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第11話「ゾンビFPSやるなんて聞いてないよ」

やっぱりゲームの世界だったアキラ達の居る世界。

そしておっさんだったシーナ。

それどころか、アキラの方が女だった!

そして今、明の現世の体に危機が――と思ったら――

波乱含みの展開です。


―――― 11 ――――


「――なんか、キャラが違わないか?」

「ほっとけ、もうキャラ作ってる気なんざ無いんだよ、かなどめ()アキラ()ちゃん」

「――調べたのか」

「ああ、そして私は恭一。椎名恭一だ。このArsMagnaアルス・マグナの筆頭ディレクターをやってる」

「……ネカマかよ」

「ほっとけ、このネナベ野郎」

「やっぱり、ここはゲームなのか」

「ああ、ネクデルドリームの世界初タイトルのBORGヴォーグだよ」

「お前たちを同化する、とか?」

「そっちじゃない、ブレイン=マシン……ええい、BMIORPGのことだ」

「バーチャルMMOとかいうの?」

「そんなSFと一緒にするな。お前ゲーマーだったらしいな、最新ゲームの話くらいチェックしてないのかよ」

「金もない組立工が、最新ゲームなんて無理無理」

「じゃなんでここに居るんだよ、お前がここにいるせいで私は余計な仕事がいっぱい……」

「俺にだってわからないよ!」


 二人は言い合いをして、それからじっと相手を見た。しばらくじっと見ていたが、二人ほぼ同時に「ぷっ」と噴き出して笑い出した。


「勘弁してくれよ、でかい兄ちゃんだと思ったら、お前本人は身長158センチだって?」

「あんただっておっさんとか、勘弁してよ」

「あー悪いな、実物は今無精髭だらけだ」

「剃れよ」

「徹夜してるんだよ、誰かさんの所為も手伝って。それなのにお前は、実装していない『寝る』なんて行動を平気でとるし。お蔭さんでこっちの職場は大混乱だ」

「……ごめん」

「お前が謝る必要はないんだろう?」

「うう……」


 クリスタルが、シーナを呼び出す。


「はいよ、今ぶっちゃけた所だ」


 だが、通信の声は緊迫していた。


――それは別にいい。緊急事態だ。NPCがバグってる。お前たちを襲いに来るぞ。

「ってどうするんだよ、私はログアウトすればいいが、アキラは」

――だから、お前は状態異常アノマリーをバグの攻撃から守れ。こっちのアバターが死んだら、本人の命に影響が出るかもというのが、医者の報告だ。

「冗談だろ、勘弁してくれ」

――こんなたちの悪い冗談を言うユーモアは私にはないんでな。

「って、津崎部長ですか。部長(みずか)ら連絡とか、他の連中は」

――手の空いてるものは必至でバグ対策に当たっている。だが、現状NPCの暴走は止められん。

「で、具体的にはどんな――」


 話しているシーナの背中を、アキラがちょんちょんと突く。


「今部長と大事な話をしているんだ」

「いやだから、NPCがおかしくなってるって話だよね?」

「そうだ、NPCがおかしくなって襲ってくる――」


 そう言いながら振り返ると、森林から、まるでゾンビの様な風体になったNPCがぞろぞろと這い上がってきた。


「あわわわわ、勘弁してくれよ、逃げるぞ」

「でもこれ、ゲームなんじゃないの? 慌てて逃げなくてもログアウトできれば……」

「お前がどうやってこのゲームにログインしてるか分からないんだ。ここで死んだら本人の生命にもかかわる可能性がある!」

「げ、わかった!」


 二人は慌てて遁走とんそうした。


§


 アキラ……京明かなどめあきらの臨床データを確認している医師の元に、同医院の医療技術部員の福本がやってきた。彼は医療技術主任・渡辺の腹心である。


「クランケの様子は如何ですか?」

「ナノマシン治療が功を奏しているようですね、7~8時間で意識が回復するかと思われますよ」

「ほほう、それはよかった」


 実際のところ、ちっともいいとは思っていなかった。そんな短期間に彼女に回復されたら、医療技術部の計画が台無しになって仕舞うからだ。だが、他の部と揉め事にでもなって、事態が明るみに出ては元も子もない。


「ところで、彼女の大脳活動なんですが」


 医師は眉間にしわを寄せながら報告する。


「非常に高レベルの活動が見られます。新開発のその装置によってかなり負荷が掛かっているように見えますね」

「おっと、それは拙いですね、ちょっと調査させて頂けますか」

「分かりました、この検診が終わりましたら交代で」

「お願いします」


 にこやかに答えた後、福本は唇をとがらせながら、口の中で悪態をついていた。「余計な厄介事が増えた」というのが彼の感想だった。しかし、単独でクランケの臨床を見れるのはまたとないチャンスでもある。そう思うと、尖らせていた口が戻り、口角がにやりと上がった。


§


 二人は何とかNPCのゾンビもどきを振り切って、小高い丘の小屋に立てこもっていた。

 アキラは手持無沙汰で、時折窓の隙間から外の様子を伺っては、部屋の隅でゴロゴロしていた。

 シーナはといえば、再び通信をしていた。そして、持っていたポーチに手を突っ込むと、ショットガンのような武器を2つ引っ張り出した。通信を切ったシーナはアキラに説明した。


「対NPC用武器だそうだ」

「うえ、こんなの持ちだしたら、マジでゾンビシューティングになるよ」

「勘違いするな、NPCを壊さないように無力化する武器だ。こいつで弱点を撃てば、NPCは休眠状態になる筈だ」

「どういう仕組み?」

「さあね、後でコーディングやった若松に聞いてみるよ」

「若松さん、お疲れ様です!」


 アキラは両手を合わせてお祈りした後、武器を受け取った。


「NPCの弱点は脳天に設定されている。他の場所を撃っても意味が無いから、正確に狙え」

「この武器、リロードとかは?」

「こいつでゲームする気はないから、弾数制限は上限値の16777215発に設定してある」

「何かその上限値、オタク臭いね」

「実際上限までカウントするような事態があるとは思ってないから、生の二進数値が反映されているんだよ」

「これ、マシンガン?」

「ああ、こっちのレバーを倒すとマシンガンと単発が切り替わる」

「もし、その……167……なんだっけ、1千6百万発? 全部撃っちゃったらどうなる?」

「弾の補充をしなきゃいけなくなる。だけど、一日中撃ちっぱなしでもそれは起きないから安心しろ」

「そうなの?」

「ああ、そうなの。ネクデルドリームは120フレーム/秒で制御されている。仮に1フレームに1発撃っても、一日は120×60×60×24=10368000発だ。6百万発以上の余裕がある」

「へー120フレーム……。あれ、でも太陽に向かって手を振ったりしたら、蛍光灯に手を振ったみたいに残像が切れ切れにならないのかな?」

「ネクデルドリームの仕組みを良く分かってないな。これは人間に超明晰夢っていう、いわば夢を見せる装置なんだ。夢の解像度やフレーム補間は脳みそがやってる。手を振った残像が人間に見えることはないよ」

「ふーん」


 説明がちんぷんかんぷんで、よく分かんないけど良いや、と、適当に自分の中で納得するアキラではあった。そして、夢、という話でふと思い出した。


「あのさ」

「何だ?」

「変な夢、見たことない?」

「どんな夢だ」

「俺がさ、アキラ―アキラー、って、シーナに連呼されてるんだよ」


 びっくりしてシーナは振り返る。


「どこで何時その夢を見た?」

「感電する前、何度か見てるよ」


 シーナは下を向いて顎に親指と人差し指を当てて腕を組んだ。


「どういう事だ……私だけじゃなくて、状態異常アノマリーにも同じ体験がある、だと?……」

「なになに?」

「どうでも良いけどな。お前、身バレしてから言葉遣いが女になってて、そのアバターだとちょっと気持ちが悪いぞ」

「うるさいよ。で、どんな事なの?」

「私も見てるんだよ、その夢。逆の立場でな。私が泣きながらアキラ―アキラーって叫んでる夢だ」

「それって――」

「ああ、お前が来る前だ」


 話している途中で、「ドン!」という激しい音が壁から伝わってきた。


「話は後回しだ、敵が来た!」

「やれやれ、ゾンビシューティングはあんまり得意じゃないだけど」

「文句言わずにやれ、ゲーマー」

「はいはい」


 二人はドアに向かって武器のマシンガンモードで連射した。

 ドアが粉みじんになると、向こうにNPCのゾンビもどきがひしめき合っているのが見えた。


「頭、頭、と」


 アキラは照準を見て、単発モードでNPCを狙い撃ちした。頭を打ち抜かれたNPCゾンビもどきはその場に倒れると動かなくなる。


「そんなチマチマしたやり方だとやられるぞ。マシンガンで掃射しろ!」


 シーナはそういうと、小柄な体の腰に武器を構えると、やや情報のNPCゾンビもどきの頭付近目がけて、マシンガンモードで掃射を始めた。

 たちまち、動かないNPCの山が作られていく。

 だがこれでは身動きが取れない。


「アキラ、裏口を吹き飛ばせ!」


 アキラは言われた様に裏口を撃ちぬく。裏口方面はまだNPCゾンビもどきはそんなに集って来ていない。


「行くぞ!」


 二人は武器を構えて乱射しながら、敵の中に飛び出していった。


何の因果か異世界RPGがゾンビシューティングに!

どんどん混乱しつつ次回へ!

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