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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
2ー1:闇の円卓

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第47話 〈《黒牙の影》〉

四大ギルドの一角登場。

「お待たせしました、ヘルシーランチです!」


 僕達の前に、ヘルシーランチが置かれた。

 冒険者っぽくないけれど、このカフェレストランでランチと言えば、ヘルシーランチだ。

 それが分かっていて注文したけれど、まぁ、充分な量だろう。


「うん、美味しそうだね」

「野菜、多い」

「クロンは乾パンとか缶詰ばかりなんだか、食べないとダメよ」


 冒険者は何かと健康を崩しやすかった。

 それこそ、隊長を顧みないからで、特にお金の無い頃は、食べるものによって健康を害する。常に健康に気遣った食事を摂ることで、心身共に正常を保つことが出来る。

 僕達は最高の状態を維持すると、手を合わせて「いただきます」を言った。


「うん、美味しい」


 特性ソースの掛ったサラダが美味しかった。

 ハムと玉子を一緒に、サニーレタスで巻いて口に運ぶ。

 フワッと感とシャキッと感が一緒に広がると、幸せホルモンがドパトパ溢れる。


「今日も新鮮な野菜が使われていていいわね」

「うん」

「本当そうだね。……そう言えば、エメラル」

「なによ?」


 エクレアもクロンも満足そうにしている。

 そんな折、ふと気になったというより、聞こうと思ったことがあった。

 フォークを置き、エメラルは僕の顔をジッと見た。


「トロン森の一件だけど、ライムさんはどうするのかな?」

「そうね、〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉にでも、頼むんじゃないの?」

「それって、王都の冒険者ギルドの一角を担う、長い歴史がある所だよね?」


 〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉。それは、王都の冒険者ギルドの一角を担っている。

 長い歴史を誇り、主に諜報や暗殺と言った、光の中の影。身を殺し、姿を晒さず、的確に依頼をこなす、陰の集団であり、この国を裏で支えて来たギルドだ。


「ええ、そうよ。〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉、あまりあそこの冒険者は表に出て来ないけど、ちゃんと依頼はこなすから、まあ任せておけばいいでしょ?」

「エメラルがそこまで芯要するんだね」

「一応ね。私達は新参者だから、最初の頃は怪しまれたわ」


 〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉は、よほどのことが無い限り、人目に触れることは無い陰の集団。

 素性が知れてしまえば、諜報活動や暗殺に支障が出るのは当たり前のこと。

 基本に忠実で、それを体現するように、エメラル達も怪しまれたことがあるらしい。


「怪しまれたって?」

「先兵として、軽く見張られていたのよ。王都でパーティーでもクランでも無く、ギルドを作ったんだもの。変に裏があって、邪悪ななにかと繋がっていたら困るでしょ?」


 諜報や暗殺に特化しているギルドだ。

 何か怪しい動きがあれば、瞬時に気が付く。

 エメラル達、〈《眩き宝石》〉もまた、〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉に監視されていたようだ。それがどれだけの時間、どれだけの距離感で行われていたかは分からないが、無事に監視の目から外れたことで、今こうして羽振りを利かせられている。


「確かにそうだね。でも、今は無いよね」

「そうね。普段は無いけど……〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉は、常にこの街の治安維持に貢献してくれているのよ」

「そうだろうね。偶に視線も感じるから」


 〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉に属している冒険者は、常に街の治安を見張っている。

 何か起これば、すぐに騎士や冒険者、自警団に知らされる仕組みになっていた。

 故にこの街では頻繁に起こる事件も、大抵は小さな火の粉で留まる。それを理会しているからこそ、偶に感じる変な視線にも敏感になっていた。


「へぇー、分かっているじゃない。だから任せておけば安心なのよ」

「そうだね。〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉か。信頼できる冒険者ギルドだろうけど、少し不気味でもあるね」

「それはそうよ。なんたって、影なんだもの」


 決して光ではない。寧ろ陰に生きることを選んだ冒険者達だ。

 素性が割れたらダメだと言ったが、割れている冒険者も中に入る。

 とは言えそれもカモフラージュであり、影の中に影を隠すからこそ、自然と不気味さが増し、おどろおどろしく映る。


「ちなみに、すぐ近くにもいるわよ」

「そうだね」

「そうだねって、もう少し驚きなさいよ」


 エメラルは僕の反応がつまらなかったらしい。

 だけど残念。師匠達の方がもっと恐ろしい。

 だからだろうか? 〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉の視線にも容易く気が付くことが出来た。


「いや、いるから……ねぇ?」

「うん。例えばそこ」


 杖を使ってクロンが指した方向。

 狭い路地になっており、ネコが一匹木箱の上で寝ている。

 ネコに化けているのは冒険者で、ああやって街を監視している。


「いい着眼点ね。でも他にもいるわよ」

「そうだね。隣の店のアルバイト、彼もそうだよね」


 カフェレストランの隣。花屋を営んでいた。

 アルバイト中の青年。視線が右往左往している。

 偶に逸らすものの、何処か全体図を見ているようだ。


「あー、オボロもいいわね」

「“も”ってことは、他にもいるの?」

「いるわよ。例えば……はいっ!」


 エメラルはサラダにフォークを突き刺した。

 そのまま口に運ぶ訳でも無く、何故か放り投げる。

 その先にはポッカリと浮かぶ影があり、サラダを刺したフォークは、影の中に吸い込まれる。


「(グサッ!)うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


 陰の中から男性が飛び出した。

 気が付いていたけれど、まさか見張っていたのだろうか?

 僕は怪しむついでに、短剣の柄に手を掛けると、フォークが突き刺さった男性はヒィヒィ言っていた。


「痛い……痛い痛い」

「〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉に入ったばかりの新人よね? 影の中に潜むなら、もう少し日当たりを考えなさいよ」


 如何して影の中に隠れているのが分かったのか。そんなの決まっている。太陽の動きに合わせて変化する筈の影の動きが、ピタリと止まっていたからだ。

 男性冒険者はエメラルの言葉がグサリと刺さった。確かに的を射ていた。

 口に加えたフォークを恨めしそうに地面に放り投げると、僕達のことを睨む。


「つ、次こそは上手くやってやるからなっ!」


 腹を立てて男性冒険者は去って行く。

 トボトボと歩く背中が寂しそうで、〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉に所属する他の冒険者からも溜息を付かれる始末だ。

 まだまだ未熟なうちは仕方がない。そう思いたいけれど、〈《黒牙の影(ダスク・シャドウ)》〉は勝手が違う。


「次って、冒険者の実戦で次はあっても……」

「諜報や暗殺に次は無い」

「あはは、厳しいね」


 諜報も暗殺も命懸けだ。次なんてあってないもの。

 きっとギルドに入ったことを後悔する筈だ。

 そうなってもおかしくないと思いつつ、エメラルは落ちたフォークをサッと拾い上げ、新しいものに交換して貰った。

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