形を崩すこと無く砲撃し続けており、光はその行動に何処か違和感を感じ取った。


「あいつら……何であの場から動こうとしねぇんだ……?」


その場に留まって破壊活動を行うクロノドローンの行動に、光は思わず眉を寄せる。

破壊活動が目的であるならバラバラに散って手当たり次第破壊して回る方が効率がいいに決まっているのに、クロノドローン達はそれをせずに初めて陣形を組んで以来それを崩していない。その行動は破壊活動の裏に、何か別の目的がある様に感じ取れてしまう。


(あいつら……一体何を……?)


時空転移ゲートを中心に陣形を組んだまま動かないクロノドローンを見て、何かしらの企みがあると考えた光はクロノドローンが守っている時空転移ゲートへと目を向ける。

しかし、光がそこで何かを見つける前に彼方よりビームがクロノドローン二機を撃ち抜いた。


「今のビーム、フォトングライダーの……!」


光がビーム──パーティクルキャノンの放たれた方向へと目を向けると、そこにクロノドローン達に向かって飛翔するフォトングライダーと、その上に乗るフォトンファイターの姿が現れる。


「クロノドローンだけか……」

「まだ時空転移ゲートは開いている、油断はするな」

「分かってるよ」


クロノドローンだけの戦場に引っ掛かる何かを感じる縁に、それを気の緩みと判断した久遠が釘を刺すと縁は頷いて敵機へと目を向ける。二機の接近に気付いた残る六機のクロノドローンは破壊活動を止め、二機の迎撃のためにビームを放つ。

しかしそれは久遠の駆るフォトングライダーには容易くかわされ、二機の接近を許してしまう。

そして二機がクロノドローンの編隊とすれ違おうとした瞬間、フォトンファイターがグライダーの背より跳躍し、六機の直上を取ってスラスターを吹かせて滞空する。


「今なら……パーティクルキック!!」


すれ違ったフォトングライダーに気を取られ、全てのクロノドローンがフォトングライダーへと銃口を向けたその瞬間、フォトンファイターは上空から急降下してクロノドローンの一機を蹴りつけた。

脚部から光子を放出しながら放たれた蹴りはクロノドローンを地面に押し付け、蹴り抜いた足が地面に着地した瞬間クロノドローンが爆発を起こす。

爆炎の中フォトンファイターが宙に浮かぶクロノドローンに顔を向けると、残る五機はその照準をフォトンファイターへと向けてくるが、それは久遠にとっては大きな隙となった。


発射(シュート)……!」


五機全ての射線がフォトンファイターに向いたのを見た久遠は、フォトングライダーを反転させて再びクロノドローンの編隊へと向かって行く。

そのままパーティクルキャノンを二機へと命中させて破壊し、残るクロノドローンは三機だけとなった。


「一機ずつ確実に落とすぞ、早く終えた方が残り一機を落とす」

「了解!」


再びクロノドローンの横をすれ違うフォトングライダーにクロノドローンは反応するが、先程の様に全機は追わず、一機だけがフォトングライダーに向けて腕を向ける。

残る二機は真下に居るフォトンファイターへと銃口を向けたままビームを放ち始め、縁はそれを人型故の柔軟な可動域で回避していき徐々に二機へと近付いて行く。

そのままフォトンファイターはクロノドローン二機の間に挟まる位置に到達すると、二機は互いに挟み込む様にビームを放つ。しかし縁はそれに笑みを浮かべ一気ににスラスターを吹かして急上昇すると、完全に同一座標を狙って放たれたビームは互いにぶつかり合って相殺される。


「そこだ……!」


二機が再びフォトンファイターへと砲撃を行おうと腕を動かした瞬間、残る一機の攻撃に晒される久遠が二機へとパーティクルキャノンを放つ。

放たれた一撃はフォトンファイターを狙う二機を撃ち抜き撃墜するが、自身を狙っていた一機に狙われる隙を作る。

最後の一機が今まさにビームを放たんとした瞬間クロノドローンの直上を影が覆い、上空に飛んでいたフォトンファイターの蹴撃がクロノドローンの体に突き刺さった。


「これで……最後だ!!」


縁の掛け声と共に機体が地面に着地、クロノドローンもその際に爆発を起こし、襲来したクロノドローンは全て破壊された。


「後は!!」


全てのクロノドローンを撃破した縁は油断ならない視線で時空転移ゲートを睨み付け、クロノギアス襲来に備える。

しかし、そんな彼の準備とは裏腹に時空転移ゲートは収縮し、やがて何事も無かったかの様に消え去ってしまった。


「消えた、だと……?」

「クロノギアスも無しに……?」


クロノギアスの出現も無く消失した時空転移ゲートに久遠が混乱し、縁も混乱した様子で時空転移ゲートがあった場所を見つめる。

先程までは時空転移ゲートの赤紫の暗雲が立ち込めていた場所には既に雲一つ無い星空が輝いており、そこから地球の危機が出現していたとは思えなかった。


「……久遠、一旦帰投しよう」

「縁!?だがそれは……!」

「……正直今回の襲来が僕達が倒した分だけなのか、それともまだ控えているのかは僕には判らない。けれど、休憩できる時に休憩しておいた方がいいと思うんだ」

「…………」


消失した時空転移ゲート後に、何か思う処がある様に空を見上げる久遠。しばくして内心の整理がついたのか小さく溜め息を吐くと、フォトングライダーを垂直に上昇させ始める。


「……そうだな、お前の言うとおりだ。一旦帰投してメンテナンスをしなければな……」

「ああ」


久遠が縁の案に賛同すると、縁は笑みを浮かべてフォトンファイターをグライダーの上に乗せる。

久遠はそのままフォトングライダーを上昇させて五十メートル程浮き上がると、帰投先を悟らせぬ様あえて遠回りを選ぶ様に空の彼方へと飛翔して去って行く。

その光景を窓から覗いていた光は、二機が去って行った方向へと目を向け無意識に拳を握り締めていた。


「すげぇ……」


いくら相手がクロノドローンだけで、不自然な陣形を組んでいてその場から動こうとしなかったとはいえ、数的不利をものともせずに打ち倒した久遠と縁の二人に光は思わず感嘆の声を零す。

あれ程の実力の持ち主ならちゃんとした誰かがフォトンランダーに乗れば、クロノギアスを相手にだって優位に戦える。

そうなれば光は言っても信じられない様な機密を一生墓まで持って行くだけで、クロノイドの襲来を除いてごく普通の日常に戻ることが出来る。

そう考えた瞬間光の胸に理解が出来ないモヤモヤが浮かび、それを顔に出して表情を歪めた。


(…………?)


理解が出来ない感覚に、思わず胸を抑えて収まるかどうかを試す光。しかしモヤモヤは減ることは無く、時間が経つに連れて光の思考に手を伸ばしてくる。

光はそれを頭を振る事で振り払い、モヤモヤを強引に振り払って改めて今日の戦いについて第三者視点だが疑問点を洗い出す。


(……やっぱり、あの陣形だよな……)


クロノドローン達は襲来してから戦闘中も、ずっと時空転移ゲートを中心とした陣形を保っていた。

破壊活動を主に行うのであれはわざわざ取る必要のない陣形を取っていたという事は、きっとただの偶然では無いのだろう。


(考えられる可能性としては二つ……)


一つはクロノギアス転送のための時間稼ぎ。しかしそれはバラバラに散って時空転移ゲートから距離を取って破壊活動を行えば、自ずと二人の視線がそちらに向く以上転送が邪魔される事はなく、そもそも転送が始まった際に時空転移ゲートから照射されるビームの壁は、フォトンファイターの攻撃やフォトングライダーのパーティクルキャノンでも破壊できない以上、防衛する必要があるかと言われれば首を傾げる。


(そう考えると、あと一つ……)


もう一つの可能性、それはクロノギアスとは別の(・・・・・・・・・・)()かを転送していた(・・・・・・・・)、という可能性だ。

それもおそらくクロノギアス処か、クロノドローンよりも脆い何かを転送していたのだろう。そうでなければクロノドローンが時空転移ゲートの周りを離れようとしなかった理由が説明できない。

ただ、その送られてきていたものを視認する事が出来ず、何が送られてきたのか正体が解らないというのが問題だった。


「俺が言ってもまともに取り合ってくれるかねぇ……?」


光は窓際から離れてベッドに仰向けに寝転がると、天井を見ながらそう一人ごちる。

今の光はあくまでも部外者。何違和感があったからと言ってフォトンガードナーに伝えても、ちゃんと対当してくれるか若干の不安があった。

そう溜め息をついて天井を眺める光の脳裏に、縁と久遠の二人の顔が浮かび上がり、これだと言わんばかりに光は目を見開く。


「そうだ!あいつら経由なら……!」


閃くや光はすぐさま携帯を手にして縁に電話を掛けようとし、通話ボタンを押すだけの段階に来てピタリと手が止まってしまう。


「…………?」


光の手が止まった理由、それは二人が戦った後にも感じた正体不明のモヤモヤだった。ボタンを押そうとすると胸にモヤモヤが浮かび、思わず指を止めてしまっていた。


「…………ええい!だったら!」


縁に電話を掛けられないと感じるや、切り替えて久遠へと電話を掛けようとする。

不思議な事に此方は何の抵抗もなく通話ボタンを押すことができ、眉を寄せながらも光は携帯を耳に当てて繋がるのを待つ。そして──


『お掛けになったお電話は、お出になりません』

「……もしかして、複数台持ちってオチか?」


通話が繋がらない時に流れる音声を聞いて、光は思わずそんな事を呟く。

光は久遠が機密保持のためフォトンガードナーとして活動している時と、学生として生活している時とは違う携帯を持ち歩いているのではないかと予想した。

それなら学生として過ごすための携帯に電話を掛けたとしても、フォトンガードナーとして活動中の今は繋がりはしないだろう。そう考えると光は再び縁に電話をかけ直そうとして、再び指が止まると溜め息をついて携帯の電源を落とす。


「もう……明日直接言うか……」


電話を掛ける事を諦めた光はそう結論付けると、モヤモヤとした理由に頭を悩ませながらも眠りの世界へと落ちていった。

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